安倍元首相の近畿大卒業式登場に「そんな場合か」の声! 子分の近大理事長・世耕弘成とともに “プーチン擦り寄り”に反省なし

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卒業式にサプライズ登場した安倍元首相(近畿大学公式サイトより)


 ロシアによるウクライナ侵略を口実に、核兵器共有論や次世代原発の新設など火事場泥棒の主張を展開している安倍晋三・元首相。その安倍元首相をめぐり、先週末の19日、ネット上をざわつかせる事態が巻き起こった。同日におこなわれた関西の私立大学・近畿大学の卒業式に安倍元首相がサプライズ登場したからだ。

 式典の最後、ハリウッド映画の予告編のような仰々しい音楽・映像とともに大型スクリーンに映し出されたのは、こんな文字だった。

〈稀代のリーダーが卒業生に贈る〉
〈【2013年】第42回ベストドレッサー賞(世辞・経済部門)〉
〈教育基本法改正 機動的な財政出動 日本国憲法 2020年東京オリンピック 強固な日米関係 働き方改革 一億総活躍社会 地方創生 アベノミクス 美しい国、日本〉
〈戦後最年少内閣総理大臣〉
〈明治時代以降最長 連続在任日数 明治時代以降最長 通算在任日数〉
〈第90代内閣総理大臣 第96代内閣総理大臣 第97代内閣総理大臣 第98代内閣総理大臣〉

 そして、東日本大震災の復興支援ソング「花は咲く」をピアノで奏でる安倍元首相の映像が流れると、本人がステージに登場し、「みなさん、安倍晋三です」と満面の笑みで挨拶。ゲストスピーカーとして、〈自身の第1次政権がわずか1年と短命に終わったものの、第2次は約7年8カ月と憲政史上最長となったことを挙げ、「これからの長い人生、失敗はつきもの。何回も失敗するかもしれない。大切なことはそこから立ち上がること。そして失敗から学べれば、もっとすばらしい」と強調〉したという(サンケイスポーツ19日付)。

「失敗から学べ」って、公文書改ざんという国家的犯罪をはじめ数々の不祥事が明るみになった挙げ句、アベノマスクをはじめとするコロナ対策に大失敗し、その責任をとることもなく体調不良を理由にしてトンズラ辞任した人間がよくもまあ言えたものだ。

 当然、ネット上では式典にゲスト出演させた近畿大学の見識を問う声があがったが、じつは近大の創立者の孫であり、現在の理事長なのは、安倍元首相のコバンザメである自民党の世耕弘成・参院幹事長。2014年には「週刊ポスト」(小学館)が世耕氏の近大を経由した違法企業献金疑惑を報じたこともあるが、今回も、世耕氏が卒業生のための式典を私物化、政治利用して、安倍元首相のアピールの場を用意したのだろう。

 だが、はっきり言って安倍・世耕のこのコンビは、こんなことをやっているような場合ではない。「失敗から学べ」と言うなら、ふたりは対ロシア外交について、これまでの総括と反省をまずおこなうべき立場にあるからだ。

クリミア侵略後、安倍政権がプーチン系企業支援を画策 当時の経産相・世耕弘成が交渉との報道

 そもそも本サイトでも繰り返し指摘しているように、安倍政権下で安倍元首相はプーチン大統領と27回もの首脳会談をおこないながら、たんにプーチンに尻尾を振りつづける“プーチンの犬”としか思えないような姿勢を貫いてきた。とりわけ、2016年のプーチン訪日では、北方領土交渉で何の見返りもないままロシアとの共同経済活動という名目で約3000億円の投入を約束。その後も返還交渉はまったく進展しないどころか後退させてしまった。

 ようするに、安倍外交はプーチンの言いなりになって金だけ貢ぐという最悪の結果になったわけだが、問題はそれだけではなく、現在のウクライナ侵略戦争の萌芽となったクリミア危機では、よりによって侵略政策を後押しするような行動に出ていたことだ。そして、その尖兵となったのが、当時経産相だった世耕氏なのだ。

 ロシアは2014年2月以降、ウクライナ南部のクリミア半島を一方的に編入し、国際社会が厳しい非難の声をあげたが、かたや安倍首相は同年秋に予定されていたプーチン訪日に影響を与えることを懸念し、発動させた経済制裁はアメリカやEUにくらべると大甘な内容だった。

 しかも、西側諸国から経済制裁を受けてロシア経済は悪化し、制裁対象となっていたプーチンに近い国営石油会社「ロスネフチ」は経営難に陥っていたのだが、なんと、日本政府は西側の経済制裁を破り、国民の年金積立金を使って「ロスネフチ」を支援しようとしたのだ。

 この問題をスクープしたロイターは、プーチンの側近でもあるロスネフチ会長のセチンのメモを入手。2018年11月、「独自スクープ! ロシア国営銀行がロスネフチの資金を秘密裏に調達 外国の買い手が難色を示した後に(Exclusive :Russian state bank secretly financed Rosneft sale after foreign buyers balked)」という記事のなかで、「湾岸から日本へ」という見出しをつけて、2016年末ごろの日本側の経緯を以下のように、レポートしている。

