横田一「ニッポン抑圧と腐敗の現場」11

被災者を苦しめる“アベ土建政治”血税をドブに捨てる暴挙になぜ小池都知事は切り込まない!?

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3月10日の小池知事会見


「小池百合子都知事の“好意的記者”ランキング! トランプそっくり」と銘打った本連載がリテラに掲載された8日後の3月10日、小池都知事会見で筆者は半年ぶりに指名され、震災復興事業などについて質問をした。復興五輪をアピールして被災地を訪問したばかりの小池都知事に対し、大型公共事業優先のアベ土建政治が被災地を苦しめている現状について聞いてみた。

──(若狭勝衆院議員が「効果が乏しい」と指摘するテロ等準備罪について安倍首相に申入れをするかと聞いた後)昭恵夫人は防潮堤見直しを安倍総理に言っても全然、森友(学園の感想を伝えたとき)と違って聞き入れなくて、被災地ではまさにハード中心の復興事業からソフトに転換するのが必要ではないかと、全国的な公共事業抑制も求められていると。小池都知事が訪問した岩手県、宮城県では、工事費高騰、入札不調が深刻化して、仮設住宅から出ようとしたら坪単価が倍ぐらいになって家が建てられない。まさに資材人手不足による工事費高騰解消のために全国的な公共事業抑制が必要だと思うのですが、この点について、安倍総理に申し入れをされないのでしょうか。(以下略。オスプレイの夜間飛行や低空飛行の規制で日米地位協定改定を申入れるかも質問)。

小池都知事「安倍総理への申入れをするかどうかというお話でございましたけれども、答えは1つで、致しません。これは全て国に関係することでございますので、政府の方でしっかり対応していただきたい。その3つ合わせ技ですいません」

 素朴な疑問を感じた。将来の総理大臣候補との呼び声もかかり始めた小池都知事はなぜ、その発信力を活かして安倍首相に全国的な公共事業抑制──被災地では巨大防潮堤や高速道路など大型公共事業(ハード)の見直し、被災地以外では不要不急の公共事業削減──を提言しないのか。納得できなかったので、維新を立ち上げた橋下徹・前大阪市長が政権補完勢力に堕落する以前の2012年春、「大飯原発再稼働に邁進する野田政権を倒す」を宣言して大阪から日本のエネルギー政策を変える意気込みを見せた過去を念頭に、次のような再質問をした。

──かつて橋下(徹)さんは「大阪から日本の政治を変える」と言ったではないですか。

小池都知事「私は橋下さんではありませんので」

──結局、小池新党は安倍総理には何も言わない、安倍政権には盾突かないということではないのですか。

小池都知事「違いますよ。それは国の責任でやるべきだということを言っているわけであります」

●アベ土建政治で土地所有者と建設業者が儲かる防潮堤建設が横行

 昭恵夫人の名前を出したのは、他でもない。4カ月前の2016年11月に出た週刊現代の対談記事「小池百合子×安倍昭恵 二人の「ファーストレディー」が語り尽くす!」で、昭恵夫人が「被災地の防潮堤建設の問題にずっと関わっていますが、当初は約8000億円だった予算が膨張して、いまでは1兆円になっている。住民の方の多くも『不要だ』と言っていますが、それでも覆らない」と紹介していたからだ。しかし「防潮堤問題について聞けば、小池都知事は踏み込んだ発言をするに違いない」という予想は外れ、政府任せで事足りる回答しか返ってこなかった。対談で意気投合したかのような印象を受けたが、「小池都は昭恵夫人から被災地の現状について詳しい話を聞いたのか」という疑問が湧いてきたほどだった。

 2013年10月31日に「美しい東北の未来を考えるフォーラム」を機に防潮堤見直しを訴え始めた昭恵夫人は、自民党の環境部会でも発言、自ら集会を主催したりもした。そして2015年2月22日、ダムを壊して川が蘇る現場を紹介した米国のドキュメンタリー映画『ダムネーション』の上映会兼防潮堤問題のシンポジウムでは、日本の政治への募るに危機感を吐露した。

