マツコ・デラックスが「いじめられる側にも悪いところがある」論を批判! いじめる側の闇、弱者バッシングの構造も喝破

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『5時に夢中!』でもマイノリティの立場から社会を切っているマツコ(TOKYO MX『5時に夢中!』番組HPより)


 マツコ・デラックスが入院しているとの報道がされた。三半規管に菌が入りめまいなどの症状があったが、脳検査などの結果には異常はなかったという。多忙のため疲労もたまっていることから、1週間は休養するとのことだ。とりあえず大事には至ってなさそうで一安心だが、ひとまずしっかり休んでもらって回復を願いたい。

 何しろ、マツコは現在のテレビ業界において代わりのいない存在だ。それは単に「売れっ子だから」「視聴率がとれるから」といった意味ではない。弱者叩きや反ポリコレこそが“過激”でおもしろいとされる風潮のなかで、やはり“過激”“毒舌”と評されるマツコのスタンスは、一見同じように思われているかもしれないが、実際はそうした風潮とは根本的に一線を画している。そんなマツコの貴重さを痛感させられる発言が、つい最近もあった。

 実は、マツコはいじめ問題について非常に重要な発言をしていた。いじめについて語られる際、「いじめられる側にも原因がある」あるいは「いじめられたくなければ、いじめられる側も強くなるべき」といった意見をしたり顔で語る者は少なくないが、マツコはそうした意見を真っ向から否定したのだ。

 それは、「サンデー毎日」(毎日新聞出版)に掲載されている「うさぎとマツコの信じる者はダマされる」でのこと。これは、中村うさぎとマツコのふたりが読者から寄せられた悩み相談に答えていく連載企画だが、2017年11月12日号と17年11月19日号では、二週にわたって〈いじめ問題について、最近はみんなで子供をいじめから守ろうといった感じです。それはもちろんいいことでしょうが、その学校で守りきれたとしても、上の学校や社会にもいじめはあるはず。守ることも大切だけど、強くなるのも大切だと思います。お二人はどう思いますか?〉という質問に回答。

 いじめ問題を解決するにあたり、いじめられている人間が強くなることも大切といった意見を語るこの読者に対し、マツコはその考え方自体がそもそも間違っていると喝破した。

「いじめられてるのって、別にその人が悪いからいじめられてるわけじゃないからね」
「いじめなんてものに、理由なんかないの。いじめられている人に欠点があるから発生しているんじゃないんだから、そこを強くしようという発想は、もう、根本が間違ってると思う」(どちらも17年11月12日号)

ロンブー田村淳が語る、いじめ脱却の成功体験

 まさしくその通りだが、ハガキを送ってきた読者のような意見は人口に膾炙してしまっているものである。

 その背景には、かつていじめを受けていた過去をもつ者が、「自分が強くなることでいじめを克服した」や「勇気を出してやり返してやったらそれ以降はいじめられなくなった」といった成功体験を流布することで強化されている構図もあるだろう。

 そのような成功体験を語る人のひとりが、ロンドンブーツ1号2号の田村淳だ。彼は自著『35点男の立ち回り術』(日経BP社)のなかで小学校のときに受けたいじめ体験を語っている。

 彼が生まれ育ったのは、下関の彦島という小さな島。地元の小学校に入り、勉強も運動も頑張る活発な子どもだった彼だが、小学校2年生のときからいじめを受けるようになる。黒板消しで叩かれたり、身体をチョークの粉まみれにされたり、机の引き出しのなかにカビが生えたパンを入れられたりといった、苛酷ないじめが半年間も続いたそうだ。

 誰も助けてくれる様子のない状況下、彼は「まず、自分から行動しないと、終わらないだろう」と思い至る。そこで彼の頭をよぎったのは、当時の大スター、ジャッキー・チェンだった。スクリーンのなかでのジャッキーの活躍に勇気をもらった彼は驚きの行動に出る。

