安倍晋三

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「ガイコクジンノトモダチ」が収録されているゆず『BIG YELL』

 今月4日に発売された、ゆずの最新アルバム『BIG YELL』に収録された楽曲が、「愛国心扇動ソング」ではないかと物議を醸している。

 それは「ガイコクジンノトモダチ」という楽曲。北川悠仁が作詞作曲を手がけたこの楽曲は、タイトルの通り〈外国人の友達ができました〉とのフレーズから始まり、〈外国人の友達が言いました/「私、日本がとても好きなんです。あなたはどこが好きですか?」/僕は少し戸惑った だって君の方が/日本の事をよく知ってそうだから〉と続く。

 いきなり流行りの「日本スゴイ」を感じさせる歌詞だが、サビではもっと直接的なフレーズが飛び出してくる。

〈この国で生まれ 育ち 愛し 生きる/なのに どうして胸を張っちゃいけないのか?/この国で泣いて 笑い 怒り 喜ぶ/なのに 国歌はこっそり唄わなくちゃね/平和な日本 チャチャチャ/美しい日本 チャチャチャ〉

 この歌詞について、映画評論家の町山智浩氏が同日、「総理とご飯食べてないか」とツイートした上で、「『国歌はこっそり歌わなくちゃ』なんて、どっかの国に占領されたレジスタンスか? 現実は、君が代に起立しない教師は減給されるのに」とツイートしていたが、そのとおりだろう。

 国旗国歌法成立以降、この国の教育現場では君が代の斉唱が強制され、拒否した教師は処分を受けることが当たり前になり、大阪では教師が本当に歌っているかどうかをチェックする監視システムまでつくられた。また、スポーツの国際大会では、日本代表選手が「君が代」をハッキリ口を開けて歌わなかったために、袋叩きにあうという事態もしばしば起きている。いったいどこをどう解釈したら、「国歌はこっそり歌わなくちゃ」という話になるのか、意味がわからない。

右だの左だの関係ないと中立を装いながら、ネトウヨ的論理で極右に誘導

 2番も同じだ。こちらは〈外国人の友達が祈ってくれました/「もう二度とあんな戦いを共にしないように」と〉というセリフから、〈TVじゃ深刻そうに右だの左だのって/だけど 君と見た靖国の桜はキレイでした〉と唐突に靖国神社をもちだし、再びサビで、今度は国家の代わりに国旗を持ち出し、〈国旗はタンスの奥にしまいましょう/平和な日本 チャチャチャ/美しい日本 チャチャチャ〉としめる。

 たしかにこれ、どう読んでも愛国心扇動ソングだろう。しかも、そのロジックは、現実には“愛国心が強制される”状況が進行しているのに、“愛国心が抑圧されている”と被害妄想をわめきたてるネトウヨとそっくりだ。

 ところが、ネット上では“ゆずは別に右でも左でもない、国を愛する素朴な気持ちの行き場のなさを歌っただけ”“歌詞は中立的、なぜ叩かれなければいけないのか”“靖国だの国歌だのという単語が出てきただけで左翼は発狂し過ぎ”といった内容の擁護論、愛国ソング批判への反論が溢れかえっている。

 たしかに、北川は歌詞で〈右だの左だの〉と書いてイデオロギーを超えたような体をとっている。サウンドもアコースティックギターの弾き語りを中心にすえた、ゆずのイメージど真ん中の優しい曲調だ。

 しかし、実際のメッセージはまったく逆だ。〈右だの左だの〉関係ないと言いながら、国を愛することを絶対的真理のように描き、国民の命を国家に捧げさせるために作られた靖国神社をまるでイデオロギーと無関係な「不戦の誓い」の場所のように登場させる。イデオロギーを隠しながら、素朴で善意のあるファンを「思いっきり右」の価値観に誘導していく構造になっているのだ。

