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自民党が今度はカジノ法案を強行採決の動き! 他国よりひどい日本人のギャンブル依存症がさらにエスカレート
自由民主党HPより
昨日、統合型リゾート(IR)整備推進法案(カジノ法案)が衆院内閣委員会で審議入りした。民進、共産は反対の姿勢を見せているが、自民党は経済効果を強調。今月中にはまたもや強行採決に踏み切るのではないかと見られている。
周知の通り、この「カジノ法案」はこれまで何度も出てきては成立が見送られてきた。というのも、このカジノ法案は危険な問題が山ほどあるからだ。
その筆頭がギャンブル依存症の問題である。実は日本はギャンブル依存大国であり、「病的ギャンブラー」と判断される人は全国に536万人もいる。その数はアルコール依存症の5倍にあたるという。
ギャンブル依存は単なる「怠惰な生活による自業自得の産物」として切って捨てていいものではなく、ドーパミンの過活動など脳内神経回路の不調による立派な病気であり、専門医による治療を必要とするものである。しかし、日本にはアルコール依存症と比べても治療機関や専門医の数が圧倒的に少なく、カジノ新設によりギャンブル依存の患者が激増した場合、対応できなくなる可能性がある。
また、与党はこの法案の成立目的として「観光立国を図る」と説明しているが、カジノが地域経済に良い効果をもたらすとは限らない。たとえば、アメリカのアトランティックシティはカジノをつくったものの観光客は大して増えなかった。そのうえ、人々は食事などをカジノ内で済ますようになってしまったため地域のコミュニティは崩壊。ゴーストタウン化してしまい犯罪率も急増。「最も住みにくい街」「最悪のリゾート地」の汚名を着せられることになった例もある。
ところが、自民党はこうした問題をほとんどまともに議論しようとせず、強行採決をやろうとしているのだ。
当サイトでは以前、カジノ法案とギャンブル依存症についての記事を配信したことがある。再編集のうえここに再録するので、このまま拙速にカジノ法案を進めることの危険性を再認識していただければ幸いだ。
(編集部)
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2002年には石原慎太郎都知事、そして、11年からは橋下徹大阪市長や松井一郎大阪府知事らが主張してきたものの、近隣の治安問題やギャンブル依存症に関する懸念から成立にいたっていなかったカジノ合法化がいよいよ現実的になりつつある。
しかし、本当にこのまま我が国にカジノをつくってしまって大丈夫なのだろうか? 十分な議論も進んでいない状況下でIR整備推進法案が成立しようとしているが、実はこの国における「ギャンブル依存症」に関する問題は他の国に比べて暗澹たるものなのだ。
14年8月に厚生労働省研究班が出した調査結果によれば、現在「病的ギャンブラー」と判断される人は全国に536万人いると推計されている。これは成人全体に換算すると、国民の4.8%となる。およそ20人に1人がギャンブル依存症なのが我が国の現状なのである。同時に行われた調査では、アルコール依存症の患者は109万人との数字が出ており、このことと照らし合わせて見ても、ギャンブル依存症対策がいかに逼迫した課題であるかがよく分かるだろう。
ちなみに、ギャンブル依存患者の数字は、アメリカでの調査では1.6%、フランスでは1.24%、韓国では0.8%となっており、4.8%を叩き出した日本のギャンブル依存症罹患率は飛び抜けて高いと言わざるを得ない。アメリカ、フランス、韓国、どの地域にもカジノがあるのにも関わらずこの数値である。もしも我が国にカジノが出来たらどうなってしまうか、火を見るより明らかであろう。
さて、ギャンブル依存症になってしまった患者はいったいどんな人生を送ることになるのか。精神科医としてギャンブル依存の患者を見続けてきた帚木蓬生氏は『ギャンブル依存国家・日本 パチンコからはじまる精神疾患』(光文社)のなかで実際に出会った症例を紹介しているので、いくつか引用してみたい。ギャンブルによって人生が“破壊”されてしまう恐ろしさがよく分かるはずだ。
