イランとのハーフ・ダルビッシュが戦争への反対姿勢を表明! トランプ政権の排外主義とヘイトクライムにも危機感

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『ダルビッシュのサブちゃんねる』より


  全面戦争という最悪の事態は回避されたものの、米国とイランの対立はいまだ一触即発の緊張状態が続いている。そんななか、MLBで活躍するダルビッシュ有投手が米国内で高まる排外主義への危機感と戦争への反対姿勢を表明した。

 ダルビッシュはこれまでも、日本のスポーツの問題や社会状況について、自分の考えをはっきり表明してきたことで知られる。最近も日本のスポーツの「根性論」を真っ向から批判し、注目を集めたばかり。

 そんなダルビッシュが1月9日、YouTube「ダルビッシュのサブちゃんねる」に、【イランのハーフでアメリカ在住の俺って大丈夫?】というタイトルの動画をアップしたのだが、そこでファンからの心配の声に答える形でこう語った。

「今イランとアメリカが戦争になるんじゃないかという話で、心配してツイートしてくださる方もけっこういらっしゃるんですね。自分がイラン人と日本人のハーフということで、プラスアメリカに住んでいるということで大丈夫なのかと。プラス、イラン人の入国ができないとか。自分の父親は、まあ、前からですね、トランプ大統領になってから、入国がすごく大変で、ビザを取るのも大変でっていうのは正直あって。まぁ今回の話でも、かなり厳しくなったのかなと正直思います」

 ダルビッシュはトランプ政権下で状況が厳しくなっていることを指摘したが、この指摘は当然だ。周知のようにトランプ政権は排外主義を強め、とくにイスラム諸国の国籍をもつ国民の入国を厳しく制限してきた。大統領就任1週間後に、イラク、イラン、リビア、ソマリア、シリア、イエメン、チャドの入国禁止令を出したのをはじめ、繰り返し入国禁止令を出している。

 今回の司令官殺害に端を発したイランとの緊張関係激化で、こうした排外政策がさらにエスカレートする可能性は高い。実際、すでにアメリカ国境でイラン系の旅行者が検問所職員から不適切な質問を受けたり長時間足止めされたりといったハラスメントを受けていることをBBCニュースが報じている。

 しかも、ダルビッシュが憂慮しているのは、出入国管理政策の問題だけではない。トランプ政権の排外政策とともに、アメリカではイスラムフォビア、ヘイトクライムも増加しているが、ダルビッシュはこの点についても、率直に恐怖を語っている。

「自分は日本国籍なので全然大丈夫だと思うんですけど、でも一応イランの血が入っているということで、自分の息子たちもそうですけど、家族として。もしこれ以上アメリカとイランの関係がすごく悪くなったときに、どうなっちゃうんだろうとか。家に変な過激な人たちがきて、殺しにくるんじゃないかなとか、そういうのも正直、最初の頃、アメリカがイランのソレイマニさんって人を殺害したときに、そうなるんじゃないかなと、すごく心配しました」

 イラン系の自分たち家族に危害が加えられるのではないかという恐怖。そんな事態も想像してしまうほど、レイシズムやイスラムフォビアの空気が強くなっているのだろう。

 しかし、ダルビッシュが懸念しているのは、自分たちの安全だけではない。「戦争もトランプ大統領とイラン側が、直接的に攻撃しないという話を聞いたので、すごく安心はしています」としながらも、戦争への反対姿勢をこうはっきり表明した。

「でもどうなるかわからない。戦争って不幸なことばかり生むと思うし、儲かる人は、軍事系の作っている人たちは儲かるのかもしれないけど、やっぱりすごく悲しみを増やすことなので。宗教が違うという複雑な問題があるんだろうけれども、みんな本当に仲良くしてほしいなと。そんな言葉だけで簡単に平和にはならないけど、みんなが平和になるように本当に願ってます。イランの人たちもそうだし、アメリカの人たちもそうだし、みんなに平和が訪れたらいいなと思っています」

ダルビッシュ「中東は良いところがいっぱいある」「イランに偏見を持たないようにしてほしい」

 身の危険を覚える状況で、こうした発言をするのは大きな勇気が必要だろう。しかしダルビッシュは世界の人皆が平和で仲良くしてほしいと、その思いを発信した。

 しかも、ダルビッシュは今回の動画で、小学3、4年生の時に2度イランを訪問した経験を明かし、中東やイランへの思いも語っていた。幼いダルビッシュは父親の出身地イランを訪れた際、日本と比べ貧しく環境も違っていて驚いたこと、お腹を壊したこと、しかしそこで友人ができたりカスピ海がすごくきれいだったと語ったうえで、こう呼びかけた。

「中東は良いところがいっぱいあるので。中東に対してあんまり良くない思いを持っている人もいるかもしれませんけど、そんなに(中東にも)ネガティブな人ももちろんいるけど、いい人もたくさんいて、美しいところであるので、イランとかに偏見を持たないようにしてほしいなと思います」

 ダルビッシュは自身も語ったことがあるが、学生時代にハーフだということでいじめにあった経験を持つ。そうした経験のせいか「高校を卒業する頃までは外国人の血を受け継いでいることを否定したい部分があったと思います。否定したいけれど認めなければいけないという複雑な気持ちですね」とダルビッシュの母・郁代さんは大阪市の「多文化共生社会をつくりましょう!」という冊子のなかで明かしている。しかしその葛藤を乗り越えたのではないかとして、国籍選択の際のエピソードについても母・郁代さんは語っている。ダルビッシュはイラン・日本の両方の国籍を持っていたが、12年ほど前、22歳というギリギリのところで日本国籍を選択した。それは父親への配慮、そしてイランへの思いからだったという。

「22歳になるギリギリまで選択を延ばしていたのは、父親への気配りだったのですね。「自分は半分イランの血が流れているのだし、お父さんを尊敬している。お父さんの国を大事にしたい」と言ってくれたんです」

 イラン、日本というルーツを持ち、現在はアメリカで活躍するという自らの立場に向き合い、勇気ある発言をしたダルビッシュ。その姿勢を高く評価するとともに、今後もこうした声を上げ続けることをぜひ望みたい。

最終更新:2020.01.14 12:44

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