高市政権が「文化の日」を「明治の日」にする動き本格化 背後に大日本帝国復活を目論む日本会議ら極右勢力の策謀

2026.11.03 11:45
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明治の日推進協議会HPより


 きょうは「文化の日」だ。1946年のこの日に現在の日本国憲法が公布され、その2年後、憲法の精神に基づいて「自由と平和を愛し、文化をすすめる」日として文化の日は生まれた。

 しかし、そうした「文化の日」の考えを全否定するような動きが、日本会議など右派勢力を中心に、近年広がっている。本サイトで繰り返し批判してきたが、「文化の日」を「明治の日」にしよう、というものだ。

 第2次安倍政権下で活発化していたこの動きだが、昨年の高市政権誕生後にも新たな動きを見せている。昨年11月21日には、自民党の内閣第一部会で、明治天皇の誕生日にあたる11月3日の「文化の日」に「明治の日」を併記する祝日法改正案を了承したのだ。法案提出のタイミングをうかがっている。

 おそらく法案を通りやすくするために「併記」と言っているが、最終的には「明治の日」によって「文化の日」の意味を上書きして消してしまおうという魂胆があることは明らかだろう。これは単に「休日の名称」というだけの問題ではない。

 超党派の「明治の日を実現するための議員連盟」の会長を務めている自民党の古屋圭司衆院議員は、高市首相の「兄貴分」「側近中の側近」だが、古屋議員は4月23日に国会内で開かれた総会において「明治は日本が近代化を進めた本当に重要な時期。この記念日をつくることは極めて重要だ」などと語っていた。

 古屋議員をはじめとする極右政治家や極右論客は明治を輝かしいもののように賞賛するが、明治の日本=大日本帝国といえば、侵略戦争によって多くの国の人々の命と自由を奪い、さらには日本じたいも滅亡の危機に追い込んだ、もっとも忌避すべき体制である。それを、戦争放棄を謳う日本国憲法にちなんだ「文化の日」の日に併記しようというのである。

「明治の日」の狙いは、まさに、戦後民主主義の否定と軍国主義の復活にほかならない。

 しかもこれは象徴的な意味だけにとどまらない。皇室典範改悪、選択的夫婦別姓議論の封印、戦争政策の推進、国家情報局創設やスパイ防止法など国民監視の強化、そして改憲といった、高市政権の打ち出している施策はまさに、日本国憲法と戦後民主主義を否定し、大日本帝国の軍国主義復活を狙うかのようなもの。「明治の日」は大日本帝国の価値観を賞賛、つまり反民主主義や軍国主義を肯定することで、こうした高市政権の人権抑圧や戦争政策を後押しすることにもなるのだ。

 この危険な策謀をとどめるため、「明治の日」をめぐるこれまでの動きをあらためて振り返っておきたい。

 きょう11月3日は明治天皇の誕生日であり、戦前の1926(昭和元)年に「明治節」が制定された。日本会議の別働隊であり、「明治の日」に改めようと祝日法改正を目指す団体「明治の日推進協議会」は〈明治時代を振り返ることを通じて国民としてなすべきことを考える契機にした方が良い〉と主張している。

 たとえば、同団体が2018年10月29日にマスコミをシャットアウトし衆議院第二議員会館でおこなった集会には、稲田朋美・元防衛相、“生産性”発言の杉田水脈衆院議員、衛藤晟一首相補佐官、ちびまる子ちゃん映画や前川喜平・元文科事務次官授業への圧力で知られる赤池誠章参院議員といった安倍首相に近い極右議員や、櫻井よしこ氏ら安倍応援団の論客が参加。櫻井氏が「戦後確かに平和で豊かになったが、日本人としての価値観を忘れてきた。明治の日を制定することで、気高さと雄々しさがあった世界に誇る明治の原点を思い返すことができるようになる」(同団体HPより)などと語り、稲田元防衛相や杉田衆院議員らも祝日法改正実現に向け意気込みを語った(肩書はすべて当時)。

 同団体は2016年11月1日にも国会内で、11月3日の「文化の日」を「明治の日」にしようと気勢を上げる集会を開いており、自民党から安倍首相に近い議員ら12人が駆けつけ、古屋圭司国対委員長が約63万8000筆の署名を受け取った。

 古屋氏は2016年の集会で、「日本の近代国家立脚の原点は明治にある。かつての『明治節』がGHQ(連合国軍総司令部)の指導で大きく変わることを強いられた。明治の時代こそ大切だったとすべての日本人が振り返る日にしたい」と決意を述べた。要するに、日本国憲法も「文化の日」もGHQの押しつけだから、“本来の日本”を取り戻したいということのようだ。

