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大阪のコロナ感染拡大に和田アキ子が「大阪モデルと言ってたのに」…それでも吉村洋文知事は市中感染をごまかし自粛呼びかけを拒否
吉村洋文公式サイトより
勢いが止まらない新型コロナだが、いま、東京都以上に感染拡大が懸念されているのが大阪府だ。新規感染者数の過去最多は4月9日の92人だったが、今月22日から5日連続で100人超えとなり、26日の感染者数は141人にものぼっている。
しかも、注目すべきは陽性率の高さだ。通常、検査数が増えれば陽性率は下がるものだが、東京都の陽性率は6.5%(26日の数値)であるのに対し、大阪府の26日の陽性率はなんと13.0%。さらに、「夜の街」関連の感染者は全体の約2割にすぎず、感染経路不明者は約6割となる87人。この数字を見るかぎり、検査が追いつかないほど市中感染が広がっているということなのではないか。
さらに、大阪府では3〜4月に多発した悲劇が再び起こりはじめている。25日、60代男性が死亡したが、この男性は発熱などの症状で20日に病院を受診しながら、陽性が判明したのは24日。男性には基礎疾患があったため翌25日に入院する予定だったが、病院へ搬送されるまえ自宅待機中に容態が急変し、亡くなったというのだ。
だが、このような状況下にあるにもかかわらず、吉村洋文府知事の腰は重い。121人もの感染者が確認された22日には「若者が集まってワーワー騒いでつばが飛び交う環境で飲食をしているようなところであったり、ホストクラブ、キャバクラの数が多い」などと若者と「夜の街」を持ち出し、小池百合子都知事でさえおこなった4連休中の移動自粛を呼びかけることもなかった。
このままでは東京都以上に大阪府は大変なことになるのではないか──。そうした見方は強まっており、26日放送の『アッコにおまかせ!』(TBS)でも、和田アキ子までもが「大阪なんて『大阪モデル』って言って抑えていたのに、過去最大になってしまいましたね」と苦言を呈したほどだった。
「コロナ対応でリーダーシップを発揮」「頼れる知事」などともてはやされてきたものの、ここにきて化けの皮が剥がれてきた吉村府知事。いや、そもそも吉村府知事のコロナ対応の象徴ともいえるこの「大阪モデル」こそ、吉村府知事が府民の健康と安全よりも自身の人気を優先させるために運用されてきた、作為的なシロモノにすぎない。
実際、「大阪モデル」は現在までに2回、基準が修正されており、じつは過去の「大阪モデル」に当てはめれば、26日時点ですでに「非常事態」となる「赤」が点灯しているのだ。
現状は本来の「大阪モデル」なら「赤信号」のはずが、吉村知事が一方的に基準を訂正
そもそも、「大阪モデル」は再び休業を要請する際の独自基準として5月5日に吉村府知事が公表。黄色は「府民に対する警戒」呼びかけで、赤色は「非常事態」を意味し、そのモニタリング指標と自粛要請等の基準は1週間の平均値で「感染経路不明者の前週増加比」(1以上)、「感染経路不明者数」(5〜10人以上)、「確定診断検査における陽性率」(7%以上)。この指標のうち1つでも基準を満たせば「黄色」、すべてが基準を超えると「赤色」になるとしていた。
この「大阪モデル」を公表した際、吉村府知事は「初めての取り組みで我々にとってチャレンジ」と述べ、大阪城や通天閣のライトアップにも言及。メディアはこぞって取り上げ、「わかりやすい」「実行力がある」「情報を公開するのは偉い」などと褒めそやし、毎日新聞と社会調査研究センターが5月6日におこなった世論調査では、「新型コロナ対応で最も評価している政治家」として吉村府知事はぶっちぎりのトップに輝いた。
しかし、この吉村府知事を「次期総理候補」と呼ばれるまでのし上げた「大阪モデル」は、唐突に修正される。5月24日には経路不明者の前週比が基準を超えて「黄色」を点灯させなければならないことがわかると、前日の23日に基準を変更すると報道各社に公表。吉村府知事は同日、Twitterに〈①(引用者注:経路不明者の前週比が1倍以上)のみ満たした時は「黄」信号を灯さない運用と致します〉と投稿しただけで、基準変更を説明する記者会見すら開催しなかった。
