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百田尚樹が外国特派員協会で会見、「ヘイトスピーチや差別扇動は一度もしたことがない」と大嘘!
百田尚樹『今こそ、韓国に謝ろう』(飛鳥新社)
4日、作家の百田尚樹が、日本外国特派員協会で記者会見を開いた。いったい、このオッサンは海外メディアに向けて何を伝えたいのかと首を傾げていると、百田センセイが被害者ヅラで喋りだしたのは、例の6月に一橋大学の学園祭で自分の講演会が中止になった一件だった。
百田は、一橋大生らによる団体・反レイシズム情報センター(ARIC)が学祭実行委員会に要望書を出したことで、講演が最終的に中止になったとして、こんなふうにがなり立てたのだ。
「彼らの要求を一言で言いますと、百田尚樹という作家はレイシストであり、差別扇動主義者である。こういう人物に講演で発言をさせるわけにいかない。これが簡単に言うと彼らの趣旨でした。しかしながら、私はこれまでヘイトスピーチならびに差別扇動、そういう発言は一度も行っておりません」
「私は過去200回近く全国各地で講演をしておりますが、そういう人種問題、民族問題に触れた講演は一度たりともしておりません。にもかかわらず、反レイシズム情報センターの人たちは、私をヘイトスピーカーあるいはレイシストというレッテルを貼って、私の発言を一切封じ込めました」
おい、ちょっと待て。「これまでヘイトスピーチや差別扇動の発言は一度も行なっていない」だと? 嘘をつくのも大概にしろと言いたくなるではないか。だったら、このネトウヨ作家がこれまでどれだけ、コリアンや中国人、在日外国人に対するヘイト言説をぶちまけてきたか、しっかり突きつけなければならないだろう。
そもそも、本サイトでも何回も説明してきたことだが、ヘイトスピーチというのは、人種、性別、民族など、自分では容易に変更することができない属性を根拠にした差別的表現、あるいは差別によって犯罪行為を助長する表現のことを指す。つまり「中国人」や「韓国人」「在日」というような属性をあげつらい、ひとまとめに偏見や差別を煽る言辞のことだ。
百田は日々ツイッターでまさにこのヘイトスピーチをぶちまけている。たとえば2013年9月13日には、南京大虐殺の証拠写真がでっち上げだとして〈犯人は蒋介石国民党軍。遺体を陵辱するなどの行為は支那人特有のものですね〉というツイートに返信するかたちで、〈そうです!中国人は昔からやります。日本人にはない特性です〉とのたまった。
16年11月24日の〈私たちの税金が中国人に使われるのはまっぴらです!本当に最低の民族!!!〉というツイートもそうだが、これらはすべての「中国人」をひとまとめにして「遺体を陵辱する特性」「最低の民族」とレッテル貼りし、国籍差別を煽るヘイトスピーチに他ならない。
百田尚樹の中国人、韓国人差別、在日攻撃デマの数々
一方、韓国人に対するヘイトは、最近、出版された『今こそ、韓国に謝ろう』(飛鳥新社)を読めば、明らかだ。
〈彼女たちが整形手術を受けたいという理由は様々でしょうが、根本的なことを言えば、「自分の顔が気に入らない」という一点に尽きるのではないでしょうか。つまり敢えて乱暴な言い方をすれば、韓国人は「朝鮮人の顔」が嫌いなのです。〉
〈もちろんスポーツにおける不正はどの国にもあります。ドーピング発覚事件を見ない大会はないほどです。しかし韓国ほど露骨に、しかも何度も不正を繰り返す国はあまりありません。韓国人は勝ちさえすれば、どんな汚い手段を用いてもかまわないと考えているようです。〉
これのどこが、「私はこれまでヘイトスピーチならびに差別扇動、そういう発言は一度も行っておりません」ということになるのか。
さらに、百田は在日韓国人に対しても、事実無根のデマをがなりたてることで差別感情を煽り立てる“ヘイトデマ”を連発している。とくにツイッターに多いのが、「マスコミは在日に支配されている」なるネット右翼的妄想を丸出しにした言辞の数々だ。
〈この50年間に、新聞メディアの大半、テレビ局のほぼ全部を、反日勢力と在日韓国人およびそのシンパに押さえられた。もう手遅れかもしれない…。あとはただ洗脳を待つばかりなのか…〉(16年3月29日)
〈日本人プロデューサーが反日番組を作るのは思想的な病理問題があると想像できるが、在日朝鮮・韓国人(あるいは帰化)プロデューサーが反日番組を作るのは、さらに何か理由があるのではないかと想像してしまう〉(17年5月6日)
