家族への謝罪要求、経歴暴露…イスラム国事件で後藤さんを攻撃する“クズ”たち

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 印刷
is_01_150129.jpg
27日にイスラム国から公開された画像を伝える日本国内のニュース(YouTube「ANNnewsCH」より)


 膠着するイスラム国人質事件。事態が長期化するなかで、再び自己責任論が盛んになり始めた。たとえば、タレントのデヴィ夫人が29日に自身のブログに書き込んだ内容がネット上で話題となっている。

「不謹慎ではありますが、後藤さんに話すことが出来たらいっそ自決してほしいと言いたい」
「そもそも殺害されたと言われている湯川遥菜さんと後藤健二さんがイスラム国に捕まっていなければこんなことは起きなかったのです」

 しかも、デヴィ夫人は後藤さんの母親まで、こう辛辣に批判した。

「たびたび後藤さんのお母様がマスコミに登場していますが、私は腑に落ちません。(略)自分の息子が日本や、ヨルダン、関係諸国に大・大・大・大迷惑をかけていることを棚にあげ、ひたすら安倍首相に『あと24時間しかありません。助けて下さい。』と訴えているのは、どうかと思います」

 いったいこの人は何をいっているのだろう。後藤さんは加害者ではなく、日本人が見向きもしない戦争の悲惨さを報道してきたジャーナリストなのだ。戦地の子どもたちの置かれている状況を熱心に伝えようとし、今回、シリア入りしたのも先に拉致された湯川さんの救出のためだった。インドネシア大統領の第3夫人として贅沢三昧したあげく、クーデターが起きて夫が失脚したとたんに逃げた人間に、どうして「自決」などと言う資格があるのか。

 ところが、このデヴィ夫人の発言に対して、なんとネット上では、「よく言った!感動した」「大勢殺した死刑囚との交換となったらまともな日本人なら自殺するよ」「助けるどころか死刑でもいいと思う」など、賞賛する声があがっているのだ。

 しかも、デヴィ夫人だけではなく、人質の家族にまでバッシングを向ける声はどんどん広がっている。後藤さんの母に対しては「意味が分からない」「いいからもっと謝れ」の大合唱を浴びせ、29日に人質の解放を訴えるメッセージを公開した後藤さんの妻に対しては、あるニュースサイトに、こんな心ないコメントが多数寄せられていた。

「日本政府に迷惑かけてることを謝罪が先だ 家族をメディアの注目から守るためだのどこまでも自分勝手な一家」
「いつまでくだらねえゲームやるつもりだ?マジで全員死ねよ」
「後藤健二が死ぬことを切に願う。これが国益」

 しかも、ネトウヨたちは石堂さんと後藤さんの名字が異なることを理由にして、後藤さんが「在日」であるという無根拠な情報を流布させはじめた。これに乗っかったのが、元航空幕僚長の田母神俊雄で、先日、本サイトでも指摘したように、ツイッターで「ネットでは在日の方で通名を使っているからだという情報が流れていますが、真偽のほどは分かりません。マスコミにも後藤健二さんの経歴なども調べて流して欲しいと思います」などと、元自衛隊幹部とは思えないような発言をしたのだ。

 また、後藤さんについてはツイッターで〈後藤健二は、反日極左や反日カルトのテロ集団の巣窟【西早稲田2-3-18】の「日本基督教団」の信徒だ!〉などという意味不明のカキコミも広がっている。

 後藤さんにはたしかに、10数年ほど前に日本基督教団の教会で洗礼を受け、キリスト教の信徒となっていたという報道があった。だが、日本基督教団は左翼でもカルトでもなく、宗教団体法が施行された1940年の翌年、福音主義教会30余派の合同により誕生した歴史のあるキリスト教団体だ。一般には日本最大級のプロテスタント系組織として知られ、有名なところでは石破茂地方創生相も日本基督教団系の教会で洗礼を受けている。

 ところが、上記住所にあるキリスト教系団体のひとつが「在日外国人の人権委員会」などを設置していたため、ネトウヨやヘイト団体が教団を標的にし始め、昨年7月にはヘイト団体がデモをかける騒動にまで発展している。いまや上記の住所は“ネトウヨの定番ネタ”にまでなっているのだ。

 もちろん、これに対しては全国キリスト教連絡協議会などのキリスト教10団体が「教会共同声明」を発表し、「(ヘイトデモの)主催者は『反日の牙城(日本基督教会館に突入!)』と謳い、日本キリスト教会館ならびにキリスト教視聴覚センター(AVACO) を『朝鮮カルト』と名指しました。この主張は、全くの事実誤認にもとづく名誉毀損行為です」と強く抗議しているが、無教養なネトウヨたちは「教団=朝鮮カルト団体」などという“完全なデマ”を鵜呑み。そのデマを根拠にして、後藤さんに「反日」「在日朝鮮人」などとレッテル張りをしているのである。

 後藤さんへの攻撃はネットだけではない。たとえば、「週刊文春」(文藝春秋)は2月5日号で、「『10分300万円』に命を賭けた 後藤健二さん 書かれざる数奇な人生」と題した記事を掲載。後藤さんが、過去にボディビルジムでコーチの仕事をしていたとし、ジムのオーナーという人物による、後藤さんとの「500万円の金銭トラブル」があったというコメントを載せた。さらに同じ人物からは、「彼は風俗店をやっていたのです」という発言をひきだしている。これがネットに転載され、案の定、ネットの一部で“祭り”となっている。