〈府民の皆様と『見える化』でリスクを共有する〉などと述べてきたくせに、基準を超えることがわかると一方的に基準を変更して、府民に説明もしない──。これには山中伸弥教授も〈結果を見てから基準を決める。科学でこれをすると信頼性が揺らぎます。この報道が本当であれば、大阪府の対策が、科学から政治に移ったことを意味します〉と批判したが、吉村府知事の恣意的な基準変更はこれでは終わらなかった。この基準でも「黄色」が灯りそうになると、7月3日、またも「大阪モデル」の修正を決定。今度は「黄色」が灯りにくくしただけでなく、「赤色」になる基準を「重症者の病床使用率が70%以上」のみとしたのだ。
それでも大阪府の感染急拡大に伴って、12日には「黄色」が点灯し「警戒」段階となったが、旧基準と26日時点の状況を照らし合わせれば、現在は「赤色」、緊急事態を示すものとなっていたのだ。
ようするに、危なくなったら基準を修正するという姑息なやり方がはっきりとしたのが、この「大阪モデル」なのであって、実態のない吉村府知事の「実行力」とやらのハリボテに過ぎないのである。
大外れの「K値」を「注目している」とオーソライズした吉村洋文知事の罪
いや、吉村府知事の「罪」は「大阪モデル」だけではない。それは「K値」の問題だ。
「K値」というのは感染の収束時期を予測する指標で、中野貴志・大阪大学教授が提唱しているものだが、現在の「第2波」についても「7月9日ごろにピークアウトする」(「週刊新潮」7月16日号/新潮社)などと予測。結果はご覧の通り、思い切り外しているわけだが、吉村府知事は5月14日の段階から〈「K値」は僕も注目してる〉〈阪大の中野教授の意見を府の専門家会議で聞く準備に入る〉などと言い出し、実際に6月12日には大阪府の専門家会議に中野教授と宮沢孝幸・京都大学ウイルス・再生医科学研究所准教授をオブザーバーとして参加させた。そして、この席で中野教授と宮沢准教授は「(緊急事態宣言の効果は)極めて限定的。経済を止める必要はない。止めても新型コロナは止まらない」「(感染の)収束は緊急事態宣言後の自粛によるものではないのは明白」と主張した。
こうした主張に対し、吉村府知事は仰々しく天を仰いでみせただけでなく、会議後の会見では“接触8割減”を提唱した西浦博・北海道大学教授の数理モデルについて、「国を挙げて批判的検証をしないと間違った方向に進むんじゃないか」と疑義を呈したのだ。
感染症の専門家でもない中野教授の「K値」は、「自粛に意味はない」という経済活動を最優先したい為政者にとってはおあつらえ向きの指標だ。そこにいち早く飛びつき、あたかもこの指標が正しいかのように喧伝した行為の責任は重い。吉村府知事は最近も「K値もズレてきてますから、K値がズレてきているということは、何らかの新たな発生源ができていると見るべきだと思っています」(17日放送フジテレビ『直撃LIVEグッディ!』)などと述べているが、この期に及んで「K値」などと言っている場合ではないだろう。
現に、大阪府は吉村府知事による「大阪モデル」の修正に次ぐ修正で、危機に対応できるのか不安視されている。現在、大阪府は重症者の病床を188床確保しているというが、26日時点での使用率は5.9%。「赤色」になる基準は「重症者の病床使用率が70%以上」であるため余裕があるように思えるが、大阪府医師会の茂松茂人会長が「このモデルではかなりひどい状況になってから点灯する」(毎日新聞23日付)と述べているように、そこから自粛要請をかけても焼け石に水、手遅れの状況に陥っている可能性が高いのだ。
しかも、このような状況下にありながら、吉村府知事は驚くべきことに「大阪都構想」の実現に邁進。21日には大阪維新の会の全体会議を開き、11月1日の住民投票に向けた運動方針を決定。8月から「賛成」を呼びかける街宣活動や集会などの広報活動をスタートさせるというのだ。
コロナ対応に全力を傾けるべき局面で「都構想」運動を開始する──。「大阪モデル」における「緊急事態」となる「赤色」基準のハードルを手遅れ並に高くしたのは、経済活動の優先もさることながら、この住民投票に向けた広報活動などに批判が集まらないようにするためではないのか。
「コロナ対応でリーダーシップを発揮」などと持ち上げてきたメディアは、いまこそ吉村府知事の対応を検証し、自分たちが無批判に担いできたことを反省すべきだ。
(編集部)
最終更新:2020.07.27 11:29
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