「(防潮堤見直しについて)もちろん主人にも日々話をしているのに、この問題が一向に大きく取り上げられることもなく、動くこともなく、『この国はどうなっているのかな』と思っています」(昭恵夫人氏)

 この機能不全状態は、震災6年目を迎えた今も変わっていない。皮肉なことに『美しい国へ』(文藝春秋)を上梓した安倍晋三首相(政権)の下で、美しい三陸海岸の景観をぶち壊す防潮堤建設が進行中。自民党支持者が多い建設業者や地主が儲かる一方、血税をドブに捨てるに等しい防潮堤計画の多くが見直されない『醜いアベ土建政治』が続いているのだ。

〈例1 気仙沼市小泉海岸〉
 昭恵夫人が「海が見えなくなって若者が出て行く」と特に見直しを訴えた宮城県気仙沼市小泉地区の巨大防潮堤計画も、現行計画のままゴリ押しされてしまった。小池都知事が五輪関連イベントで宮城訪問をした翌日2月10日に現場を訪ねると、かつて子供達を含む地元住民が親しんだ砂浜や干潟は消え去り、高さ14.7メートルで幅90メートルの巨大防潮堤の工事が着々と進んでいたのだ。

 しかも公共事業ラッシュによる資材・人手不足による工事費高騰で、事業費が230億円から370億円へと1.6倍以上に膨れ上がった。見直し派住民や専門家は「人が住まない田畑を守るだけに巨費を投じるのか」「費用対効果が0.3程度で低い」と疑問視していたが、さらに税金の無駄が増えてしまったのだ。

 復興税を徴収され続ける全国の納税者の怒りが爆発してもおかしくない要素は、他にもあった。景観保全と防災の両立可能な「防潮堤と国道」が採用されなかったのだ。代替案を提案した見直し派住民の阿部正人氏は「費用対効果がより高く、経済合理性が優れているのは明白」と強調した。

「小泉地区は高台移転をするため、防潮堤が守る背後地はほとんどが農地。そこで海岸に防潮堤を建設するのではなく、少し陸側に盛土をして建設される『国道四五号線』に防潮堤機能を兼用させれば、いいのです。この兼用案であれば、工事費も削減されて工期も短くなり、海岸の景観や環境破壊を避けることも可能です」

 しかし小泉地区の有力者は、地権者でもある長老ら推進派で占められ、経済合理性(費用対効果)が優れたように見える代替案が十分に比較・検討されることはなかった。震災で水没した海岸近くの農地を防潮堤建設用地として買い上げてもらえば、地権者の現金収入になる。そこで元自民党員の及川善賢市議ら推進派は「見直しをすると復興が遅れる」「仮設住宅に入っている地権者は農地を売って新居の頭金や生活費にしたい」と主張。地域ボスによる形だけの住民合意で見直し案を葬り去ってしまったのだ。

 2014年5月24日に仙台で開かれたシンポジウムでは昭恵夫人が見直しを訴えた後、安倍首相もビデオメッセージで登場、景観や環境や住民合意への配慮を求めたが、事業主体の宮城県(村井嘉浩知事)は見直しを拒否、工事着工に至った。「村井知事は安倍首相を超える権限を持っているのか」という疑問の声が出たが、結局、安倍首相のビデオメッセージはリップサービス程度にすぎず、自らの忠告を聞き流した村井知事の“暴走”を止めようとはしなかったのだ。

<例2 陸前高田市高田松原海岸>
 建設業者と地主が儲かる防潮堤建設への血税投入は、北隣の岩手県陸前高田市でも罷り通っていた。小池都知事が岩手訪問をした2月17日、奇跡の一本松で有名な高田松原海岸を訪れると、ここでも高さ12.5メートルの防潮堤建設工事が本格化していた。震災直後に国道兼用案を戸羽太・陸前高田市長に進言した行政関係者はこう振り返る。

