高市首相の熊本地震避難所視察は北朝鮮並みのプロパガンダだった!「至れり尽くせり」の選ばれた避難所の一方で実態は…

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首相官邸Xより


 これで本当に「被災地の視察」といえるのか。熊本地震発生から7日目の8月3日、高市早苗首相が被災地の熊本を訪れたが、その模様は、まさに成果アピールのためのパフォーマンスとしか思えないものだった。

 高市首相が視察したのは、熊本県氷川町の避難所になっている氷川中学校だが、とくに懐疑的な目が向けられているのが、映像が公開された5名の被災者との別室での意見交換の模様だ。

 冒頭、高市首相が「お困りごととか、不安に思ってらっしゃることをお聞かせください。もう国でできることは全部やるつもりで参りました」と口火を切るのだが、不満を述べる被災者はおらず、逆に、高齢の男性がこう答える。

「避難所の生活については、特に不満等はないです。本当にもう至れり尽くせりで、ベッドも全員、段ボールベッド、最初は床に寝てたんですけども、やっぱどうしても足腰が悪い人はあの立ち上がったりなんかするのに不便なもんですから、大変助かりました」

 これに高市首相が「昨日あたりに全部届きましたか」と満足げに応じたあと、こうアピールする。

「お配りできなかったところがあったんですが、土曜日の夜遅くそれを聞きまして、で、日曜日、昨日ね、あの、津島副大臣がものすごく頑張って、段ボールベッドの組み立てがなかなかやり方わからないとかいろんなことがありましたが、職員も入れて、一斉に間仕切りと段ボールベッドの展開。今日までかかってるところもありますが、昨日すごく動いたんです」

 すると、今度は高齢の女性がこう感謝の意を示したのだ。

「段ボールベッドは来るし、支援物資は来るし。こんな快適な生活はないと思いまして、本当に涙が出るほどありがたかったです」

 日本人は災害の苦境にあってわずかな支援しか提供されていなくても、感謝の意を示す傾向があるが、ここまで手放しで政府や自治体の対応をほめちぎっている映像は見たことがない。そのためか、SNSでは「被災者は支持者か、仕込みではないのか」「北朝鮮並みのプロパガンダ」というツッコミが殺到している。

 出席者が仕込みというのはさすがに考えづらいし、善意の被災者にはなんの責任もないが、しかし、今回の高市首相の視察に「演出」があるのは明らかだ。というのも高市首相は、約200カ所(3日時点)ある避難所のなかで明らかに支援が行き届いたところを用意し、視察に行っていたからだ。

被災者が「至れり尽くせり」と語った理由は、視察用に行き届いた避難所を選んだから

 高市首相が今回、訪れた氷川中学校の避難所は教室使用でクーラーを完備しているのはもちろん、段ボールのベッドも全員分を用意。プライバシーを確保するためのパーテーションもあった。

 しかし、ここは取材陣の間でももともと「特別に力を入れている」といわれていた避難所らしい。読売テレビの報道によれば、女性が利用しやすい避難所を念頭に、航空自衛隊によって大きなお風呂やシャワーなどの入浴設備が設置され、女性自衛官が数多く配置されていたという。

 一方では、3日時点でもまだエアコンが設置されてない避難所が残っていたし、ダンボールベッドはおろか、囲いの段ボールさえないまま雑魚寝を強いられる避難所がかなりの割合を占めていた。

 3日の読売新聞によれば、宇城市の避難所では、間仕切りもなく雑魚寝の状態が続くなか、コロナ感染者まで出ているという。

 避難所に指定されている学校体育館のほとんどにエアコンが設置されていないことから、文科省は地震発生翌日の7月29日に、エアコンの整った普通教室を避難所として活用するよう通知を出したが、発生直後の混乱や人手不足のせいか、通知後も多くの被災者がエアコンのない体育館で雑魚寝を強いられていた。

 たとえば、8月1日の「NEWSポストセブン」はその悲惨な状況をこうレポートしている。

〈避難所に指定されている鏡町小学校の体育館。鏡町は八代市の中でも特に被害が大きい地域だ。うだるような暑さのなか、被災者たちが身を寄せ合っていた。空調設備はなく、頼りは扇風機のみという状況。火曜日から体育館に身を寄せているという女性は環境への不満をこぼした。
「暑い、暑いですね、ここは。扇風機しかないから。だからちょこちょこ水分を飲んでいます」〉

