「日本は金持ちの税金が高い」は嘘! 医者、大企業、投資家に有利な税制

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 次に開業医の優遇税制だ。

「具体的に言えば、社会保険診療報酬の72%を経費として認められている(社会保険料報酬が2500万円以下の場合)。本来、事業者というのは(開業医も事業者に含まれる)、事業で得た収入から経費を差し引き、その残額に課税される。しかし開業医の場合は、実際の経費が多かろうと少なかろうと無条件に売上の72%が経費として認められているのだ。現在は段階的に縮小されているが、現在もこの制度は残っている。
 また開業医は、普通の事業者ならば払わなければならない事業税も優遇されている。収入が多い上に、税金が優遇されているのだから、金持ちになるはずである」

 大企業も税金が優遇されている。大企業の税金の抜け穴が「租税特別措置法」だ。

「要は『特定の人(企業)の税金を安くしてあげましょう』という制度である。いわば、国が定めた税金の抜け穴といえる。日本は名目上の税率は高いけれども、この租税特別措置法があるので実質的な税負担が低くなっている」

 たとえば、2003年に導入された、試験研究をした企業はその費用の10%分の税金を削減する制度(限度額はその会社の法人税額の20%)「試験研究費の特例」だ。大企業のほとんどは、この特例を受けて事実上、法人税が20%切り下げられたのと同じ状態になっている。つまり、「試験研究費の特例」とは「大企業の20%減税」だったのだ。

 さらに、著者は「バブル崩壊以降も日本企業はしっかり稼いできた」点を指摘している。

「日本経済は、原料を輸入し製品加工して輸出することが『主産業』である。この輸出入に関しては、日本経済はバブル崩壊の影響はまったく受けていないのである。バブルの絶頂期だった1991年と2007年を比べると、輸出は約2倍になっているのだ。貿易収支も、バブル崩壊以降もずっと10兆円前後の黒字を続けている。赤字になったのは、東日本大震災の後になってからである。(略)バブル崩壊以降、国民の多くは『日本経済は低迷している』と喧伝され、低賃金に耐えてきた。そして大企業には優遇を許してきた。しかし、その前提条件が間違っていたのである。大企業が稼ぐだけ稼ぎ、その金を自社の口座に貯め込むばかりで社会にまったく還元してこなかったことが、今の日本社会の疲弊を招いているのである」

 国民の税金を食い荒らし、日本経済の屋台骨を蝕む「タックス・イーター」(tax eater)の存在を元財務官僚で弁護士の志賀櫻氏が明らかにした『タックス・イーター──消えていく税金』(岩波新書)でもこの租税特別措置を特別会計、財政投融資などとともに、タックス・イーターが群がる利権の巣窟としている。

「税務六法を買うと分厚い二分冊になっている。一冊目は所得税、法人税、消費税、相続税など本則の税法が載っている。二冊目は丸ごと租税特別措置法である。本則の税法の合計と租税特別措置法がほぼ同じ分量あるわけである。これはじつに驚くべきことなのだが、税金の専門家でも何も不思議に思わない人がいるのには驚かされる。租税特別措置の問題点を認識していないのである」

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