「陸前高田市も高台移転を決定、海側の低地には住宅が建てられないようになりました。であれば、人の住まない低地を守るために巨大防潮堤を建設する必要はない。そこで市長に国道45号線と防潮堤を兼用する案を提案したのですが、見向きもされませんでした」

<例3 気仙沼市大谷海岸>
 防潮堤建設による復興税浪費(アベ土建政治の弊害)は、「国道兼用案」が実現した気仙沼市大谷海岸に目を向けると、より鮮明になる。ここでも海水浴場として親しまれてきた海岸に高さ9.8メートルの防潮堤計画が浮上したが、地元見直し派が署名活動を開始、行政などとの話し合いを繰り返した結果、去年7月に「国道兼用案」が採用された。

「当初は海岸に防潮堤が建設される予定でしたが、陸側に建設位置をずらして国道45号線と防潮堤を兼用させることになりました」(見直し派住民の三浦友幸氏)

●防潮堤見直しの発祥地・岩手県大槌町:アベ土建政治転換への期待

 防潮堤見直しの“発祥地”は岩手県大槌町赤浜地区。「赤浜地区の復興を考える会」会長の川口博美氏はこう話す。

「何回も住民総会を開いて『海が見えなくなる。防潮堤の高さを低くした方がいい』という声を集め、行政が決定した防潮堤高さを低くする見直しを勝ち取りました」

 川口氏のコンセプトは「津波に強い街づくりではなく、津波に強い人づくり」。防潮堤のハードに頼るのではなく、防災訓練などのソフトを重視するという考え方だ。そして、大槌町で芽生えた住民主導による防潮堤見直しの動きが他の三陸沿岸にも広がり、気仙沼市大谷海岸などで結実したといえるのだ。と同時に川口氏はアベ土建政治を批判する一方、小池都知事(小池新党)の国政進出も期待していた。

「被災地では必要性の乏しい巨大防潮堤や三陸自動車道(高速道路)など大型復興事業が集中した結果、資材・人手不足による工事費高騰や入札不調を招き、最も大切な生活関連事業が遅れてしまった。未だに仮設住宅暮らしの人が多いのはこのためです。防潮堤は先送りするなど復興事業に優先順位をつけると同時に、五輪関係事業を含め全国的な公共事業抑制が大切です。しかし『国土強靭化』『アベノミクス』を旗印にする安倍政権は、公共事業推進を改めようとしません。小池都知事に『国政にも進出して古い自民党政治を終わらせて欲しい』と期待するのはこのためです」(川口氏)

 首相所信表明演説で紹介された東洋文化研究者のアレックス・カー氏は、ダムを壊して川が蘇る『ダムネーション』の映画上映会を兼ねた防潮堤シンポ(2015年2月22日)で日本の土建政治をこう批判した。

「アメリカでは『ダムの時代は終わった』のに日本の海岸は防潮堤をはじめコンクリートだらけ。『防潮堤ネーション』のような映画を望む」。すると、昭恵夫人もこう呼応した。

「防潮堤建設が進んでも『ダムネーション』のように、途中で見直して撤去することは可能。『今後は防潮堤を壊すことが公共事業になってくる』という人もいるくらいです」

 しかし問題発覚するまで夫婦で共に評価(“家庭内与野党”で一致)した森友学園と違い、防潮堤見直しでは“家庭内野党”の昭恵夫人の訴えが実現することは多くない。

 安倍首相の父親の安倍晋太郎・元大臣が生まれ育ったのは、美しい棚田の田園風景で知られる山口県油谷町だ。しかし美しい三陸海岸を台無しにする巨大防潮堤建設が今後も見直されることがなければ、安倍首相は「テロリスト紛いの国土(景観)破壊集団の“親玉”」と批判されても仕方がないのではないか。
(横田 一)

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