 エアコン未設置問題では、小泉進次郎防衛相が29日にスポットクーラー約300台を熊本に輸送したことをアピールしていたが、そもそも避難所は当時400カ所以上に及び、9000人近い住民が避難していて、全然足りない。しかも、同じく「NEWSポストセブン」によると、宇城市の小野部田小学校では、このクーラーが搬入されたものの、電源がないため使われていなかったという。

 エアコンが使えるようになった後も、まったく解決されていないのが雑魚寝状態だ。2日付の熊本日日新聞は、約100人が避難する八代市西松江城町の代陽コミュニティセンターでは、横になれるスペースは1人1畳ほどで、「荷物を置くと足を伸ばせない。雑魚寝で物音がして眠れない」という被災者の声を紹介している。

 また、市内最多の約1000人が避難する宇城市小川町の小川防災拠点センターでは、床に雑魚寝状態という環境下で体調管理が難しいためか、数人が救急搬送されたという。

 そして、2日には、雑魚寝を強いられる避難所を避けたのか、車中泊をしていた70代女性が熱中症で亡くなっている。

 問題は、エアコンや雑魚寝だけではない。トイレにしても、災害発生から48時間経った7月30日になっても届かず、その後も十分な数は揃わない。早朝から数十人の行列ができていた避難所が続出し、悲惨な状況になっていた。

 たとえば、前掲の熊本日日新聞は、代陽コミュニティセンターの5基のトイレのうち洋式が1基のみで、足腰が悪くて和式を使えないという高齢の被災者の声や、八代市鏡町の鏡コミュニティセンターではトイレに入るのをためらうほど、臭いがひどいという被災者の声を紹介している。

短かった視察時間 内閣広報は51分滞在と反論も、地方紙で避難者が「首相は10秒しかいなかった」

 災害時に首相が避難所を視察する意義は、被災者が置かれた困難や窮状を肌で知ることにあるはずで、過酷な環境を強いられている避難所にこそ足を運び、被災者の不満に耳を傾けるべきだろう。

 にもかかわらず、高市首相は数多ある避難所のなかでも、わざわざエアコン、段ボールベッド、パーテーション、大きなお風呂が揃った場所を訪ね、被災者から「本当にもう至れり尽くせり」「こんな快適な生活はない」と言ってもらって、悦に入っていたのだ。

 これでは、「パフォーマンス」「プロパガンダ」のための視察、と言われても仕方がない。

 実際、そのパフォーマンスを差し引いて客観的なデータだけを検証してみると、高市首相の震災への関心が実は非常に低いことが浮き彫りになる。

 そのひとつが、実際に視察に費やした労力だ。高市首相の視察については、現地の氷川中学校に入って取材したジャーナリストの田中龍作氏が〈クーラー付き、段ボールベッド完備の別格避難所を高市総理が視察したのは、たったの3分間。 電光石火だった。避難生活の辛さが理解できるはずがない。〉とXに投稿。

 対して、佐伯耕三内閣広報官のXアカウントが、〈一部SNSで事実と全く異なる情報が流れていますが、高市総理が氷川町の避難所に到着し視察を開始したのは、午後3時13分。視察を終えて避難所を出発したのは、午後4時4分です。避難所視察は51分間ですので、お伝えします〉と反論した。

 しかし、内閣広報官の言う「51分間」というのは、あくまで氷川中学校に滞在した時間にすぎない。

 官邸が公開した動画や各紙の首相動静をチェックすると、3時21分から13分間は別室で氷川町町長らとの会談に費やし、そのあとすぐ冒頭で紹介した別室での被災者との意見交換が19分間、3時54分まで行われている。

 避難所の教室を視察していたのは、中学校に到着した3時13分から20分までの間か、3時54分から氷川中学校を出発する4時4分までに間のどちらかしかなく、そこから官邸の動画に映っている移動や物資の視察を差し引くと、「3分間」かどうかはともかく、避難所になっている教室にいた時間が数分程度なのは、間違いない。

