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「沢尻逮捕は桜を見る会から話題をそらすため」は陰謀論か? 拙速逮捕の組対5課とあの“安倍官邸忖度”警察官僚の関係
ラサール石井Twitterより
なんなんだ、この程度の低さは。ほかでもない、沢尻エリカ逮捕をめぐる「陰謀論」論議のことだ。
「桜を見る会」追及のさなかに沢尻が逮捕されたことで、ネットで報道潰しではないかという見方が広がり、ラサール石井が〈まただよ。政府が問題を起こし、マスコミがネタにし始めると芸能人が逮捕される。これもう冗談じゃなく、次期逮捕予定者リストがあって、誰かがゴーサイン出してるでしょ。〉とツイート。これに対して、「ありえない」「陰謀論だ」との声がわき上がり、ラサールだけでなく、同様の疑義を呈していた松尾貴史、町山智浩、金子勝、鳩山由紀夫元首相、さらには一般人のツイートにも「ためにする議論」「頭がお花畑」などと一斉に批判が集中したのだ。
断っておくが、「程度が低い」と言ったのは批判を受けているラサールたちのことではない。彼らを批判し「陰謀論」と決めつけている意見のことだ。
たとえば、今年の「桜を見る会」に参加していた百田尚樹は、上から目線でこうツイートした。
〈安倍政権が大衆の目をそらすために、沢尻エリカを逮捕させたと信じている文化人(?)が多数(町山智浩、ラサール石井、松尾貴史など)。 映画がドラマの見過ぎで頭の中が妄想が一杯なのだろうが、もうちょっと冷静になれよと言いたい。 安倍政権にそんな力があるなら、とっくにあんたら逮捕されてるよ。〉
そもそも凶悪事件が起きるたびに「在日の仕業」などとヘイトデマを垂れ流している百田センセイが「冷静になれ」ってどの口が言ってるのかって話だが、その上、「安倍政権にそんな力があるならあんたら逮捕されてる」ときた。それ、本サイトに「報道圧力があるならリテラなんてとっくに逮捕されてる」なんて絡んでくる、世界を単純化して、比べられないものを強引に比べようとする頭の悪いネトウヨの主張そのものじゃないか。
さらに呆れたのが、最近、政権批判者叩きに躍起になっているホリエモンこと堀江貴文氏だ。ラサールを〈こいつ頭にウジ湧いてんな笑笑〉、鳩山元首相を〈まじで、ほんとにこいつあたまが腐ってる〉と攻撃していたが、あんた、自分がライブドア事件で逮捕された時に何を言っていたのか忘れたのか。散々「国策捜査のターゲットにされた」論に乗っかって検察捜査を批判していたんじゃなかったのか。
しかも、ユーザーにそれを突っ込まれると、「検察のコントロールなんか政治家に出来るもんかよ。奴らは形式上は行政府の一部ながら事実上独立してる。(中略)首相と言えども検察に逆らうと酷い目に遭う」などと、素人丸出しの反論をする始末。この数年で明らかになった検察と政権の間の様々な癒着や裏取引、そして今では検察が政権与党に全く手が出せなくなっている現実をまったく知らないらしい。
森友・加計問題以降、安倍応援団化が著しい経済評論家の高橋洋一氏も同じだ。高橋氏は「現代ビジネス」(11月18日付)で“「桜を見る会」問題なんてたいしたことない”という露骨な政権擁護を開陳したのだが、なぜか冒頭にこの問題を持ち出し、〈沢尻エリカ容疑者の逮捕を受けて、「政府が問題を起こすと芸能人が逮捕される」と言う芸能人まで出てきたが、(略)これが「問題」と言うべきかというそもそも論がある〉と、偉そうに説教していた。
しかし、その高橋氏は10年前、日帰り温泉施設で置き引きした容疑で書類送検されたことがある。そして、事件の半年後に出した著書では「緊急出版!狙われたエコノミストの反撃!!」という帯を巻き、事件の経緯を綴った序章に「霞が関に刃向かった者の末路」という見出しをつけ、財務省批判をしたがゆえの冤罪の可能性をほのめかしていた。それが、沢尻逮捕に疑義を呈しているだけのラサールの指摘を「陰謀論だ」と鬼の首を取ったように騒ぎ立てるのだから、御都合主義もいいところではないか。