〈Aさんは高校1年のとき。ギャンブル好きの父親に連れられて競馬場に初めて行った。やがてひとりでパチンコ店にも行くようになり、週1回はパチンコをして、費用はアルバイトで得た金から出していた。短大にはいってから、パチンコの回数は週に4、5回に増え(中略)ほとんど講義には出なかった。(中略)
20代前半になって借金開始、50万から100万円に増えたため、弁護士に相談して任意整理をした。月に3万円ずつ5年で返済が決まった。しかし弁護士費用の8万円をパチンコで使ってしまい、立替えてもらった親からこっぴどく叱られた。(中略)
これまで1年やめてはいるものの、パチンコ店の横や液晶の宣伝を眼にすると、ハッとする〉
これが典型的なギャンブル依存症患者だ。しかし、事態が重くなれば、事はこの程度ではすまない。他の精神病を併発し、取り返しのつかない傷を負うケースもある。
〈Bさんは高校卒業して会社にはいり、20歳からパチンコを週1回始めた。20代終わりに見合い結婚したあと、パチンコの回数が週に4、5回に増えた。
30代になって長男が誕生したとき、消費者金融の借金が300万円に達した。妻が一部を貯金から返済し、残りは自分でローンを組んで返済を続けた。しかし40代になって借金は400万円になり、妻が再び貯金から返済した。それでもパチンコとスロットはやまず、40代の終わりには、また250万円の借金をつくり、妻の貯金では返せなくなった。
うつ病も併発、仕事ができなくなり依願退職し、そのまま失踪した。妻が捜索願いを出して発見され、精神科病院に入院した〉
日本では、ギャンブル依存の患者のことを、偏見から「単なる怠け者」「どうしようもない人」というイメージで捉えがちだ。もちろん、ギャンブルを嗜む人のなかには、そういう類の人も相当数いるだろう。だが、本当のギャンブル依存症患者は、「ぐうたらな性格」などではなく「ドーパミンの過活動」など脳内神経経路の不調が大きな要因となっている、立派な「病気」の人だ。本人の気合いや努力では、どうにも解決できない。専門医の力が必要なのである。しかし、日本ではアルコール依存症と比べても治療機関や専門医の数が圧倒的に少ない。なので、周囲の家族もどうサポートすれば分からないというケースが往々にして起こりやすい。結果として、周囲の人の精神的な健康まで損なわれてしまう事例も少なくないのだという。
〈Vさんは高校を卒業して就職、20歳を過ぎてパチンコとスロットを始めた。20代半ばにはカードローンで借金して、パチンコ店に通い、給料が出ると返済していた。20代後半に結婚しても、パチンコとスロットはひどくなるばかりだった。それを知った妻は体調を崩して、精神科に通院するようになった。反省してギャンブルをやめたいと思い、20代の終わりに私の診療所を初診した。これまでギャンブルに使った総額は2000万円になっていた〉
そして、欲望を抑えきれなくなった者のなかには、犯罪行為にまで手を伸ばしてしまう者も珍しくない。
〈Zさんは大学生になってすぐ、パチンコとスロットを始めた。授業には全く出ず、毎日パチンコ店にいた。消費者金融から借金をし、ついに限度額を超えてブラックリストにあげられ借りられなくなった。それでもパチンコとスロットは続いた。大学は2年留年して退学した。20代半ばに結婚、妻の実家の自営業を手伝うようになった。子供が生まれたあとも、営業で出かけると言ってパチンコ店にはいっていた。30代になると、妻のクレジットカードで、こっそり借金もした。妻の親から馘を切られ、別の会社に就職し、妻もパートタイムで働き出した。パチンコとスロットは続き、何度も両親のところで借金した。30代半ば、会社の金300万円を使い込んだことが発覚し、両親が完済した。しかしひと月後、2回目の使い込み160万円が発覚、今度は給料とボーナスで完済することで、会社は許してくれた、しかし、数日後に蒸発、両親が警察に捜索願いを出し、4日後、車の中で生活しているのが見つかった。会社は、借金を両親が返済したので依願退職にしてくれた。しかし妻から離婚の申し出があり、離婚となり、その他の借金については自己破産申請中である〉
