横田一「ニッポン抑圧と腐敗の現場」④

「原発再稼働は認めない」と断言した新潟県知事に、東電・原子力ムラのネガティブキャンペーンが激化!

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 この土地転がしで得た5億円を資金に田中元首相は、佐藤栄作首相(当時)の後継を決める1972年の自民党総裁選で億単位の金をばらまいて首相ポストを射止めた。全国に新幹線や高速道路を張り巡らせた実績は語り継がれているが、途方もない負の遺産を残した犯罪的行為についてはあまり知られていない。

「角栄王国」とも呼ばれた新潟で自民党が12年前に担ぎ出して初当選した全国最年少知事の泉田氏は、就任直後と3年後の中越沖地震で陣頭指揮を取った。

 特に2007年7月の中越沖地震では、柏崎刈羽原発は緊急停止でメルトダウンは免れたものの、放射能漏れと火災事故が発生。しかし軟弱地盤の上に立つ敷地内外では道路の陥没や地割れが続出、消火作業や避難に支障をきたした。この混乱の中で奮闘した泉田知事は、「安全神話」にすがって杜撰な「原子力防災(原発事故時の災害対応)」で事足りていた東電や経産省に厳しい姿勢を取り始める。放射能被曝の遮断可能な「重要免震棟」が遅ればせながら柏崎刈羽原発に設置されたのも泉田前知事の功績だが、「同じ東電の原発で同じ沸騰水型の福島第一原発にも設置すべき」と東電に提案、実現させるのにも貢献したのだ。

 ちなみに福島第一原発に重要免震棟が完成したのは、東日本大震災のわずか8カ月前。この重要免震棟で吉田昌郎所長(故人)が原発事故対応の陣頭指揮を取ったことに注目すれば、泉田前知事もまた現場に最後まで残った吉田所長ら“決死隊”社員と同様、「関東圏に人が住めなくなる」という最悪の事態回避に貢献した功労者に違いない。

 現場体験で「原子力防災の第一人者」に鍛え上げられた泉田前知事の知名度がアップするにつれて、原子力ムラの攻撃は激しさを増し、古巣の経産省からは「変人知事」という情報を流されるようにもなった。現役霞ヶ関官僚がペンネームで書いた小説『原発ホワイトアウト』(若杉冽/講談社)では、泉田前知事をモデルにした伊豆田知事が原発推進勢力の仕掛けた陰謀で逮捕されて失脚、その後に原発テロでメルトダウンに至る結末となっていた。

 この小説と同じようなことが現実で起きた。自民党と地元紙「新潟日報」と東電が水面下で連携しているようにみえる“泉田知事降ろしキャンペーン”が新潟県知事選を控えた昨年夏頃から激しくなり、告示を1カ月後に迫った8月30日に泉田知事が4選出馬撤回を発表したのだ。

 この時、株式市場は「自公推薦候補の森民夫・前長岡市長の当選は確実。柏崎刈羽原発再稼働の可能性が高まった」と判断、東電の株価は上昇した。そんな中、「福島原発事故の検証と総括なき再稼働はありえない」が持論の泉田路線の継承を掲げて立候補、奇跡の逆転勝利をしたのが、米山知事だった。

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