ようするに、この連中はなんでもいいから「桜を見る会」問題を封じ込めたいだけなのだろう。安倍政権を擁護したいが、「桜を見る会」の私物化はさすがにひどすぎるので、まともに擁護するロジックが見つからない。だから、今回のラサールたちのツイートを過大に取り上げて、「桜を見る会」私物化問題そのものをあたかも陰謀論のようにすり替えているのだ。
沢尻逮捕への疑義は「ムサシ」や「田布施システム」と同レベルのトンデモ陰謀論なのか
とはいえ、こういった安倍応援団やネトウヨだけがずさんな「陰謀論」攻撃をしているなら、まともに取りあげる必要もない。問題なのは、今回は安倍応援団だけでなく、良識的と言われるようなジャーナリストやメディアの専門家、意識高い系のツイッタラーらまでが一斉にこの沢尻逮捕のタイミングを疑う声のことを取り上げ、「陰謀論だ」と完全否定していることだ。
その結果、空気を読むことに長けた芸人コメンテーターたちの中にはこの「桜を見る会から話題をそらすため」というのを、いじりのフレーズに使う者まで続出している。
例えば、立川志らくはMCを務める『グッとラック!』(TBS)で、丸山穂高衆院議員の「饗宴の儀」問題を取りあげた際、「この丸山穂高さんの疑惑もきっと『桜を見る会』の話題をそらすための政府からの指示かも」と嘲笑交じりにコメント。カズレーザーは相方の安藤なつの結婚発表に、「首相の桜を見る会から注意を反らすための陰謀ニュースとみて間違いないでしょう」とツイートしていたし、太田光も、24日放送の『サンデー・ジャポン』(TBS)で、壇蜜結婚の話題のとき「これは絶対桜を見る会から目をそらすための…」などとギャグにしていた。
今や、「沢尻逮捕と桜を見る会を関連づける」ことはトンデモの象徴になり、それをからかい、上から目線で批判することこそが「頭の良さ」「情報リテラシー」の証明になっている。
しかし、本当にそうなのか。むしろ、沢尻逮捕のタイミングを疑うことを「証拠がない」「政権がそんなことするなんてありえない」としたり顔で決めつける姿勢のほうがはるかに乱暴で危険な思考停止であり、現実を見ていない“お花畑脳”なのではないか。
彼らの危険性がよく現れていたのが「毎日新聞」「Buzzfeed」元記者の石戸諭氏の論考だ。石戸氏は今回、Yahoo個人や「HUFFPOST」でこの問題を「安直なストーリー」と決めつけ、〈「芸能人の逮捕と政権の不祥事」がつながっていると言うならば、確たる証拠が求められる。証拠がないままの主張は陰謀論と言わざるを得ない。〉〈大事なのは、批判や疑いが確かな根拠に基づいているかだ〉と批判した。
「証拠がないままの主張は陰謀論」って、この人は本当に元新聞記者なのか。そんなことを言い出したら、そもそも捜査権を持っていないジャーナリズムは何も踏み込んだことは書けないし、権力の不正なんて暴くことなどできないだろう。それこそ官公庁の発表だけを垂れ流す発表ジャーナリズムに堕してしまう(実際に新聞やテレビはそうなってしまっているが)。
石戸氏はファクトと陰謀論にはっきりとした境目があって明確に腑分けできると考えているようだが、情報はそんな単純なものではない。
実際は両者の間にはグレーゾーンがあり、そのグレーゾーンに踏み込んで検証し、国民に知らせるのもメディアやジャーナリズムの重要な役割だ。その際、決定的な証拠をつかめなくても、疑惑段階で世に問い、新たな情報を募ったり、告発を喚起することは十分ありうる。実際、週刊誌などはそうやっていくつものスクープをものにしてきた。
沢尻逮捕のタイミングを疑う今回のラサールらの意見は、このグレーゾーンに少し踏み込んだだけの話であり、「ムサシの選挙システムで票を操作している」とか「田布施システムが日本を支配している」というような本物の陰謀論とはまったく違う。
ラサールらを批判する連中はこの陰謀論とグレーゾーンの差異がまったくわかっていないのだ。