 いや、避難者からみると、もっと早く切り上げたという印象もあったようだ。高知新聞が4日付で掲載した「高知新聞の記者現地取材」の記事において、高市首相が視察した氷川中学校の避難者を取材し、こうレポートをしているのだ。

〈避難者の男性(80)は「私のいる教室に首相が来て何かあいさつしていたが、耳が遠くて聞こえんかった。10秒もいなかったと思う。自民党の宣伝でしょ」と冷めた声を漏らした。〉

岸田元首相も安倍元首相も複数の避難所を視察していたのに、高市首相は1箇所のみ

 視察時間よりもっと気になるのは、高市首相が、今回、その整った避難所である氷川中学校ただ1カ所しか避難所を訪問しなかったことだ。

 たとえば、岸田首相は2024年の能登半島地震の際、輪島市立輪島中学校、珠洲市立緑丘中学校の2カ所の避難所を視察している。

 また、災害への関心の薄さや被災者への冷たさを再三指摘されてきた安倍晋三元首相も、2016年の熊本地震では、本震発生から1週間後の4月23日、早朝6時3分に公邸を出発し、南阿蘇村の総合福祉センターと益城町の保育所、老人ホームの計3カ所の避難所を視察している。

 対して、今回、高市首相が公邸を出たのは午前9時45分で、避難所の視察は繰り返してきたように氷川中学校一カ所のみ。もう少しだけ早く出かければ、そう遠くないのだから、避難者数が多く、避難所も混雑していると言われる八代市や宇城市の避難所に足を運べたと思うのだが、高市首相はそれをしなかった。

 この震災への積極性のなさは、前日の日曜日の行動からもうかがえる。

 8月1日、2日は、高市首相が地震発生後に迎えた最初の週末であり、どう過ごしているかを首相動静でチェックしたところ、土曜日は、さすがに官邸で熊本地震非常災害対策本部会議などに出席していたが、日曜日はなんと、いつものごとく終日、公邸にこもりきりだったのである。

 本震発生から1週間足らずで大きな余震が来る可能性もある上、しかも翌日に視察を控えているわけだから、官邸に詰めて、関係閣僚や震災、被災者支援担当部署との打ち合わせやブリーフィングを受けるのが普通だろう。

 実際、岸田元首相は能登半島地震の発生から初めての週末、1月6日(土)はもちろん、7日(日)にも、官邸で林芳正、村井英樹、森屋宏、栗生俊一正副官房長官、松村祥史防災担当相、村田隆内閣危機管理監、森昌文首相補佐官、高橋謙司内閣府政策統括官、森光敬子厚生労働省危機管理・医務技術総括審議官、茂木正経済産業省商務・サービス審議官、松山泰浩資源エネルギー庁次長、国土交通省の広瀬昌由水管理・国土保全局長、丹羽克彦道路局長、石坂聡住宅局長(肩書はすべて当時のもの)と、ものすごい数の関係閣僚、担当官僚からブリーフィングを受けている。

 対して公邸にこもりきりだった高市首相は誰にも会っていない。現場の担当者やそれぞれの専門家に会って、いままさに起きている地震被害の対策を考えなければならないのに、寝てないアピールの時のように「資料読み込みをしていた」とでもいうのだろうか。

 いずれにしても、こういう姿を見ていると、カメラの前では「できることは全部やるつもりで参りました」と言っていた高市首相が本気で、被災者支援に取り組むつもりがあるのか、甚だ怪しくなる。

 実際、高市首相のかつての言動を見ていると、安倍元首相同様、右派の特徴なのか、災害支援や救助にとんと関心がないことがよくわかる。

 その点については、別稿で詳しく記事にするつもりだが、問題は、こうした空疎な実態があるにもかかわらず、高市首相や官邸はSNSなどで露骨なプロパガンダを堂々と垂れ流し続け、それが応援団の手によって拡散されていることだ。

 SNSでは、こうした欺瞞について、冒頭で紹介したような「北朝鮮並み」どころか、2024年に発生した大規模災害の際の金正恩主席による視察画像を紹介した上で、「金正恩の被災地訪問の方が、高市早苗よりもはるかにマシ」と指摘するポストまで広がっている。

 さすがにそこまでとは思わないが、この国が相当ヤバいことになっているのは、事実である。

最終更新:2026.08.04 10:07

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