長谷川豊擁立で維新の本質が明らかに!「透析患者は殺せ」、待機児童問題は“親の甘え”、育休とれない女性に「バカ女」

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長谷川豊 公式ブログ『本気論 本音論』より


 どの面下げて、とはこのことだろう。日本維新の会が、元フジテレビアナウンサー・長谷川豊氏を次期衆院選の千葉一区で擁立することで決定、本日14時より記者会見をおこなうという。

 ご存じの通り、長谷川氏といえば昨年9月に自身のブログに「自業自得の人工透析患者なんて、全員実費負担にさせよ!無理だと泣くならそのまま殺せ!今のシステムは日本を亡ぼすだけだ!!」というタイトルで文章を投稿。〈8~9割ほどの患者さんの場合「自業自得」の食生活と生活習慣が原因〉〈透析患者には一人年間500万円かかります。日本人の平均年収以上ですね。必死に払ってる保険料、そうやって食いつぶされ続けているのです〉と主張し、人工透析患者にかんするデマを書き連ねて罵倒、さらには健康保険制度を〈日本の病魔〉と斬って捨てた。

 しかも、この暴論に批判が殺到しても、長谷川氏は〈自堕落な生活で人工透析患者になったハナクソ同然のバカ患者〉などと強調。非難の声がどんどんと強まり、結果としてテレビのレギュラー番組からすべて降板するという結末にいたった。

 この、人工透析患者に対する誤解や偏見を拡散しただけではなく、“自業自得なのに特権にありつく金食い虫”という憎悪感情さえも煽った長谷川氏の下劣な態度には反吐が出るが、そんな人物が政治家に転身しようというのだから呆れてものも言えない。

 だいたい、長谷川氏の「暴論」は人工透析患者に対するものだけではない。長谷川氏は一貫して同じように「自己責任論」をぶってきたからだ。

 たとえば、昨年、ネット上で「貧困だと言うならアニメグッズを買うな」などとバッシングされたNHKの貧困女子高生の問題では、長谷川氏は自身の家庭が〈少なくとも「お金のある家庭」ではありませんでした〉と明かした上で、こんな論をぶっていた。

〈あのね、お金がないっていう状況は「そこから這い上がる力を身に着けられる絶好のチャンス」なのです〉
〈お金がある人は「お金のかかるいろんな経験」を出来ます。しかし、お金のない人は逆に「お金がないからこそできる様々な経験」を出来るのです。それらは単なる特徴であって、栄養失調になったりするレベルだとそれは問題ですが、貧困な生活であれば、それはそんな恵まれた環境は、私はないと思っています〉

 NHKが取材をした女子高生は、家庭の経済状況によって進学を諦めざるを得なかったという事情を抱えていた。本来、このとき議論されるべきは、そうした相対的貧困層にいる学生たちへの奨学金制度などの拡充による公的な支援制度のあり方であるはずだが、長谷川氏は貧しさを「絶好のチャンス」などと勝手に問題をすり替え、“自己責任で社会を這い上がれ”と述べるのだ。長谷川氏の経歴によれば中学から大学まで私立校に進んでいるが、そうした学ぶ機会の「恵まれた環境」を若い世代にも、と言うでもなく、「貧困な生活こそ恵まれた環境」と言うのである。

 また、「保育園落ちた日本死ね」ブログが話題になった際には、〈保育を受ける権利をみんなが行使できる〉という当然の考えを、〈日本全体の病魔〉〈自分の思い通りのサービスが受けられないなんて、日本死ね病〉と批判。待機児童は東京のみならず地方都市にも広がっている問題なのだが、長谷川氏は“人口の東京一極集中が問題なのだから郊外に引っ越しすればいい話”だとし、〈この問題は「本当に困っている方々」と「実は自分が甘えているだけの人」をちゃんと切り離して考えるべきです〉と、“親の甘えの問題”だと片づけた。