「桜を見る会」がらみで出回った情報で言えば、「桜を見る会から話題をそらすために嵐の二宮和也に結婚発表をさせた」というのは明らかな陰謀論だが、「桜を見る会からそらすために沢尻逮捕をぶつけたのではないか」と疑問を提示することは、陰謀論ではなくグレーゾーンだ。それは、同じ権力内部で起きている動きであり、今の政治状況から見てありえない話ではないからだ。
安倍官邸は杉田・北村の公安出身コンビと警察組織を使って数々の謀略
こう言うと、おそらくまた、訳知りな「プラグマティスト」「ファクトフルネス厨」たちが「政治家が警察なんて動かせるはずがない」「権力の実態を知らない人間の妄想」などと反論するのだろう。
しかし、実態を知らないのはそっちのほうだ。たしかに、「桜を見る会」報道を潰すために、警察が薬をやってもいない芸能人を逮捕する、あるいはそれまで捜査対象になっていなかった人物を急に捜査するということはありえないだろう。
だが、すでに捜査線上に上がっている対象なら話は別だ。政権の意向を忖度して逮捕やガサ入れのタイミングを合わせたり、ずらすことは十分ありうる。たとえば、沢尻エリカを内偵し証拠固めをしている中で、何らかの指示があって、逮捕を早めたという可能性だ。
実際、そういったタイミングの操作はこれまでもあらゆる省庁で、行われてきた。検察、警察の捜査着手はもちろん、政権に不利な問題を発表するときは、わざと他に大きなニュースや行事がある時期を選ぶ、選挙前には政権に有利なデータを発表し、不利なデータは選挙後に遅らせるなんていうことは普通に行われている(今夏、厚労省が年金の財政検証を参院選後に遅らせたのなんて典型だろう)。
しかも、森友・加計問題や公文書改ざんで明らかになったように、安倍政権の長期化によって、多元的だった権力機構の一元化が進み、官僚たちは官邸に命じられれば違法行為まで手に染めるようになった。
もし、警察や検察だけは別だ、と考えている人がいたら、それは相当にオメデタイ脳みその持ち主だと言わざるをえない。
本サイトでも何度も指摘しているように、安倍官邸では公安出身の杉田和博・官房副長官と北村滋・国家安全保障局長(今年9月まで内閣情報官)という公安出身の警察官僚が重用され、警察組織を手足として使ってきた。この間、流された安倍政権批判へのカウンター情報や、政権と敵対する野党や官僚、メディア関係者のスキャンダルのかなりの部分は、内閣情報調査室ではなく、警視庁公安部が収集したものといわれている。
その典型が、加計問題を告発した前川喜平・元文科次官の“出会い系バー通い”報道だ。これは、杉田官房副長官が公安を使って前川氏のプライベートを監視させ、掴んだもの。官邸はこの情報を使って前川氏を恫喝し、前川氏が告発を止めようとしないことを知るや、読売新聞にリークして書かせたのである。これ一つとっても今の警察がいかに安倍政権と一体化しているかがよくわかるだろう。
しかも、安倍官邸が影響力を行使している部署は杉田、北村の出身部署の公安だけではない。これまではあまり政治家の圧力が効かなかったといわれる刑事部でも、安倍官邸に忖度して、捜査が潰されるという問題が起きている。
他でもない、安倍政権の御用ジャーナリスト・山口敬之氏の逮捕取り止め事件だ。詩織さんの告発によって、所轄署が逮捕を決め、逮捕状まで出ていたにも関わらず、まさに逮捕直前になって、当時、警視庁刑事部長だった中村格氏(現・警察庁官房長)がその逮捕を止めたのだ。
中村氏は「週刊新潮」(新潮社)の直撃に対し、「私が決裁した」と認めているが、所轄署のこうした事件に警視庁の刑事部長が介入するなんてことは通常ありえない。
実は、中村氏は第二次安倍政権発足時に菅義偉官房長官の秘書官をつとめており“菅の懐刀”といわれる警察官僚。その後、山口氏が北村内閣情報官(当時)に相談メールを送っていたという疑惑も発覚し、政権の意向で動いた可能性は極めて高い。
安倍首相秘書の息子のために「ゲーセンのケンカ」に捜査一課を投入