もちろん、こうした発言の根拠や証拠など皆無なのだが、百田はその脳内妄想を垂れ流すことで「在日朝鮮・韓国人」たちに悪感情を芽生えさせるよう仕向けているのだ。
また、最近でとくにひどかったが、昨年、千葉大医学部の学生3名が集団強姦致傷容疑で逮捕された事件で氏名が未公表だったことについてこうツイートしたことだ。
〈犯人の学生たちは大物政治家の息子か、警察幹部の息子か、などと言われているが、私は在日外国人たちではないかという気がする〉(16年11月24日)
この事実無根、根拠皆無の妄想によって「在日外国人=犯罪者」と印象付けるヘイトスピーチには、当然、方々から批判が殺到したが、後に容疑者らの氏名が公表されなかったのはそのなかの一人が“法曹界の名家”であって、これを警察が配慮した結果だと週刊誌が報じ、百田のツイートがヘイトデマであることが確定している。
そもそも新聞報道などを見ても明らかなように、在日外国人が犯罪を犯した場合も実名は発表されるし、報道もされている。百田の“在日外国人だから実名を伏せられた”という思い込み自体がはなからありえない話であって、本人がどう言い訳しようとも、差別扇動目的の悪質デマとしか言いようがない。
言論の自由を奪われたと主張しながら権力の言論弾圧は擁護
言っておくが、ここであげた百田のヘイトスピーチや差別扇動言辞はほんの一部にすぎず、さらに沖縄ヘイトや同性愛ヘイトなども含めれば数えきれないほどある。
にもかかわらず、このネトウヨ作家は、外国特派員協会で「私はこれまでヘイトスピーチならびに差別扇動、そういう発言は一度も行っておりません」などと平気で大嘘をついたのだ。百田は厚顔無恥にも「レッテルを貼られて発言の一切を封じ込められた」などとほざいているが、ちゃんちゃら可笑しい話だろう。
しかも、このトンデモ作家は、この会見でまったく逆に、「言論の自由」を制限することを正当化するような主張も展開していたのだ。
外国人記者らの質問に対し、百田センセイは「日本の報道陣が政府に気を使って自粛ということはまったくありません」「日本のメディアぐらい偏向メディアはありません。とくにテレビがひどいです。世界各国のテレビと比べることはできませんけども」「日本のテレビは反日です!」などと、妄言を連発。さらには、こんなことまで言って、放送局に圧力をかける政治権力に対する“共感”を示してみせた。
「政府を弁護するコメンテーター、文化人は日本のテレビにはまず呼ばれません。これが日本のテレビの現状です。ですから、日本の与党政治家がときおり頭にきて、メディア批判をする気持ちは理解できます」
さらに百田は、国連の報告で日本における報道の自由が危機に瀕していると指摘されているとの質問に対して、「実は、日本における反政府活動、あるいは反日文化人、ジャーナリスト、こういう人たちは長年、20年も30年も前から国連を利用してきました」なる陰謀論で返答、あまつさえ高市早苗総務相の「電波停止」発言まで擁護する始末だった。
百田は2015年にも、自民党の勉強会で「沖縄の2紙は潰さなあかん」との言論弾圧発言をぶったが、ようするに安倍政権批判については、むしろ言論の自由を奪えと言っているのだ。
あまりのご都合主義に唖然とするほかないが、そのなかでもハイライトは、「朝日新聞の社長を半殺しにしてやる」ツイートについて質されたときのことだろう。
「朝日新聞の社長を半殺しにする」発言の言い訳でついた嘘
今年の4月、百田はこんな殺人予告的なツイートをぶっ放していた。
〈昔、朝日新聞は、「北朝鮮からミサイルが日本に落ちても、一発だけなら誤射かもしれない」と書いた。信じられないかもしれないが、これは本当だ。
今回、もし日本に北朝鮮のミサイルが落ちた時、「誤射かもしれない」と書いたら、社長を半殺しにしてやるつもりだ。〉(現在は削除)
これについて、朝日記者が、いまでも認識に変わりはないのか等の質問をした。すると、百田はこう返答したのだった。
「かつて朝日新聞が北朝鮮がミサイルを開発したときに、朝日新聞が自社の新聞で、自分でクエッション出して、自分でアンサー出す記事を書きました。質問はこういう質問です。『もし日本に北朝鮮のミサイルが打ち込まれたらどうするか』という質問です。このとき朝日新聞が自らこう答えています。『そのミサイルが一発だけなら誤射かもしれない』。で、これがたぶん、ちょっと覚えてませんけど、1990年代の朝日新聞の記事です」