 2016年11月の集会に参加した自民党議員の発言を朝日新聞から拾ってみる。

「神武天皇の偉業に立ち戻り、日本のよき伝統を守りながら改革を進めるというのが明治維新の精神だった。その精神を取り戻すべく、心を一つに頑張りたい」(稲田朋美防衛相)

「神武創業の原点にしっかり立脚した『明治の日』を実現していくことが、日本人の精神の独立につながると確認している」(高鳥修一衆院議員)

「明治の日」を推進するのは日本会議の別働隊

 こいつらは神武天皇が実在したと、本気で考えているんだろうか、読むだに頭がクラクラしてくるではないか。だが、漠然と保守化、右傾化などと呼ばれていた安倍政権の目指した国家像が、これらの言葉ではっきりしてくる。それは、戦後日本を否定して、明治憲法下の日本へ戻すということなのだ。このことは、実は休日と密接に関係している。戦前の休日には、祝日と祭日があり、祭日は天皇の宮中祭祀や国家神道と関連づけられていた。ざっとあげると、以下の通りだ。

・元旦(1月1日)=四方節、1年の最初に行われる宮中祭祀
・建国記念(2月11日)=紀元節、神武天皇が即位した日
・春分の日=春季皇霊祭、歴代の天皇、皇后、皇親の霊を祭る儀式
・昭和の日(4月29日)=天長節、昭和天皇の誕生日
・秋分の日=秋季皇霊祭、歴代の天皇、皇后、皇親の霊を祭る儀式
・文化の日(11月3日)=明治節、明治天皇の誕生日
・勤労感謝の日(11月23日)= 新嘗祭、天皇が五穀の新穀を天神地祇に進め、自らも食す儀式

 明治憲法と日本国憲法の最大の違いは言うまでもなく主権者が誰かということだ。明治憲法下では天皇が主権者だった。だから、「神聖にして侵すべからず」存在である天皇に関することが祭日になっていた。戦後、天皇は人間宣言をして、日本は新憲法のもと国民主権の国家になった。それに伴い休日も天皇中心の祭日から、「国民こぞって祝い、感謝し、記念する」国民の祝日へと変わった。これを旧に戻すということは、国民主権の否定にほかならない。

 これこそが、実は安倍首相とその周辺の極右勢力の本音だったのだ。

 2013年4月の衆院予算委員会で「明治の日」について質問し、菅義偉官房長官から「明治の日の必要性についての意見があることは受け止める」との答弁を引き出した前衆院議員の田沼隆志氏(当時日本維新の会)は、自らのブログに〈私のライフワークである、祝日正常化。その中でも第一は、文化の日を明治の日にすることです〉と書いている。明治憲法下の祭日の復活は、この人たちにとっては「正常化」ということのようだ。

 その活動の中心になっているのは「明治の日推進協議会」という団体だ。かつて「昭和の日」(4月29日)実現運動を推進したメンバーを中心に2011年に結成された。役員にはジャーナリストの櫻井よしこ氏や、安倍首相のブレーンの一人とされる伊藤哲夫氏(日本政策研究センター代表)のほか、代表委員に百地章氏(国士舘大学特任教授)、所功氏(モラロジー研究所教授)といったお約束の日本会議系学者も名を連ねており、日本会議の別働隊といってもいいだろう。

「みどりの日」を「昭和の日」に変えたのも日本会議ら極右勢力だった

 4月29日は昭和天皇の誕生日であり、1988年までは「天皇誕生日」だった。それが、昭和天皇の崩御によっていったんは「みどりの日」となった。「自然に親しむとともにその恩恵に感謝し、豊かな心を育む」というのがその趣旨だが、そこには生物学者であり自然をこよなく愛した昭和天皇を偲ぶ意味も込められていた。ところが、極右勢力にとっては、それが気に入らなかった。そこで、神道政治連盟などが中心となって運動が起こり、「みどりの日」を「国民の休日」だった5月4日に無理やり移動させ、4月29日の「昭和の日」を押し込んだのだ。この時とほぼ同じ人たちが、「明治の日」実現のために集まっている。

 前述の2016年11月の集会では、推進協議会事務局長の相澤宏明氏が、時事通信の取材に対して「本来のあるべき姿に戻したいとの素朴な思いがあるだけ」と話しているが、彼らにとって「明治の日」は「昭和の日」の時の積み残しであり、「紀元節」「新嘗祭」復活への試金石なのである(ちなみに相澤事務局長は右派系出版社「展転社」の会長で、同社は2005年に『「昭和の日」実現への道』を出版している)。同協議会のHPを見ると、第2次安倍政権発足後に、にわかに活動が活発化していることがよくわかる。

 推進協議会の活動目標は、祝日法を改定して11月3日の「文化の日」を「明治の日」にすることだ。同協議会が出した請願書によると「日本国が近代化するにあたり、わが民族が示した力強い歩みを後世に伝え、明治天皇と一体となり国つくりを進めた、明治の時代を追憶するための祝日」にしたいという。