 しかも、そこには“愛国心を表現することが抑圧されている”というような完全に間違った前提、ネトウヨ的知識がすりこまれていく。

 そういう意味では、つるの剛士の手法に似ていて、むしろ、露骨に右派思想を煽る百田尚樹や櫻井よしこらよりも、タチが悪いとも言えるだろう。

安倍極右政権に迎合すると仕事が増える、愛国ビジネスマーケティング

 それにしても、ゆずというか北川悠仁はなぜ、こんな歌詞を書いたのか。たしかに、北川自身がもともと右派的思想の持ち主だったというのはあるのかもしれない。北川の母は新興宗教「かむながらのみち」の教主であり、本人も信者だが、この「かむながらのみち」は日本会議に参加している解脱会という宗教団体から分派した宗教で、真言宗をベースとしながらも、天照大御神を祀るなど、国粋主義的な傾向が強いといわれている。

 また、北川の公式サイトの06年の「diary」では〈今年も呼人さんと靖国参拝!〉と書いて、プロデューサーの寺岡呼人氏と靖国に赴いたことを報告するなど、ひんぱんに靖国参拝をしていることも、ファンの間では知られた話だ。

 しかし、だとしても、北川はこれまで、そうした政治的メッセージを一度も、発していなかった。それが突然、どうしたのか。

 おそらく、それはマーケティング的な戦略にもとづいたものではないか。実は「ゆず」は、3年前に1度紅白に落選するなどここ数年人気が頭打ちで、北川はこれからの方向性を模索し、試行錯誤を繰り返していた。北川は、ウェブサイト「ORICON NEWS」のインタビューでこのように話している。

「進むべき道の先が二つに分かれていて、一つは「老成する道」。今の状態を保って、それまでのゆずのイメージを大事にしていくやり方ですよね。もう一つが、「イメージを壊してでも新しいことに挑戦していく道」。僕は、ゆずにまだまだ可能性があると思った。もっと面白いことができるはずという予感がしていて」

 このインタビューの言葉からも北川の焦りは伝わってくるが、その北川が現状打破のきっかけとして考えついたのが、安倍政権的な「右の空気」に迎合した政治メッセージソングだったのではないか。

「こういう歌詞を唄うことで、みんながゆずに対して思ってることを壊したかったんだよ」
「こうやって思ってることをはっきり言うことも、ゆずとしてやり続けていくべきだと思ってる。ボロカスに叩かれるかもしんないけど(笑)。」

「音楽と人」18年5月号に掲載されているインタビューで、北川は「ガイコクジンノトモダチ」についてこう語っていたが、いま、起きている状況は逆だ。政権批判をしているタレントやミュージシャンが「芸能人が政治を語るな」「政治に音楽を持ち込むな」という批判を浴びて、テレビから姿を消す一方で、安倍政権に迎合するような保守的発言を口にするタレントや芸人は各方面でひっぱりだこになっている。ケント・ギルバートのように、落ち目でメディアから完全に消えていたのに、ネトウヨ化によって完全に復活してしまったケースもある。

 今回、ゆずが映画評論家の町山氏から「総理とご飯食べてないか」とつっこまれていたことは先に紹介したが、北川にはもしかしたら、国家的イベントや安倍政権周辺のビジネスに食い込もうという狙いがあったのかもしれない。ジャーナリストの志葉玲氏は、〈改憲を目指す安倍政権が芸能人の取り込みをはかる中、「僕らにも声かけてよ!」的なセールスに見えるわけ〉と書いていたが、そこまで露骨でなくとも、2020年の五輪に向けて、愛国エンタメはますます盛り上がるだろうし、こうした政治姿勢を打ち出しておけば、国のプロジェクトに参加できるチャンスもどんどん広がってくる。

 前出の「音楽と人」インタビューで北川は「ガイコクジンノトモダチ」について、このように解説していた。

「これは清志郎さんの〈あこがれの北朝鮮〉じゃないけど、文章にして読み上げるとかなり危険そうな内容も、ポップソングにしちゃえば、何だって歌にできるな、と思って書いてみたんだよね」

 あのね、忌野清志郎は「サマータイムブルース」や「原発音頭」で敢然と反原発を主張し、「君が代」パンクバージョンで「君が代」の権威を相対化しようとしたんだよ。ビジネス狙いで安易にネトウヨ的愛国ソングをつくったあんたといっしょにしないでくれ。

安倍晋三

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