しかも、この中村氏をめぐっては、この山口事件以外に、安倍政権を忖度したありえない捜査指示の疑惑が浮上している。
先週発売の「週刊新潮」が、やはり中村氏が刑事部長だった時代、中村氏の指示で、安倍首相の秘書の息子が被害者となったゲーセンでのケンカに、なんと警視庁刑事部捜査一課が投入され、強引に容疑者逮捕に及んだという疑惑を報じているのだ。
2015年11月下旬、東京・三鷹の小学校教諭の男性が児童に対する強制わいせつなどの疑いで逮捕されメディアでも大きく報じられたが、逮捕の少し前その捜査が大詰めを迎えていたときだった。釣宏志・捜査一課長が捜査員を呼び出し、こう命じたのだという。
〈三鷹をちょっと止めて別の件をやって欲しいんだ。世田谷署管内のゲームセンターで子供が殴られた。すぐやってくれ。(加害者を)3日で逮捕しろ。これは中村刑事部長のご下命だ〉
捜査一課といえば、殺人や強盗などの凶悪犯罪を扱う花形部署で、警視庁が誇る精鋭が集められているとされる。その精鋭集団に、多数の児童が被害に遭っている事件が大詰めを迎えている事件の捜査を中止させ、本来所轄が扱うべき事件を捜査しろと命じたのである。
こうした事件に捜査一課が投入されることは本来あり得ないと警視庁OBが、「週刊新潮」に証言している。
「ゲーセンのケンカなんか、“今度は気をつけろよ”と厳重注意で済む話」「(地元の)署も食わないし、まして捜査一課が出て行くなんてあり得ないよ」
さらに、捜査に投入された捜査員のひとりにも「週刊新潮」は接触。捜査員は「新潮」の取材に対し「(引用者注:捜査一課長の)釣さんから、“ちょっと頼むよ。1日、2日でまとめてくれねえか”って」「上から言われたんだから、仕方なくやりました」と異例捜査の内情について明かしている。
そして、この異例の捜査の背景にはやはり、中村刑事部長(当時)の安倍官邸への忖度があった。
同じく「新潮」の記事によると、世田谷署での事情聴取で、被害者の父親が「安倍総理の秘書をしていた」と話したことから、その報告書が本部に上げられたため、中村部長が大騒ぎ。〈被害者は安倍(晋三)総理の秘書の息子さんなんだ。すぐに逮捕して欲しい〉と捜査一課長に精鋭を招集させたのだという。
重要事件の捜査を中断させてまで、安倍首相秘書の息子のために動くとは、その安倍官邸への忠誠ぶりには驚くほかないが、この中村刑事部長は、その後、出世を果たし、警察庁組織対策部長の後、現在、警察庁ナンバー3の官房長になっている。
沢尻逮捕の警視庁組対5課は、山口事件を止めた中村格官房長人脈の影響下
しかも、注目しなければならないのは、この安倍政権の私兵として動いてきた中村・警察庁官房長が警視庁刑事部長の後に、警察庁組織犯罪対策本部長を1年間勤めている事実だ。
今回、沢尻エリカを逮捕したのは厚労省の麻取ではなく、警視庁組織犯罪対策5課。警察庁と警視庁の違いはあるが、中村官房長のかつての管轄で、強い影響力を行使できる部署なのである。
そして、安倍首相秘書の事件で中村氏の命を受けて動いた釣宏志捜査一課長も今年の2月まで、その組対5課の上司に当たる警視庁組織犯罪対策部参事官(副部長的な役職)の職にあった。つまり、沢尻を逮捕したのは、中村人脈のコントロール下にある部署なのだ。
だとしたら、中村氏が政権を忖度してまたぞろ動いた可能性だってあるのではないか。「桜を見る会」をめぐる安倍政権の苦境を目の当たりにして、中村氏が影響下にある組対幹部に「何かマスコミが飛びつきそうなヤマはないか」と尋ねる。そして、沢尻エリカを捜査していることを聞き出し、あの首相秘書の息子が被害者だった事件と同じように、組対幹部に「なるべく早く逮捕しろ」と指示し、組対幹部が現場に「一週間で逮捕しろ」と命じる──。彼らの来歴と現在のポジションを考えれば、この推測はけっして荒唐無稽な妄想とは言い切れないだろう。
さらに、疑念を濃厚にするのが、ほかでもない沢尻エリカ逮捕の不可解な経緯だ。