〈ロシア政府関係者、ロスネフチに近い関係筋、そしてセチンが証人となった全く別件の裁判で浮上したセチンの会話記録によると、セチンは東に向かい日本の政府関係者と会談を始めた。会談は主に、日本の経済産業相・世耕弘成となされた。
 交渉が合意に至った場合、その株式の購入者は、管理対象資産が1.4兆ドル以上をもつGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)、または独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)のいずれかになっていた、とこの件に詳しい3人の関係者がロイターに話した。(中略)
 結局、取引は破綻した。
 日本の経済産業省は質問に応じなかった。ロスネフチは、ロイターの取材に対し、日本との件に関しては、回答しなかった。JOGMECの広報は「回答できない」と言った。GPIFは、「直接関与していないため政府間の問題についてコメントすることはできない」と述べた。〉

 つまり、日本は一時、安倍首相の側近で経産相だった世耕氏が乗り出し、政府系ファンドにこの株を買わせようとしていたというのだ。経済制裁の対象となって、経営不振にあえいでいる企業の株を引き受けようとするとは正気の沙汰とは思えないが、これも安倍首相の強い意向が働いていたといわれ、政権はかなり本気で動いていたようだ。

プーチン系ロシア国営企業の株買取は、国民の年金積立金GPIFを原資とする計画が

 もちろん、記事にもあったように、この日本と交渉は最終的には決裂した。しかし、日本側が「制裁対象国の国営企業株を取得するのはまずい」と断ったわけではない。ロイターは決裂の経緯をこう報じている。

〈裁判で再生されたセチンの会話記録によると、日本が第二次世界大戦末期から続くロシアとの領土問題の進展とリンクさせようと要求したことで、交渉は暗礁に乗り上げてしまった。〉

 ようするに、日本政府は安倍首相がぶちあげた北方領土の返還交渉を進展させるため、間接的にでも経済制裁に反する可能性のある企業の株を政府系機関に購入させようとしていたのだ。

 その上、信じられないのが、その取得先の政府系機関としてGPIFの名前が真っ先に上がっていたことだ。ロイターの記事にもあるように、GPIFというのは、年金積立金 管理運用独立行政法人のこと。国民が積み立てた年金を資産運用しているのだが、その金額は130〜160兆円にものぼり、「世界最大の機関投資家」ともいわれる。

 GPIFは以前は国民の年金を減らしてしまう危険性を考え、株式などリスクのある投資をほとんどしていなかったが、第二次安倍政権になって株式への投資を全体の半分にまで増やした。この背景には、世界最大の機関投資家であるGPIFに大量に株を買わせれば、株価が上がり、景気が回復したという印象を与えることができるという安倍政権の計算があったといわれる。ようするに、国民の大事な年金を世論操作と政権維持に利用してきたというわけだが、安倍政権はそれだけでなく、「北方領土問題進展」で自分たちの得点を稼ぐために年金の金を使おうとしたのである。しかも、このロマネスフチの株購入は頓挫したものの、安倍政権は経済支援する気満々だったはずだ。

クリミア侵略後にロシア副首相を近畿大に招き、いまもサハリン沖の資源開発撤退に反対表明

 ロシアのクリミア侵略に対して厳しく制裁を加えるどころか、安倍氏と世耕氏は西側の制裁で打撃を受けたプーチンに近い国営企業を助けようとさえしていた──。この事実は国際社会のみならず国内でももっと非難されるべき問題だが、それだけではなく、世耕氏は今回、近大の卒業式を安倍元首相のPRの場に政治利用したのと同じように、2018年にも近大主催のシンポジウムにロシアのゴルジェツ副首相やオレシュキン経済発展大臣を招待。ようするに、ロシアのクリミア侵略もシリア介入もスルーし、ベッタリの関係をつづけてきたのだ。

 しかも、驚くべきことに、ロシアのウクライナ侵略後も、安倍元首相と世耕氏に反省の色はまったくない。

 世耕氏は今月6日、NHK『日曜討論』で、「(ロシアへの)経済制裁をてこにロシアに行動を変えさせるということが何よりも重要だ」としつつも、安倍元首相が進めたロシアとの経済協力プランのひとつである日本の官民出資会社が権益を持つサハリン沖の資源開発にかんして、「ここへの依存度が高い(国内の)ガス会社があり、(撤退すれば)供給に支障が出る可能性がある。現実的に考えていくべきだ」「仮に日本が撤退すると(エネルギーを)のどから手が出るほどほしい中国などに安く取られてしまう」(時事通信6日付)などと発言。このサハリン沖の資源開発「サハリン1」「サハリン2」からは石油大手の米・エクソンモービルや英・シェルが撤退を発表している一方、いまだに日本側は撤退しようとしていないが、じつは「サハリン1」には、例のロスネフチが20%出資しているのだ。

 また、安倍元首相にいたっては、「プーチンとしては(NATOに対する)不信感のなかで、領土的野心ではなく、ロシアの防衛、安全の確保の観点から行動を起こしているのだろう」などと擁護してみせた(2月27日放送・フジテレビ『日曜報道 THE PRIME』)。

 明日23日にはウクライナのゼレンスキー大統領が生中継で国会演説をおこなう予定だが、そこでは“プーチンの犬”と化してきた安倍元首相の対ロシア外交を批判するのではないかという声もあがっている。しかし、ゼレンスキー大統領が触れなかったとしても、ウクライナ侵略戦争へとつながったクリミア危機における安倍元首相と世耕氏の振る舞いについて、国内においてしっかり検証・追及がおこなわれるべきだ。

最終更新:2022.03.23 12:07

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