 だが、この文春のコメントは、ジムオーナーなる人物ただひとりの証言に依るもので、事実かどうかは疑わしい。よしんば本当だとしても、今回の事件とは何の関係もない。本人が拘束されているこの状況で後藤さんにとっては反論の余地がなく、文春のやり口はあまりに姑息だろう。

 しかも、最悪なのがタイトルにもなっていた「10分300万」だ。実は、これは後藤さんが喋っていたことでもなんでもない。わざわざ「映像が番組で流されれば十分間で二百万から三百万ほどのギャラをもらえますから」と言う「面識のあるフリージャーナリスト」のコメントを持ち出して、明らかに後藤さんが金目的でイスラム国に接近したとのトーンで文春が書いただけなのだ。だが、彼らはフリーの戦場ジャーナリストがどんな苛酷な経済状況におかれているのかを知らないのか。イスラム国への取材で「二百万から三百万ほどのギャラ」をもらおうとするのが守銭奴だというなら、文春の社員は麹町でふんぞりかえって、いくら給料をもらって、いくら経費を使っているのか。

 そもそも、準備もアポもすべて自分で行ったうえで、社員が行かない「危険な場所」で取材をするフリーのジャーナリストに、同じジャーナリズムの世界で生きている人間が平気でこういった誹謗中傷を浴びせるような真似をすること自体が信じられないのだ。

 こうした後藤さんバッシングの背景にあるのはやはり、この国独特の「個人は国に迷惑をかけるな」という意識だろう。

 勝手な事をするな、国の方針に黙って従え、そして、国民は上からいわれたことをやってればいい──。それがどんなに倫理や正義感やに基づいた行動であろうと、国家の意に反したら、必ず叩かれる。

 2004年のイラク人質事件での人質バッシングについて、米「ニューヨーク・タイムズ」が「深層には、この島国を何世紀にもわたって支配し続けてきたヒエラルキー構造がある。お上(okami)にたてつくことが、人質たちの罪となったのだ」と報じたが、その頃から状況はさらに悪化しているのかもしれない。
(梶田陽介)

【検証!イスラム国人質事件シリーズはこちらから→(リンク)】

最終更新:2017.12.09 05:14

「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。

この記事に関する本・雑誌

もしも学校に行けたら―アフガニスタンの少女・マリアムの物語

新着 芸能・エンタメ スキャンダル ビジネス 社会 カルチャー くらし

家族への謝罪要求、経歴暴露…イスラム国事件で後藤さんを攻撃する“クズ”たちのページです。LITERAは政治・マスコミ・ジャーナリズム・オピニオン・社会問題や芸能(エンタメ)・スキャンダル・カルチャーなど社会で話題のニュースを本や雑誌から掘り起こすサイトです。イスラム国人質事件、デヴィ・スカルノ、ネトウヨ、梶田陽介、田母神俊雄、週刊文春の記事ならリテラへ。

人気記事ランキング

1 市川沙耶と熱愛・野島アナに二股の過去
2 統一教会最古参元幹部が安倍晋三と教団の深い関係をテレビで激白!
3 小倉優香の番組中「辞めさせてください」の本当の理由は番組のセクハラ
4 葵つかさが「松潤とは終わった」と
5 高市“飲酒G7ドタキャン”を隠すため茂木外相が嘘答弁!嘘に嘘を重ねる迷走
6 高市政権と日本会議「明治の日」復活の策謀
7 国民民主党・玉木雄一郎「改憲」への危険な野望! 
8 吉高由里子が元カレに言った一言
9 高市早苗“G7ドタキャン”言い訳の嘘と本当の理由を徹底検証!
10 能年玲奈に前事務所が「本名、使うな」
11 「議員定数削減」で自民・維新は議席占有率アップと「企業献金」温存の一挙両得
12 グッディ高橋克実が北朝鮮危機で本音
13 RADWIMPS野田洋次郎の優生思想丸出し差別発言の背景にあるもの
14 堀江貴文「税金泥棒」発言で晒した年金問題への無知と頭の悪さ
15 テラスハウスの出演者がセクハラ告白
16 「アジア大会」運営を大阪万博の工費未払いトラブル会社が受注
17 キティ、マイメロが戦争反対を訴え!
18 りえママ、娘にたけしとの不倫を強要!?
19 高市早苗が「戦争をしたがっている」ことを証明するトンデモ発言集!
20 三笠宮家に夫妻、母娘の断絶が!

カテゴリ別ランキング

マガジン9

人気連載

アベを倒したい!

アベを倒したい!

室井佑月

ブラ弁は見た!

ブラ弁は見た!

ブラック企業被害対策弁護団

ニッポン抑圧と腐敗の現場

ニッポン抑圧と腐敗の現場

横田 一

メディア定点観測

メディア定点観測

編集部

ネット右翼の15年

ネット右翼の15年

野間易通

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

赤井 歪

政治からテレビを守れ!

政治からテレビを守れ!

水島宏明

「売れてる本」の取扱説明書

「売れてる本」の取扱説明書

武田砂鉄