「薬物事件の捜査では、現物を容疑者が所持・保管している現場を確実に抑えることが最も重要ですが、政局に合わせて都合良く逮捕などできないからです」
「現代ビジネス」が「沢尻エリカ逮捕は安倍政権の陰謀」という主張があり得ない理由」(松岡久蔵氏)という記事で、薬物事件を長年取材してきたという週刊誌記者のこんなコメントを紹介し、ラサールらの推論を「陰謀論」と断じている。
上から目線でラサールらを陰謀論と攻撃しているツイッターなどを見ても、同様の「薬物捜査はガチガチに証拠を固めないと逮捕できない、素人は黙ってろ」などとしたり顔で解説しているものが多い。
しかし、沢尻の実際の逮捕は、「現物を容疑者が所持・保管した現場を確実に押さえた」というような「綿密な捜査」からはほど遠い、杜撰きわまりないものだった。
実はありえないくらいずさんで拙速だった沢尻捜査、組対5課は何を焦っていたのか
逮捕直後、マスコミは組対5課のリークに乗っかって、逮捕の裏側をこんなふうに報じていた。
1カ月前から内偵捜査をしてきた組対5課は、沢尻が逮捕前日15日夜に出かけたクラブで薬物を取り引き・入手するという高い確度の情報を掴んで、クラブに潜入。ここで薬物の取り引きを確認して、クラブから帰宅した沢尻に、捜査員が声をかけた。
ところが、である。実際はクラブから帰ってきた沢尻エリカに、自宅近くの路上で捜査員が声をかけたとき、沢尻は違法薬物を所持していなかった。その後の家宅捜索で沢尻自身が「ここにMDMAがあります」と自己申告しアクセサリーボックスに入っていたMDMA1錠(約0.09グラム)が発見されたとされている。その後アクセサリーボックスに一緒に入っていたもう1錠のカプセルもMDMAであることは判明したが、それでもわずかMDMA2錠で、現在のところ違法薬物はこれしか発見されていない。しかも、このMDMAについて沢尻は「数週間前に、(前日のクラブとは別の)イベント会場でもらった」と供述しているという。
そう、15日夜にクラブで取り引きされるという組対5課の情報・見立ては完全に間違っていたのだ。また組対5課はMDMAではなくコカインなど別の薬物で捜査を進め逮捕状を取っていたという情報もある。ようするに、入手場所も、入手時期も、薬物の種類も、すべてが外れていたのである。「数週間前にもらった」ということは、すでに使用されてなくなっていた可能性も十分にあった。
しかもここに来て、尿検査も、簡易検査でも本鑑定でも「陰性」だったことが明らかになっている。使用容疑での逮捕・立件が困難となる可能性もある。発見されているMDMAも少量で、このままほかの証拠もなく、申告のプロセスや供述によっては所持容疑も微妙だ。たまたま逮捕できただけで、今後不起訴や起訴猶予になってもおかしくない案件。場合によっては、冤罪、不当逮捕の可能性すらある。
“たまたま”薬物が少量残っていて、“たまたま”沢尻が自己申告したから、“たまたま”逮捕できただけ。実態は「高い確度の情報」によって「確実に所持しているタイミングを狙った」どころか、誤情報に基づいた高リスクの捜査だったのだ。薬物捜査では「現物を容疑者が所持・保管している現場を確実に抑えることが最も重要」にもかかわらず、なぜこんな無茶な捜査に動いたのか、かなり不自然と言わざるを得ない。
「組対5課は、件のクラブで薬物が取引されると見て動いたようですが、発見された薬物は数週間前に別の場所で入手されたもので、しかもいまのところ、それ以外の証拠が発見できていないことを考えると、けっこうギャンブル性の高い捜査だった気がします。それに、この程度の情報で、今回、逮捕に踏み切れるなら、その前にもチャンスはあったはず。ところが、これまでは踏み切れず、今回、急に動いた。理由はわかりませんが、上層部から『早く結果を出せ』とハッパをかけられた可能性は十分あるでしょう」(全国紙社会部記者)
