成宮寛貴の引退宣言で強まる「フライデー」批判 でも引退に追い込んだのはテレビ報道のほうだ!

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『TOP COAT』公式サイトプロフィールより


〈自分にはもう耐えられそうにありません〉──「フライデー」(講談社)によるコカイン吸引疑惑報道を受け9日、芸能界引退を発表した俳優の成宮寛貴。突然の引退発表が世間に与えた衝撃は大きく、直筆の引退コメントが公表されると、一気に「『フライデー』が成宮を引退に追い込んだ!」「週刊誌が人の人生を潰していいのか!」と同誌に対する批判がネット上に溢れかえった。

 また、同様に『ワイドナショー』(フジテレビ)では、先週放送分で松本人志も「下手したら廃刊ですよ」と「フライデー」を批判していた。

 しかし今回、成宮を引退にまで追い込んだのは「フライデー」だけの問題ではない。それは“テレビの後追い報道”の大きさだ。

 たしかに「フライデー」は、今月2日に発売された号で第一報を打ち、成宮が引退発表をした9日には第二弾として、成宮がコカインを知人に要求する「肉声データ」の詳細を報じていた。

 だが、ここまで大きな騒動にいたったのは、2日発売の「フライデー」の報道を、『ワイドナショー』を含めたテレビのワイドショーがこぞって取り上げた結果だ。

 今回、成宮の疑惑はあくまで「疑惑」であって、ASKAや清原和博のように逮捕されて事件化したわけではない。そして、今回のように“グレー”な報道を週刊誌やスポーツ紙がおこなったとき、テレビは通常、話題として取り上げることなくスルーしてきた。事実、清原の薬物疑惑を「週刊文春」(文藝春秋)がスクープした際も、テレビは沈黙していた。

 しかし、今回は違った。「フライデー」が報じた成宮の「疑惑」を、『とくダネ!』『直撃LIVE グッディ!』(フジテレビ)や『情報ライブ ミヤネ屋』(読売テレビ)などのワイドショーが同誌発売日に一斉に食いつくように報じたのだ。

 なぜ、逮捕されたわけでもない成宮の薬物疑惑を、今回、テレビが取り上げたのか。それは本サイトでも既報の通り、成宮が所属するプロダクション・トップコートが“芸能界の後ろ盾”の弱い事務所だったからだ。さらに、トップコートは中規模ながらも現在、人気絶頂の菅田将暉や圧倒的な好感度を誇る杏といった売れっ子を抱え、破竹の勢いにある。これを大手芸能プロは疎ましく見ており、今回の成宮の「疑惑」発覚によって潰しにかかろうとしていた、という声も業界内では囁かれている。

 一方、いつもは大手芸能事務所に頭の上がらないテレビ局も、そうした大手の動向を察知。しかも、ASKAや清原などの“薬物事件報道”が数字をもっていることは経験済みで、「疑惑」段階であるにもかかわらず「フライデー」の後追いに踏み切った。テレビ局は成宮の事務所の“力の弱さ”につけ込んだのだ。

 前回の記事でも述べたが、2008年に「週刊現代」(講談社)は、嵐・大野智の“大麻3P疑惑”を報じたことがあった。記事では、大野とカラオケボックスで同席した女性が、参加者の取り出した大麻を大野が「面白いねぇ~」と言いながら楽しげにそれを吸ったこと、その後、カラオケボックスを出て女性2名と3Pとなったことなどを告白。しかも、大野があきらかに“イってる”目つきで女性と写っている写真も掲載され、その内容はある意味、今回の「フライデー」の成宮記事よりも生々しいものだった。

 だが、このとき、大野の大麻疑惑を報じたテレビ局は一社もない。スポーツ紙も東京スポーツのみが後追い記事を出しただけだ。もちろん、「週刊現代」が出たあとも、大野がテレビ出演を見合わせるなんてことは一切なかった。

 これは、清原のケースでもほとんど同じだった。「週刊文春」が覚醒剤使用疑惑を暴き、警察が内偵を続けているという情報がマスコミで流れても、テレビ局は清原がバーニング系の大手芸能プロダクション・ケイダッシュの“所属扱い”だったことから問題視せず、『中居正広の金曜日のスマたちへ』(TBS)をはじめとして清原を番組に出演させてきた。また、いよいよ警察が清原を逮捕することをキャッチした各テレビ局は清原を隠し撮りして徹底マークしたが、このときもケイダッシュからの抗議を恐れ、逮捕までは一切、疑惑を報じることはなかった。報道そのものを、テレビ局は「なかったもの」として扱ったのだ。

 成宮の場合も、「フライデー」のスクープだけならば、ネット上で記事が拡散されるようなことがあっても、大野や逮捕前の清原のときのようにテレビ局が無視を決め込んでいれば、これほどの大騒動になっていなかったのは確実だろう。

 実際、こうしたテレビ局の対応が、その後の成宮の方向性を決定づけていった。

「事務所がもっとも頭を抱えたのは、すでに撮影に入っていた来年1月スタートのテレ朝ドラマ『就活家族~きっと、うまくいく~』への影響です。『フライデー』で記事になるとわかった段階では、事務所側も“事実無根”と主張し、仕事を継続させることで潔白を強調したがっていましたが、ワイドショーがあれだけ大々的に記事を取り上げたことで、それができなくなってしまった。それはテレ朝も同じ。表向きは、成宮の引退発表を受けて出演見合わせを決定したとテレ朝は説明していますが、降板はそれ以前に決まっていた。だから引退発表後、あれだけのスピードでテレ朝は今後の対応を公表できたんです」(芸能プロ関係者)

 こうした流れのなかで成宮が追い詰められていったことは、想像に難しくない。

「直接的ではないものの、事務所は自分を見放すつもりだということを成宮もはっきり感じたのでしょう。引退という宣言は、そうしてギリギリのところまで追い込まれた上で出てきたものだった」(同前)

 芸能界における力関係に追随し、“力のない”成宮だったからこそ疑惑でしかない記事を大きく報じたテレビ局。それなのに、テレビは自分たちの責任は棚に置く。この状況は、あまりに歪だとしか言いようがない。

 そして、忘れてはいけないのは、これは政治にかんする報道とも共通する問題であるということだ。現に、菅義偉官房長官への巨額の迂回献金疑惑など、週刊誌がどれだけ安倍政権のスキャンダルを報じても、テレビはそれを後追いすることなく完全に見て見ぬふり。そうやってテレビは内閣支持率の安定化に寄与しているのだ。

 ほんとうに伝えなくてはいけない問題は報じずに、弱い者は心置きなく俎上に載せる。世論にもっとも影響を与えているテレビの責任は非常に重いが、こんな態度で権力の監視などできるはずもないだろう。
(時田章広)

最終更新:2016.12.11 11:40

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