 その上、長谷川氏はこんなふうに母親たちを責め立てている。

〈「子供をさっさと預けて働きに出たいママ」が待機してるんです。『待機ママ』問題なんです。ホントは〉

 女性の働く権利を認めないだけでなく、生活のためには働かざるを得ないという現状があることもまったく理解せず、“子どもを預けて働きたい母親のワガママが原因”と決め付ける。──こうした女性蔑視的な考え方は、育休延長論でも同様に見て取れるものだ。育休が長引くことがキャリアにも影響するという論に対し、長谷川氏は〈お前ら、子供を産んだんだろうが!〉と吠える。

〈我々男性陣は、どんなに頑張っても妊娠は出来ない。そういう性なんだ。我々男性陣は、何をどう頑張っても、おっぱいを出せない。しょうがないだろ!そういう性なんだから〉
〈育休とったら出世できない? 育休とったら社会に戻れない? 言い訳すんな。バカ。そうやって社会のせい 子供のせい 行政のせい 国のせい 政治家が悪い 男性が悪い 会社が悪い 一生言ってろ!バカ女!!!悪いのはお前らの頭の中と仕事の能力だ!!!!〉

 このほかにも、低所得者対策としての軽減税率の話題では“高額な所得税を払いながらも慎ましやかに生活する人”と“ちょっとしか所得税を払っていない、酒やパチンコやキャバクラに散財する自堕落な生活の人”を対比させて、そんな人間に還付されるのはおかしいと言い出すなど、長谷川氏の主張は弱い立場にある人を決め付けに基づいて「甘え」「社会の悪」と貶め、一方の“真っ当な人間”が「損をしているのはおかしい」と訴えるのである。それも、差別的だったり卑劣な言辞で煽りながら。

 そもそも長谷川氏といえば、フジテレビのアナウンサー時代である2012年にニューヨーク赴任中の経費の不正使用が発覚したことで降格処分となり、翌年に退社すると翌日から内部批判のブログを開始。自身の潔白を訴える一方で、週刊誌などで女子アナたちの暴露話を披露することで注目を集めた人物。自著『いつも一言多いあのアナウンサーのちょっとめったに聞けない話』(小学館)でも本人自ら明かしているように、局アナ時代には「こいつなんてね、おっぱい四天王だ、四天王!」「もーこの女子アナなんて、脚だけ見てくれればいいんです!」などと発言し、ネット上では「セクハラがひどすぎる」と話題になったこともあるほどで、その下品さはお墨付きだった。

 そうした長谷川氏が、女子アナの暴露話から社会問題へ踏み込むようになり、暴論であればあるほど“炎上”してネットニュースに取り上げられるという状態になった。しかし、これはビジネス上の“炎上芸”では決してないだろう。それは前述したように、長谷川氏は一貫して新自由主義者らしい弱者叩きに邁進してきたからだ。

 そして、ここで浮き彫りになったのは、維新のスタンスだ。この差別性に溢れ、かつ弱者叩きの言説を発信してきた長谷川氏を、よりにもよって維新の幹部は「維新の政策と長谷川氏の主張は近い」(産経ニュースより)などと語り、擁立することを決めたのである。

 それはたしかにそうだろう。長谷川氏は女性蔑視かつ人工透析患者をはじめとして弱者への差別を厭わないが、橋下徹氏は「慰安婦制度は必要なのは誰だってわかる」と言ったり、昨年、沖縄県うるま市で女性強姦殺人事件が起こった際も、過去の“風俗の活用”発言を「撤回しない方がよかったかも」などとツイッターに投稿したりと、女性の人権などまるで無視。維新代表で大阪府知事の松井一郎氏も、「土人」発言をおこなった大阪府警の警官に批判が集まるなか、「出張ご苦労様」と差別を肯定するかのように労ってみせたほどだ。

 こうした言動にくわえて、改革という名のもとに弱者を切り捨ててきた維新の新自由主義政策と、長谷川氏の主張の親和性。──知名度だけではなく、維新が長谷川氏のそうした部分を買ったのは間違いない。

 維新が長谷川氏を擁立するという動きによって、あらためてよくわかったこと。それは維新が「差別OK、弱者叩きごもっとも」な政党だということだ。橋下氏はいわばトランプの先駆者だが、長谷川氏のような人物を担ぎ出すというのは、今後はさらに過激な言動で大衆を煽動する反知性的な政治を展開していく、そのことの表明なのだろう。
(編集部)

最終更新:2017.11.16 12:14

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