実は、この百田センセイの“朝日新聞は「北朝鮮からミサイルが日本に落ちても、一発だけなら誤射かもしれない」と書いた”との主張がそもそも事実ではない。
おそらく、百田センセイは朝日新聞2002年4月20日付の記事「「武力攻撃事態」って何」のことを言いたいのだろう。これは当時の小泉政権による有事関連3法案に関するQ&A方式の記事で、「武力攻撃事態」に関連し、〈戦争とは違うの〉〈「おそれ」と「予測」はどう違うの〉〈そもそも武力攻撃事態かどうか、だれが判断するの〉などの計11の質問のひとつして、こんなやりとりがされている。
〈Qミサイルが飛んできたら。
A武力攻撃事態ということになるだろうけど、1発だけなら、誤射かもしれない。〉
「北朝鮮」という国名が一切出てこないが、それも当たり前で、ここで書かれているのは政府が説明する「武力攻撃事態」において発射意図の有無や目的の判断は恣意的にならざるをえないという一般論であり、そもそもこのQ&A自体が「武力攻撃事態」の定義の曖昧性を解説する記事だったのだ。ところが、百田センセイは自分の捏造は全く棚にあげて、こう続けた。
「そして今年の4月に北朝鮮の非常に緊迫した状況がありました。北朝鮮がもしかしたら日本に核ミサイルを撃つかもしれないという、こういう危険な状況になりました。それで私はツイッターにこう書きました。『もし日本に核ミサイルが打ち込まれて、このとき朝日新聞が「一発だけなら誤射かもしれない」と言えば、私は朝日新聞の社長を半殺しにする』と」
そして、朝日記者を名指しして「なんか文句ありますか?」と言い放った。
もはや、完全な開き直りである。言っておくが、百田の「朝日の社長を半殺しにする」発言は“自分が気に食わないことを言ったり書いたりするやつは半殺しにする”と言っているのであって、言論に対して暴力で対抗するというテロリズムの発想だ。
表現、言論の自由を侵害しているのは百田のほうだった
これでよくもまあ、“言論の自由を奪われた”的なことを言えたものではないか。
ちなみに、百田センセイは会見の前半で、「有名なヴォルテールの言葉があります。私は君の意見には反対だが君が意見をすることには命を懸けて守ると。これがなくなれば言論の自由は滅びると思います」とドヤ顔で言っていたのだが、こんな御仁が「言論の自由」を語るなど、もはや何かのギャグとしか思えない。
改めて言っておくが、一橋大学学園際での講演中止は、言論の自由の侵害などではない。言論の自由、あるいは表現の自由は民主主義の根幹をなすものであり、権力や暴力によって抑圧・制限されることは絶対にあってはならない。ただし、それは差別や殺人の扇動垂れ流しを放置することではないし、ましてや、表現の自由は万人に保障されており、ある人の言論が、ある人の対抗言論によって否定や拒否されることは、言論という行為における当然の相互作用として認められなければならない。
そういう意味では、ヘイトスピーチや差別扇動を繰り返してきた百田が大学で講演することに対して、人々が抗議の声をあげたり、反対運動を起したりすることは、当然の権利なのだ。
言い換えれば、百田は自分以外の表現の自由に倫理的に負けただけであり、これを「言論弾圧」などと呼ぶのは屁理屈に過ぎない。
むしろ、言論の自由を侵害しているのは、政権与党の勉強会で米軍基地問題を批判したメディアに対して「沖縄の2紙は潰さなあかん」と言い放ち、朝日新聞を「半殺しにする」と、権力や暴力よって、報道弾圧することを扇動した自分のほうだろう。
とまあ、何から何まで、嘘と矛盾とデタラメに満ちた百田センセイの外国特派員協会での会見。日本の恥が世界中に発信されたと怒る方もいるかもしれないが、一方で、意味があったともいえる。この国の言論状況がいかにとんでもないことになっているかを、海外のメディアにより理解を深めてもらえたはずだからだ。
百田センセイと発想がそっくりの安倍首相は、自民党が政権与党に返り咲いて以降、外国特派員協会からの会見要請を断り続け、一度たりとも外国特派員協会での記者会見は実現していないらしいが、是非とも、次は安倍首相に登場してほしいものだ。
(編集部)
最終更新:2017.12.05 02:05
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