TOKIO長瀬とクドカンが「袋とじはもう開けない」「見てるのは城島だけ」…週刊誌の袋とじはなぜ読者に見放された?

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袋とじに魅力を感じなくなってしまったのは長瀬とクドカンだけじゃない(映画『TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ』公式サイトより)


 ベッキー不倫、甘利口利き問題、イクキュウ議員不倫……とスクープ連発している「週刊文春」だが、部数でも他の週刊誌を大きく引き離しひとり勝ち状態が続いている。長らく不況が叫ばれる出版業界だが、とくに雑誌、そのなかでも週刊誌全体の落ち込みはとりわけ厳しい。先日発表された「出版月報」(出版科学研究所)の2015年1〜11月期の売り上げ調査によると、週刊誌は前年比13.4%減(月刊誌は6.9%減)というかつてない下落幅を記録。週刊誌離れがますます加速している。

 そんな状況下、「SPA!」(扶桑社)16年2月9・16日合併号のなかで、長瀬智也(TOKIO)と宮藤官九郎が、週刊誌の「袋とじ」についてこんなことを語った。

長瀬「たしかに週刊誌の袋とじを「見たいなぁ」と思ってた頃もありましたけど、それよりもやっぱり今はカッコいいバイクを作ったりとか、そっちのほうが興奮するんです。その代わり、うちの城島(茂)がよく楽屋にある週刊誌の袋とじを一生懸命みんなにバレないように開けようとしてますけど(笑)」

宮藤「僕は最近、みんなで回し読みした週刊誌の袋とじが開いてなかったことにショックを受けましたね。「なんで開けなかったの?」って聞いたら「いや、もうだいたい何が入っているかわかるからいいです」って言われて妙に納得する自分がいて。たぶん、もう開けなくていい境地に達したんだと思う(笑)」

長瀬「「これ以上は行かないだろうな」という確信があるんでしょうね」

 開けたところで、どうせ期待したようなものは載っていない。かつては胸を踊らせながら袋とじを開けていた彼らも、積み重なった失望感から、ついには袋とじを開けることすらしなくなってしまったと言う。週刊誌の編集部にしてみたらなんとも耳の痛い話だろうが、実は長瀬・クドカンと同じ思いを抱いている人も多いのではないだろうか?

 現在でも続く週刊誌の袋とじ企画が一気に定着を見せ始めるのは、98年ごろから。「週刊大衆」(双葉社)は、98年1月5・12日号の「有名アイドル28人 パンチラ・胸チラ集」から袋とじを定期化。他の週刊誌も時を同じくして袋とじ企画を定期的に採用するようになっていった。

 そして、2000年代に入ると、袋とじブームはエスカレート。たんにページを閉じただけではないさまざまな袋とじ企画が次々と生まれた。

 例えば、「週刊現代」(講談社)02年11月16日号には「キッスができる 小池栄子と過ごす一日(匂い付き)」という袋とじが好評を博し、ほぼ完売の売れ行きを記録している。また、匂い付きといえば「FLASH」(光文社)も負けてはいない。03年3月11日号には、袋を開けるとグラビアアイドルのMEGUMIが愛用している石けんの匂いが香る、日本の印刷技術の粋を集めた特集が大きな話題を呼んだ。

 エロ系の企画にも創意工夫が溢れていた。「ヤングマガジン」(講談社)03年1月8日号は、AV女優の蒼井そらが股間に音符を当て、童謡「チューリップ」の楽譜を再現するというおバカ企画を掲載。また、「宝島」(宝島社)1999年1月6日号は、AV女優・瞳リョウの原寸大オッパイを掲載。型通り切り抜いてなにか柔らかいものに包めば、実際に瞳リョウのオッパイを揉んでいるような感覚を味わえる工作企画が載っていた。

 しかし、いまの袋とじに往時の勢いはない。前述したような仕掛けのある袋とじはなくなり、ただ、アリバイ的に、有名タレントのセミヌードやAV女優のヘアヌードが袋に閉じられているだけだ。

 それも当然だろう。実は、今、週刊誌が袋とじを続けているのは、かつてとはまったくちがう、かなり消極的な理由によるものだ。

 ひとつは、下降の一途をたどる売り上げをなんとか持ちこたえさせること。本稿冒頭にもあげた通り、週刊誌を襲う不況の波は絶望的だ。読者を立ち読みで終わらせず、なんとかレジまで向かわせたい。袋とじはそのための手段でもある。

 日本出版学会『白書出版業界2010』(文化通信社)によると、出版物の市場が最も大きかったのは96年。その年は2兆6563万円もの額を稼ぎだしていた。しかし、そこからは終わりの見えない出版不況に突入。袋とじ企画が週刊誌に定着したのが98年ごろということを考えると、出版界がどうして袋とじを採用したかの意図が見えるだろう。

 そしてもうひとつの理由が、2004年に施行された改正青少年健全育成条例である。現在、コンビニで成人マークが付いている本には必ずシールが貼られ、店頭で開くことができなくなっているが、それはこの条例を受けての自主規制だ。性的な写真や絵が20ページ以上、もしくは、本全体のページ総数の5分の1を占めている場合、シール貼りの対象となってしまう。袋とじにすればその条件に当てはまるのを回避できるので、ヌードは袋とじにする傾向がある。

 ただ、現在、多くの男たちの心を袋とじから離してしまっている最も大きな要因は、なんといっても、扉ページのキャッチコピーで煽るだけ煽っておいて、開けてみたらなんとも「しょぼい」グラビアが出てくる、詐欺のような袋とじが乱発されていることだろう。

 ここ最近のものを例にあげれば、「FRIDAY」(講談社)15年10月23日号の「壇蜜 熱帯のヌード」という袋とじは「ヌード」という言葉とは裏腹に、アンダーヘアどころか乳首すら出ていない。また、同誌15年10月16日号には、『テラスハウス』(フジテレビ系)出演者の島袋聖南がグラビアに登場。「生まれたままの聖南」という惹句が付けられ、いかにもヌードを連想させるものだったが、中身は生ぬるいガッカリグラビアであった。

 このようなやり口は、「FRIDAY」だけにとどまらない。「FLASH」(光文社)16年2月16日号に掲載されている「国民的アイドル卒業メンバー 全部脱いじゃった!」という平嶋夏海や金子栞、森川彩香らAKB48グループOGたちのグラビアをまとめた袋とじは、そのタイトルに反して、セミヌードすら存在しない、全員が水着の袋とじであった。よく見たら、「全部脱いじゃった」というキャッチの下に小さく「制服」という言葉が吹き出しで付いている。向こうも手慣れたものなのである。

 以上のような事例を見ても分かる通り、今や袋とじは、話題性はあるものの、中身は微妙なグラビアを掲載する際に、そのしょぼさをごまかすためのテクニックとして使われつつあるのだ。

 まさに長瀬、クドカンが言うように、「もうだいたい何が入っているかわかるからいい」「「これ以上は行かないだろうな」という確信がある」という状態。どんどん制作費が削られていく現在では、かつてのようなチャレンジングな袋とじ企画はもう難しいのかもしれない。それでも、城島リーダーだけでなくTOKIO全員が思わず開けてしまいたくなるような袋とじもまた見てみたい気もするのだが……。
(田中 教)

最終更新:2018.10.18 05:48

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