「ヘイト」を追及し続けるジャーナリスト・安田浩一インタビュー(前)

両論併記に逃げるメディアの傍観者たちは「ヘイト」の意味も危険性もわかっていない!

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5月に新刊『ヘイトスピーチ 「愛国者」たちの憎悪と暴力』(文春新書)を上梓した安田浩一氏

 ヘイトスピーチの問題に関心を持つ人々の中で、ジャーナリスト・安田浩一の名前を知らない人間はいない。「在日特権を許さない市民の会」(在特会)がまだ現在ほど世間にその存在を知られておらず「一部の変わった人々」で片づけられていた2000年代後半から丹念に現場取材に通い、その実態を『ネットと愛国 在特会の「闇」を追いかけて』(講談社)という一冊のルポルタージュへと昇華させた。同書は2012年度の講談社ノンフィクション賞とJCJ(日本ジャーナリスト会議)賞をW受賞。翌年以降、在特会をはじめとする排外主義者へのカウンター(対抗)活動が立ち上がるひとつのきっかけとなった。

 そんな安田がこのほど文春新書から新刊『ヘイトスピーチ 「愛国者」たちの憎悪と暴力』を出版した。『ネットと愛国』以降も取材を続けているのはなぜか。ここ数年ヘイトスピーチの実態や内実にかかわる報道も増えてきたが、安田自身はどのような姿勢でこの問題に挑んできたのか、話を聞いた。


■問題は在特会だけじゃない、弱者を敵に仕立てて吊るす社会だ

──今回出された新刊(『ヘイトスピーチ』)は、どのような本ですか?

安田 普段ヘイトスピーチに接したり、考える機会のない人に向けて書いたヘイトスピーチの入門書です。
「ヘイトスピーチ」という言葉がメディアの中で取り上げられるようになったのは2013年からです。新大久保で行われた在特会のデモを端緒に、それまでは彼らの存在を無視していたメディアが遅ればせながら食いつきました。ところが現在でもメディアの人間と話をしていると「ヘイトスピーチ」とは何であるのかということがほとんど伝わってこない。つまりメディアも含め、ヘイトスピーチ=罵詈雑言の類だと思っている人がまだまだ世の中には少なくないんです。なので今回はヘイトスピーチという言葉自体を知らなかったり、問題に興味はないけど店頭で見かけて手に取ってみたという人に向けて、わかりやすく問題の背景を解説しました。
 一番主張したいのは、ヘイトスピーチは「被害を伴う」ということです。ヘイトスピーチが被害者を生み続けるものであることを明確に主張したかった。「被害者の視点」というものを取り交ぜながら、ヘイトの醜悪さを日本社会のなかで許容していいんですか? 〈表現の自由〉という枠組みのなかで容認してもいいんですか? それによって私たちの社会で何が奪われていくのかきちんと考えてください、と問いかける意味を込めて書きました。

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