〈まず、近くのホームセンターに行きました。そこで丸い木の棒を2本、そして、チェーンとネジ止めを買いました。家へ帰ってきて、カンナで削ったり、2本の棒を短く切って、2本をチェーンでネジ止めして、見よう見まねで「ヌンチャク」を作ったんです。翌朝、学校に行き、ボクは行動を起こしました。教室に入ると、いきなり、みんなによく見えるように、この手製ヌンチャクを振り回し、大声をあげて暴れまくったのです。気持ちはすっかりジャッキーでした〉
〈そしてボクは、彼らのほうに向い、特にボクをいじめていた憎いヤツの顔を、その手製ヌンチャクで叩きました。もう学校中が大騒ぎです。先生からこっぴどく叱られましたし、そのヌンチャクも没収されました〉

 この日を境に生活は一変。いじめはなくなり、これまで話さなかったクラスメートも話しかけてくるようになったという。

 ロンブー淳は彼自身の体験をいじめ問題解決の道筋として示しているわけではないが、それにしても彼のような成功体験を聞くと、いじめられている側の意志の力でいじめ問題を解決できると勘違いしてしまう人が出てくるのは当然の道理だ。

 こうした「いじめられる側にも原因」論はロンブー淳に限ったことではなく、芸能界でもたとえばSEKAI NO OWARIのFukaseなどもそうした発言をしている。

 しかし、それは間違っている。いじめの問題に関していじめられている側には何の原因も責任もないし、ましてや、マツコにハガキを送ってきた読者のような「いじめから脱したければ強くなれ」などとする意見は愚の骨頂である。

マツコ・デラックス「本当に弱いのは、群れて人を攻撃している人間」

 マツコは前掲「サンデー毎日」17年11月12日号のなかで「むしろいじめてるほうに、何らかの闇があるのよ」と断言する。

 これに関しては、教育の専門家も同様の意見を述べている。教育評論家の尾木直樹氏は〈どんな事情があっても“いじめるほうが一〇〇%悪い”のです。これは「いじめ」の原理・原則です〉としたうえで、このように述べている。

〈いじめられっ子側の問題を指摘して、いじめを正当化しようとするムードがあります。これは、とんでもない間違いです。虐待は一〇〇%虐待する側が悪いのです。心理的虐待である「いじめ」も虐待する側に一〇〇%の非があります。まずは、そこから出発しなければ、今日のいじめ問題は解決を図れないのです〉(『尾木ママの「脱いじめ」論』PHP研究所)

 では、なぜ、「いじめられている側にも原因がある」や「いじめから脱したければ強くなれ」といった意見が根強く残り続けているのか。

 社会学者の森田洋司氏は『いじめとは何か 教室の問題、社会の問題』(中央公論新社)のなかで、〈いじめとは相手に脆弱性を見出し、それを利用する。あるいは、脆弱性を作り出していく過程である〉と述べ、いじめられている側が自分にも原因があると思わされてしまうことこそが、いじめの構造なのだと解説している。

 つまり、いじめられる側は、いじめる側によってつくられたいじめを肯定する構造のなかで弱い立場に追い込まれ、孤立。そのうちに、いじめられている本人も「自分にも悪いところがある」と思わせられていくというわけだ。

 マツコは、「サンデー毎日」17年11月19日号のなかでこのように語っている。

「結局、一番弱い立場に見える人のほうが、実は強いのよ。群れて、自分よりも立場が弱い人を強引に作って攻撃してる人のほうが、ホントはよっぽど弱いのよ」

 強い者の側に立ち、自分よりさらに弱い者を攻撃することで、群れて自分の居場所を確保しようとする。マツコの指摘するこのいじめの構造は決して子どもたちだけの問題でなく、いま日本全体に蔓延している弱者バッシングにも通じるものだ。

 かつての過激さは失ったと自嘲することもあるマツコだが、弱者・マイノリティの側に立つ姿勢は現在にいたるまで一貫している。よく言われる毒舌や過激さではなく、この弱者の視点こそが、現在のテレビ界でマツコを唯一無二の存在たらしめているものだ。弱者叩きや反ポリコレ、マッチョな表現が過激でおもしろいとされる風潮のなかで、メジャーシーンにあっても弱者の側に立ち続けるマツコ。ポリコレのせいでおもしろいことができないなどと嘆いているマッチョ芸人たちにも見習ってもらいたいものである。

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