社会問題に関する話題……本と雑誌のニュースサイト/リテラ
菅官房長官「トウモロコシ大量購入は害虫被害対策」は嘘! トランプの押し付けゴマカシで被害でっち上げ
首相官邸HPより
安倍政権が「トランプに押し付けられたトウモロコシ」をめぐって、フェイク丸出しのゴマカシ、情報操作を展開している。
本サイトでもお伝えしたように、25日、安倍首相とトランプ大統領が日米貿易交渉で大枠合意したのだが、その中身は日本が牛肉や豚肉などの関税のTPP並み引き下げを飲まされる一方、アメリカ側に求めていた自動車の関税撤廃は見送り、というまさに“トランプ様の言いなり”という屈辱的なシロモノ。
おまけに、トランプ大統領は会談後、予定になかった記者発表を急遽、日本側に要請。こんな事実を明かしてしまった。
「中国がやると言ったことをやらなかったから、国中でトウモロコシが余っている。代わりに日本の安倍総理が、すべてのトウモロコシを買うことになった」
本サイトでも8月前半にいち早く報じていたが、トランプが米中貿易摩擦で中国に買ってもらえなくなった農産物を日本に要求。安倍首相がそれを丸呑みして、合計275万トン、数百億円規模のトウモロコシ購入を決定してしまったのである。
典型的な朝貢外交だが、しかし、この“トウモロコシ爆買い”をめぐり、菅義偉官房長官が27日の会見でこんな言い訳を強弁したのだ。
「本年7月からガの幼虫がトウモロコシを食い荒らす被害が広がっており、現在11県で確認され全国的に拡大する可能性があるとのことです。このため飼料用のトウモロコシの供給が不足する可能性があることから、農水省において海外のトウモロコシの前倒し購入することをすでに8月8日に公表しております。このことが昨日の日米首脳会談で話題になったんだろうと承知しています」
実は、この菅長官に先立って、ヒゲの隊長こと佐藤正久外務副大臣も全く同じ趣旨の主張をしていた。佐藤副大臣はツイッターのヘッダー写真を、自らがトウモロコシをかじっている写真に変えて、トウモロコシ押しをアピールしているが、日米首脳会談翌日の26日夕方にこんなツイートをしている。
〈九州地方等では害虫被害で飼料用トウモロコシが不足し、政府は、海外から前倒し購入等の対策を実施中。米国からも飼料用トウモロコシが多く購入されていいることから、上記前倒し購入の一環で米国から購入することなった〉(原文ママ)
そう、安倍政権は「害虫被害でトウモロコシが不足しているから」と安倍首相のトウモロコシ爆買いを正当化してみせたのだ。
これを受けて、ネトウヨや安倍応援団は「トウモロコシを押し付けられたのというのはフェイク」などと、大はしゃぎしている。
しかし、バカも休み休み言ってほしい。フェイクを垂れ流しているのは、菅官房長官ら安倍政権のほうだ。
たしかに農水省のホームページによれば、7月3日以降トウモロコシやスイートコーンの農場でヤガ科の害虫「ツマジロクサヨトウ」の幼虫の発生が確認されていて、九州地方を中心に12県でトウモロコシの葉が食べられる被害が出ているという。
だが、これ、どう考えても、275万トンもの大量のトウモロコシが必要な被害ではないのだ。
農水省植物防疫課も「被害はわずか」と言っているのに国内生産量の半分を爆買い
まず、最大の理由は、飼料用のトウモロコシはほとんどを輸入に頼っており、国内生産量はせいぜい年間450~500万トン程に過ぎないことだ。もし275万トンが必要だとすると、国内生産の半分が壊滅ということになるが、農水省のホームページを見ても、被害が出ているのは、鹿児島・熊本などの九州8県と高知県、岡山県、茨城県、千葉県のみ。国内生産の多くを占める北海道では被害が報告されておらず、たとえ被害の出ている県が全滅したとしても、被害量は275万トンの半分にもならないと考えられる。
しかも、被害が出ている県についても、全滅どころか、大した被害では全くない。実際、「AERA.dot」が農水省の植物防疫課にツマジロクサヨトウによるトウモロコシ被害につい確認したところ、「被害はごくわずか」であると回答しているのだ。「AERA.dot」は「害虫被害はデマ?-農水省「現時点で影響ない」-米産トウモロコシ大量輸入で“忖度報道”」と題した記事で、こう報告している。
〈農水省に確認したところ「現状で営農活動に影響は出ていません」(植物防疫課)と話す。発生が確認された地域では、大量発生を防ぐために防除や早期の刈り取りを促しているが、作物への影響はわずか。「現時点で被害量はまとめていません」(同)という〉
また、菅官房長官は被害が全国的に拡大する可能性があると言っているが、日本農業新聞(8月27日)によれば、ツマジロクサヨトウは〈熱帯・亜熱帯原産で寒さに弱く、10.9度以下で成長が止まる。最低気温が10度を下回る日が数日続く地域なら、越冬する可能性は低い〉という。北海道などトウモロコシ生産量の多い地域への影響はほとんど考えられないのだ。
また、そもそも、安倍首相がトランプ大統領から押し付けられた275万トンものアメリカ産トウモロコシでは、いま、被害が出ている飼料用トウモロコシの代わりにならないという見方もある。東京新聞27日付はこう報じている。
〈食害は葉や茎も砕いて飼料にするトウモロコシで起きており、米国から追加購入する実を用いるトウモロコシとは栄養価などが異なる。鈴木宣弘・東京大教授(農業経済学)は「家畜の健康維持には二つを区別しバランスよく与えねばならない」と指摘。仮に被害が拡大しても米国産では単純に代替できない〉(8月27日)
真相を検証せずに菅官房長官のフェイクを垂れ流すマスコミ
ようするに、「害虫でトウモロコシが不足」は、どこからどう見ても、安倍首相がトランプから押し付けられたことをごまかすために、持ち出したフェイクとしか思えないのだ。
5月末、トランプ大統領は来日して、安倍首相からゴルフ、相撲観戦など過剰接待を受けた後Twitterでこう発言していた。
〈日本との貿易交渉で非常に大きな進展があった。農業と牛肉でとくに大きなね。日本の7月の選挙が終われば大きな数字が出てくる、待ってるよ!〉
また、帰国後の6月にも「日本は先日、『米国の農家から大量の農産物を買う』と言った」と自慢げに語った。
つまり、この時点で、安倍首相はトランプ大統領にトウモロコシを巨額購入することを約束していたのだろう。そして、8月、首相官邸が農水省に命じ、まったくたいしたことのない被害を利用して、その対策としてトウモロコシを購入する告知をさせたのだろう。
安倍政権の官製フェイクには慣れっこになっているが、トウモロコシにまで、官房長官がこんなゴマカシを行うとは……。
しかも、情けないのがマスコミだ。この問題で真相を検証したのは上記のメディアくらい。他のマスコミは菅官房長官の会見を受けて、そのまま「トウモロコシ購入は害虫被害対策」との言い分をそのまま垂れ流した。日本はもはやオーウェルの『1984』並みの、トンデモな国になってしまっているのではないか。
(編集部)
最終更新:2019.08.29 11:59
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