ホリエモン、浅田真央のタクシー運転手叩きは弱い者いじめだ! タクシー運転手の置かれた過酷な環境をわかっているのか

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話題の堀江貴文ツイッター

 ホリエモンこと堀江貴文のタクシー攻撃が大きな話題になっている。
 
 堀江貴文は20日、ツイッターに車のナンバーや運転手の顔が判別できる写真をつけて〈俺が手を挙げた瞬間に回送にしやがったクソタクシー笑〉という文章を投稿。乗車を求めた瞬間にタクシーの表示が「空車」から「回送」になった旨を主張し、そのまま、フォロワーからのリプライに応えるかたちで〈乗車拒否は違法行為〉といった文言を何度も繰り返していた。

 堀江の言う「乗車拒否」問題だが、「回送」「空車」などの表示はドライバーが手動で制御する部分であり、切り替え忘れることも多い。食事や休憩に向かっていたり、営業が終わり車庫に帰っていたり、帰庫時間が迫っているなかで手を上げている乗客に遭遇し、そこで初めて表示の切り替えを忘れていることに気づいた可能性も十分考えられるだろう。であれば意図的なものではなく単なるミスだし、堀江は「明らかに俺の手を見て」たなど強弁しているが、たまたまタイミングが重なった可能性だって十分あり得る。目の前で回送表示に切り替わるなど、よくあることだ。怒り狂って、公の場にさらし上げて攻撃するようなことなのか。

 堀江がSNSでタクシー運転手の批判をするのはこれが初めてのことではない。たとえば、昨年12月にも〈「ええと、銀座でタクシー乗り場で待ってて手を振りまくってたのに普通にスルーするのは普通なんでしょうか?」〉などとやはりタクシーの写真付きでツイート。また、昨年8月にも〈「そんなに広くない道で手をめっちゃ振ってたのに、通り過ぎて追っかけたのに逃げやがった。ナンバー暗くて見えなかった。ひどい乗車拒否の●●●●(引用者注:実際は社名)」〉とわざわざ社名を挙げてツイートしている。

 今回の目の前で回送表示に切り替わった件もそうだが、手を上げているのに空車表示のタクシーが目の前を通り過ぎることも、別にめずらしいことではない。ホリエモンが毎回ツイートしているのかわからないが、日常的にタクシーを使用しているのであれば1年で3回はむしろ少ないくらい。気づいてないケースはもちろん、近くにいる別の乗客をすでに目指しているケースもあれば、道路状況で止まりづらいケースもある。ホリエモンの銀座のケースでも、ルート規制のある場所だったのではないかとの指摘もあった。

 だいたい「乗車拒否は違法」などと上から目線で言い募っているが、乗車拒否というのは「停車もしくは徐行して運送の申し込みを受けてから正当な理由なく拒絶すること」というのが一般的な解釈であり、止まらずに通り過ぎたケースは直ちに「乗車拒否」「違法」と言えるものではない。仮に違法だったとしても、こんなことで違法だなどと公の場でさらし上げ大騒ぎするのは単なる弱い者いじめだ。

 そこまでタクシーが憎く、確実なサービスを求めるのであれば、ハイヤーを使うかお抱え運転手を雇用するか、タクシーを使うにしても予約するべきだろう。現に、いま猛暑の続く都内では、つかまりづらいことを見越してか、予約車や迎車の数が非常に多い。それが煩わしくて街でタクシーをつかまえる気軽さを選んでいるのだから、たまにスルーされるくらいのことは許容すべきだろう。

 フォロワーからは諌めるリプライも届いているが、堀江はタクシー運転手叩きを反省することはなく「クソタクシー」などという悪罵まで連発している(ちなみに、最近では乗車拒否してもいい正当な理由のなかには、車内での運転手への暴言行為も含まれている)。

 実はホリエモンの2日前に、フィギュアスケートの浅田真央もタクシー運転手批判をしていた。浅田真央は、姉の舞と姉妹揃って出演した7月18日放送『PON!』(日本テレビ)のなかで「最近激怒したこと」というお題のトークとしてタクシー運転手への怒りを語った。

ホリエモンだけでなく浅田真央も、公の場でタクシー運転手叩き

 浅田真央は品川から渋谷のNHK放送センターに移動する際、タクシーを使ったそうなのだが、そのとき、余裕をもって30分前に出たのにも関わらず、45分かかってしまったことで遅刻したという。そこで彼女は、タクシー運転手がわざと遠回りしていたことに気づいたとしつつ、「タクシーの運転手さん、遠回りするのは本当に良くないと思います」「本当に許せなかったです」と語っていた。

 浅田真央に関しても、品川から渋谷まで45分かかったと大騒ぎしているわけだが、試しに経路検索サイト「NAVITIME」で検索してみると、品川から渋谷までのタクシーでの予想所用時間は約21分と出てきた。そこにきて「30分」は、余裕をもって出発したと主張するには無理があるだろう。