 現行憲法の交付日にちなんで設けられた「文化の日」を廃し、戦前の国家神道を意識した「明治の日」に変えようという魂胆なのだ。

 しかし、ここであらためて指摘しておくが、こんなものは日本の伝統でもなんでもない。むしろ、薩長革命政府によって作られたフィクションにすぎない。

「明治の日」の狙いは、戦後民主主義の否定と軍国主義の復活

 400年に及ぶ徳川幕藩体制で外様の地位に置かれていた薩長が明治維新=暴力革命によって政治の中心に躍り出た際、革命政府がまずやらなければならなかったのは、自らの権威を確立し、国を一つにまとめることだった。そこで利用されたのが天皇信仰だ。薩長革命勢力は王政復古を掲げて維新を戦い、政権樹立後もこれを積極的に利用した。「建国神話」「神武創業」「万世一系」といった思想を整備し、蝦夷地から琉球に至る統一国家の樹立を目指した。イタリア人画家キヨッソーネに明治天皇の肖像を描かせ、「御真影」と称して全国津々浦々に配って国民支配の道具とした。

 祝日もそのひとつだった。維新を成し遂げた薩長政権は「王政復古」を具現化するためのさまざまな施策を実行した。1873(明治3)年には太陽暦を採用し、「年中祭日祝日」についての布告を出す。ここで何が行われたのかというと、なんとそれまでの日本の“伝統的な祝日”だった五節句祝(1月7日の人日、3月3日の上巳、5月5日の端午、7月7日の七夕、9月9日の重陽)を廃止してしまったのだ。代わりに新たな「国家祝祭日」として設置されたのが、神武即位日(後の紀元節)、神武天皇祭(神武天皇の崩御日)といった天皇信仰に基づく祭日だった。実在もしない神武天皇の即位から年号を数える「皇紀」もこのとき定められた。

 しかも、これはのちに国家神道へと発展し、“日本は世界無比の神の国”という「国体」思想の装置として、祭政一致の国家主義、軍国主義に突き進んでいくことになる。この作られた伝統こそが、数々の侵略戦争によって多くの国の人間の命と自由を奪い、日本自体も滅亡の危機に追い込んだ「大日本帝国」の原点なのだ。

 安倍元首相ら極右政治家や極右論客は明治=大日本帝国を、ことあるごとに礼賛してきた。その最たるものが「明治150年」にあたった2018年10月に政府が開いた「明治150年式典」だろう。当時の安倍首相は、こんなふうに明治礼賛一色の式辞を披露してみせた。

「近代化への道のりは、大きな危機意識の中で始まりました。当時、技術に先んじる列強が植民地支配を進め、その波がアジアにも押し寄せていました。国力に後れを取っていた我が国は、正に国家存亡の危機に直面していたと言っても過言ではありません」
「明治の人々が、勇気と英断、たゆまぬ努力、奮闘によって、世界に向けて大きく胸を開き、新しい時代の扉を開けたことに想いをはせながら、私たちは、この難局に真正面から立ち向かい、乗り越えていかなければならないと思います」(首相式辞より)

 明治維新は国家存亡の危機から救ったと胸を張り、その精神を礼賛し現代社会に注入すると力を込める一方、帝国主義のもとで行った侵略戦争などは完全にネグっている。

 言うまでもなく、明治の日本=大日本帝国は、天皇を神と崇め、国民は天皇のために命を捧げることを強制される絶対君主制国家だった。人権は著しく制限され、貧困者や女性の参政権も認められず、身分制も根幹は解消されないまま。富は財閥と大地主に集中し、庶民は徹底的に搾取された。また、対外的には帝国主義国家として、数々の侵略戦争を引き起こし、多くの国の人間の命と自由を奪った。しかも、この体制はその後、80年以上にわたって続き、「神国日本」というカルト的な思想によって日本自体も滅亡の危機に追い込んだ。

 冒頭でも書いたように、皇室典範改悪、選択的夫婦別姓議論の封印、戦争政策の推進、国家情報局創設やスパイ防止法など国民監視の強化、そして改憲など、高市政権以降、明治=大日本帝国復活の動きは活発化している。

 とりわけ皇室典範改悪の成功に味をしめ、日本会議や極右連中は勢いづいている。先月20日におこなわれた、「日本会議・日本会議国会議員懇談会設立30年記念の集い」には、自民党・萩生田光一幹事長、維新・藤田文武共同代表、国民民主・榛葉賀津也幹事長、と自民・維新・国民民主の幹部が首をそろえ、改憲への意欲を語っていた。

 歴史を逆行させる「明治の日」など、絶対に許してはならない。

最終更新:2026.11.03 12:30

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