実際、今回の沢尻に対する内偵捜査の期間は、これまでの著名人が薬物で逮捕されたときに比べると、かなり短い。今回、組対5課は1カ月前から沢尻を内偵捜査していたとしているが、同じ組対5課が逮捕したASKAは約9カ月、清原も1年以上、内偵されていた(麻取なので事情が違うかもしれないが、ピエール瀧も半年以上内偵されていた)。「週刊文春」(文藝春秋)が取材に動き始めた3カ月前から組対5課も動いていたとしても、それでも短い。
もっと内偵捜査を重ねていれば、もう少し情報の精度を上げることはできたのではないか。しかも、大河ドラマの撮影に入っていることを考えれば、早く動かないと沢尻が海外に逃亡してしまうというような可能性も考えにくい。にも関わらず、拙速な逮捕に踏み切ったのである。
権力への疑念を「陰謀論」と封じ込めて誰が得をするのか
では、確実な情報もなく、内偵捜査の期間も短く、逃亡のリスクも低いにもかかわらず、組対5課は一体なぜ沢尻逮捕を焦ったのか。
この不自然すぎる経緯を考えると、やはり、上層部から何らかの理由で「早く逮捕しろ」と急かされていたとしか考えられない。逆に、そういった政治的な理由がなかったとしたら、組対5課はよほど間抜けか、信じられないくらい杜撰ということになる。
そして、前述したように、沢尻エリカを逮捕した組対部は、山口敬之氏の逮捕を潰し、安倍首相の秘書の子を殴ったというだけでわざわざ捜査一課を投入した“安倍政権の私兵”中村官房長の影響力が強い部署なのだ、
もちろん、それでも、これらはあくまで状況証拠から導き出した推論に過ぎず、本サイトが警視庁内部から「上から指示があった」「中村氏の命令があった」との情報を取れているわけではない。だからこそ、本サイトもここまで記事にはしてこなかった。
しかし、少なくとも疑念を抱くには十分な状況があり、個人がSNSなどで、両者の動きの間に何か因果関係があるのではないかと疑念を発することには何の問題もないはずだ。それどころか、そうしたツイートがきっかけで情報や内部告発が集まり、不正追及の端緒になる可能性もある。
害悪なのはむしろ、こうした権力への疑念を「陰謀論」と攻撃して封じてしまうことのほうではないか。
前述したように、彼らはあたかも自分が「リテラシー」があるふうに振舞っているが、実際は「わかりやすい証拠」がないものを全て「デマ」「陰謀論」と決めつけているだけであり、その安易な思考、世界の単純化は結局「陰謀論」の裏返しでしかない。
しかも、こうした「陰謀論」取締論者に特徴的なのは、権力への視線がやたら甘いことだ。SNSやメディアの些細な間違いには敏感で「フェイクだ」「陰謀論だ」と過剰に騒ぎ立てる一方、権力の行動についてはやたら善意の解釈をする。
検察や警察が政治家のいうことなんて聞くはずがない、メディアに圧力なんてかけるはずがない……。前出の元「Buzzfeed」石戸諭氏は前掲の論考で、ラサールが半分冗談で次期逮捕予定者リストがあるんじゃ…といったことをあげつらい、〈そもそも「桜を見る会」の出席者名簿すら管理できない政権で、なぜ芸能人の逮捕リストを管理できるのか〉などとしたり顔で突っ込んでいたが、安倍政権は「桜を見る会」出席者名簿を管理できていなかったわけではでない。追及された途端に意図的に破棄したのだ。
文書破棄という犯罪的行為によって国民の知る権利を阻害している政権を「管理がゆるい」ように表現してしまう。この権力への善意的解釈は、それこそ認知バイアスがかかっているとしか思えない。
しかし、メディアやネットではなぜか、こうした意見が「リテラシーの高いもの」として評価され、普通に抱くであろう疑問を呈しただけのラサールのほうがトンデモ扱いされているのだ。
その結果、誰が得をするのか。権力を疑う声がどんどん萎縮し、小さくなって、政権はどんどんやり放題になる。実際、本サイトがここまで指摘してきたような沢尻逮捕の不可解な経緯はもはや、誰も口にしなくなった。
もちろん、在日特権や田布施システムのようなヘイトスピーチは論外だし、フェイクやデマを指摘することも重要だ。しかし、政権に対する推論や疑義を同列に批判するべきではないし、実際に起きている現象に対して分析することまで批判するのは、百害あって一利なしだろう。