 浅田真央のこの騒動がいつのことなのかはわからないが、もしも、梅雨明け以降の出来事なのだとすれば、東京都内は連日猛暑日が続いており、交通量も増え渋滞も多い。それに、月末や五十日、夕方以降の時間帯などであれば交通量はさらに増え、品川・渋谷間など都心では渋滞で通常の倍以上時間がかかることも決して珍しいことでなく、45分かかったとしても、それは誤差の範囲であると言える。また、昨今のタクシーでは「意図的な遠回り」との批判を避けるため、乗車した時点で客にルートの確認をとることが一般的で、浅田真央の批判は言いがかりに近い。

 両者とも安易に叩きやすいタクシー運転手を気持ちよく揶揄しているが、本当にタクシー運転手に全面の非があるのかどうかは甚だ疑問だ。しかし、ネット上では、堀江や浅田真央に疑問を呈する声もあるが、同調してタクシー運転手を非難する声も多い。

 タクシー運転手側にも何かしらの非が多少あった可能性もゼロではないかもしれないが、堀江にしても浅田真央にしても、そこまで確実で完璧で質の高いサービスを求めるのであれば、ハイヤーを使うなり、タクシーだとしても予約しておくなりするべきだろう。それをタクシードライバーに要求するのは、酷と言ってもいい。

 しばしば揶揄や批判の対象となりがちなタクシー運転手だが、その仕事は薄給かつ激務の非常に厳しいものである。ノンフィクション作家の矢貫隆氏が実際にタクシー運転手となって取材し、執筆した『潜入ルポ 東京タクシー運転手』(文春新書)には、東京のタクシー業界の裏側が暴かれている。

月収15万円!“陸上の蟹工船”東京のタクシー運転手が置かれた悲惨な実態

 矢貫氏がタクシー運転手となったのは、2013年5月。ここで彼は1カ月の水揚げ(売り上げ)50万円という目標を立てる。

 その結果は惨憺たるものだった。水揚げの総額は40万3230円で、この金額だと50%が運転手の取り分となる。結果、給料の総額は19万4010円で、手取りにして15万8156円しかなかったというのだ。

 タクシー運転手は多くの客を乗せれば、それだけ収入も増える。もちろん、なかには多く稼いでいる運転手もいるだろう。しかし、誰もが簡単に稼げるわけもなく、手取り15万円程度で苦しい思いをしている運転手も多いのだ。

 タクシー運転手の厳しさは安い給料だけではない。さらに、「運転手負担金」なるものが運転手にのしかかってくる。矢貫氏の給料明細にはこんな記載があったという。

「Gカラー控除、3450円」「無線控除、1050円」「クレジット、3110円」

 これらが「運転手負担金」というもので、それらが給料から引かれるのだ。

 まず「Gカラー控除」とは何か。これは、黒塗りのハイグレード車で仕事をした際、1回の業務につき150円を運転手が負担するというもの。負担の根拠は「ハイグレード車の車両価格がスタンダード車よりも高いので、その差額の一部を運転手が負担する」だという。会社が所有しているはずの車の代金を、なぜだか運転手が負担しているのだ。

「無線控除」は、「無線配車を受けたら、その回数にかかわらず一業務につき300円」というもの。これもまた名目としては無線設備の費用の一部を運転手が負担していることとなる。

 そして「クレジット」は、クレジットカードでの支払いの5%を手数料として負担するというものだ。クレジット会社に支払う手数料は3%なので、運転手は2%を余計に払っていることとなる。そもそもクレジットの手数料を運転手が負担するのもおかしいが、さらに2%を上乗せし、ここでもまた設備費用を負担させるというのだ。

 普通の会社なら、設備投資を社員に負担させるなどということはあまり聞かないが、タクシー業界ではこれが当たり前となっている。タクシー業界がいかに運転手に負荷をかけたうえで成立しているかがわかる。

 そんな厳しい状況のなか、タクシー運転手たちはできるだけ多くの客を乗せようと争奪戦を繰り返すこととなる。これがタクシー運転手たちを命の危険に晒している。

 しかも、乗客から会社にクレームを入れられれば、ドライバーはペナルティを課されたり、解雇されたり契約を切られたりすることもある。ドライバーの顔やナンバーが特定できる堀江の件も、ドライバーに非があったかどうか関係なく、会社からドライバーに何らかのペナルティが課されてしまう可能性もある。

 実際、堀江と同種のクレームがタクシー会社などに寄せられることは多いらしく、それがさらにタクシー運転手の環境を厳しいものにしていることは言うまでもない。

 極めて弱い立場に置かれ厳しい状況にあるタクシー運転手を、さらに、著名人が公共の電波やSNSで扇動しながら寄ってたかって叩く構図は、醜いと言わざるを得ないし、弱者の生活の糧を奪う可能性もある卑劣な行為であることを自覚すべきだろう。

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