まるで、映画の筋書きのような転落人生である。引用した文中のZさんがギャンブル依存症の果てに起こしたような、横領等の企業犯罪というと最近では11年に、大王製紙元会長の井川意高氏がカジノに使うため総額106億円もの資金を不正に引き出した事件が記憶に新しい。
だが、一般社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」代表理事の田中紀子さんは『ギャンブル依存症』(KADOKAWA/角川新書)のなかで、ギャンブル依存症は横領などだけではなく、あるとあらゆる犯罪の温床になっていると警鐘を鳴らしている。
たとえば、昨年世間を大変賑わせたベネッセの個人情報流出事件も、発端となったのは情報を不正に持ち出したシステムエンジニアがギャンブルでの借金に窮して顧客データ約4000万人分を売却したことで起きた。ちなみに、この時に犯人が得た売却金額は400万円、そして、この件でベネッセが受けた特別損益は306億円であったという。
さらに、ギャンブル依存がもとで起きた凶行は、人の生き死にに関わる事件に発展することもある。
01年、青森県弘前市の消費者金融・武富士に強盗に入った男が放火にいたり従業員5名が死亡した事件は、犯人が競輪などで積み重ねた借金を苦に犯行におよんだことで起きている。
また、08年に大阪は難波駅前の個室ビデオが放火され16名が死亡した事件も、「死にたかった」と動機を語る犯人のトラブルの元凶には、パチンコや競馬で重ねた借金があった。
政権がなんとしてもカジノを合法化させたい理由として「経済効果」と「雇用創出」があると考えられているが、40年前カジノを建設したアメリカのある街では、期待されたその二つの効果も得られぬまま街が荒廃してしまったケースがある。本稿の結びとして最後にそれを引いてみたい。これまであげてきたような、ギャンブル依存と、それにまつわる悲劇が起きる可能性を高めてまで、本当にこの国にカジノが必要なのだろうか?
〈40年前、米国東海岸にあるニュージャージー州のアトランティックシティは(中略)カジノを中心としたリゾート地をつくれば、年間3000万人の観光客を引きつけると皮算用したのです。しかしいざつくってみると、年間わずか500万人で、しかも、滞在は短く、落ちる金もわずかでした。逆に市には影の部分が増えました。
カジノ創設の3年後、犯罪発生率が、米国でトップに躍り出たのです。それまでは50位でした。(中略)
周辺の商店街はリゾート内の店に太刀打ちできなくなり、次々と閉店していきます。というのも、カジノの中は、しばしば飲み物も食べ物も無料か低価格だからです。(中略)
雇用創出に関しては、確かにカジノ関係の雇用は増えた反面、それ以外では全くもって雇用が冷え込みました。通常なら、ある産業がやって来れば、周辺も活気づき、相互の繁栄が生じるのですが、カジノは全く別で、周辺はゴーストタウン化しました。(中略)
カジノ創設から10年後、アトランティックシティは、米国で最も住みにくい場所と言われるようになりました。1997年、ある旅行誌は、ニュージャージー海岸は、世界で最悪のリゾートとまで酷評したのです〉(前出『ギャンブル依存国家』より)
ギャンブル依存症対策として、日本人のカジノ利用を制限すればよいのではないかという議論も出ているが、アトランティックシティのケースを見ても分かる通り、カジノができれば、周辺の状況も激変に晒される。政権は20年の東京オリンピックまでのカジノ建設を急ぎたいようだが、慎重な議論をすべきだろう。
(井川健二)
最終更新:2016.12.01 05:34
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