石戸氏は、前掲の「陰謀論」批判の論考のなかで、〈関連が薄そうな問題をセンセーショナルにつなげて、証拠もないままに陰謀論を展開することは、結果として政治への関心の低下を導くのではないか。〉と書いていたが、むしろ、乱暴な「陰謀論」との決めつけが政権へのチェックをどんどん甘くしていると考えるべきではないのか。
(編集部)
最終更新:2019.11.25 09:50
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傀儡・小泉進次郎が改革できない“キングメーカー菅義偉”の官房機密費疑惑! 不正選挙やメディア対策にも
兵庫・斎藤知事問題で維新の責任を改めて検証! 局長を“自死”に追い詰めた維新県議、課長の自死は吉村肝煎り優勝パレードが原因か
自民党総裁選広告「THE MATCH」は「おじさん」どころか「腐敗ジジイの詰め合わせ」だ! 担当の平井広報本部長は親族ぐるみ税優遇
岸田首相「総裁選不出馬」にごまかされるな! 後継候補の河野太郎、高市早苗、石破茂、小泉進次郎、小林鷹之の欺瞞
都知事候補討論会ですっとぼけるも…小池百合子に清和会時代、裏金を受け取っていた可能性が浮上! 派閥上納額は安倍を超える120万円
裏金裁判で安倍派幹部たちの嘘が明らかに! 抜け穴だらけの政治資金規正法改悪で幕引き図ろうとする自民・岸田政権
瀬戸内寂聴が生前、語っていた護憲と反戦…「美しい憲法を汚した安倍政権は世界の恥」と語り、ネトウヨから攻撃も
「BTSグラミー賞逃す」報道に「韓国人のニュースいらない」「日本人の受賞を報じろ」と炎上攻撃が! 日本スゴイの精神的鎖国
ぼうごなつこ『100日で崩壊する政権』を読めば、安倍首相が病気で辞任ししたのでなく国民が声をあげ追い詰めたことがよくわかる
百田尚樹が「安倍総理にお疲れ様とメールしても返信なし、知人には返信があったのに」とすねると、2日後に「安倍総理から電話きた」
村上春樹が長編小説『騎士団長殺し』とエッセイ『猫を棄てる』に込めた歴史修正主義との対決姿勢! 父親の戦中の凄惨な中国人虐殺の記憶を…
村上春樹がエッセイ『猫を棄てる』を書いたのは歴史修正主義と対決するためだった! 父親の戦中の凄惨な中国人虐殺の記憶を…
安倍首相に利用された星野源がエッセイに書いていた“音楽が政治に利用される危険性” 「X JAPANを使った小泉純一郎のように」
“宇予くん”で改憲煽動のJCと手を組んだTwitter Japanはやっぱり右が大好きだった! 代表は自民党で講演、役員はケントに“いいね”
ウィーン芸術展公認取り消しを会田誠、Chim↑Pomらが批判! あいトリ以降相次ぐ“検閲”はネトウヨ・極右政治家の共犯だ
「ノーベル賞は日本人ではありませんでした」報道で露呈した日本の“精神的鎖国” 文化も科学もスポーツも「日本スゴイ」に回収
幸福の科学出家騒動は清水富美加個人の責任なのか? カルト宗教信者の子どもたちが抱える問題
話題の本『夫のちんぽが入らない』のタイトルに込められた深い意味…しかし一方では広告掲載拒否の動きが
福島の子ども甲状腺がん検診「縮小」にノーベル賞の益川教授らが怒りの反論! 一方、縮小派のバックには日本財団
介護殺人に追い込まれた家族の壮絶な告白! 施設に預ける費用もなく介護疲れの果てにタオルで最愛の人の首を…
宇多田ヒカル「東京はなんて子育てしにくそう」発言は正しい! 英国と日本で育児への社会的ケアはこんなに違う
今もやまぬ人工透析自己責任論の嘘を改めて指摘! 糖尿病の原因は体質遺伝、そして貧困と労働環境の悪化だった
『最貧困女子』著者が脳機能障害に! 自分が障害をもってわかった生活保護の手続もできない貧困女性の苦しみ
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