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安倍首相の国会閉会会見に唖然!「桜を見る会」に自分から一切触れず、代わりに「私の手で憲法改正を成し遂げる」と宣言
首相官邸Twitterより
ついに安倍首相が「桜を見る会」問題について満足な説明もしないまま、昨日、臨時国会が閉会した。これで年越しすれば鎮火するという算段なのだろうが、ひどかったのは、臨時国会閉会に合わせた記者会見。なんと、安倍首相は「桜を見る会」問題について自分からは一言も言及しなかったばかりか、嘘っぱちの成果や勇ましい掛け声ばかりを連発したからだ。
まず安倍首相は、冒頭からこんな話をはじめた。
「この国会では、米国との貿易協定が承認されました。攻めるべきは攻め、守るべきは守る。この大きな方針のもと、米国と交渉し、わが国にとって大切なコメについて関税削減の対象から、完全に除外しました」
「牛肉輸出にかかる低関税枠も大きく拡大するなど、まさに国益にかなう結果が得られた」
「日本の自動車に対し、米国は(米通商拡大法)232条に基づく追加関税をかけない。そのことも首脳会談の場で直接トランプ大統領から確認を取りました」
初っ端からよくもまあこれだけ嘘を並べ立てたものだ。まず「コメを関税削減対象から完全に除外した」というが、実際には協定の付属書に「米国は将来の交渉において農産品に対する特恵的な待遇を追求する」と書かれており、今後、再交渉によって市場開放を要求される可能性が十分ある。牛肉にしても、畜産農家に重大な損害を与える輸入増加があった場合に関税を引き上げる緊急措置(セーフガード)の実効性に疑問がついており、TPP以上の影響が出ると懸念されている。極めつけは自動車の追加関税で、これはたんに「トランプ大統領に直接確認した」と言っているだけ。協定付属書には「関税撤廃についてはさらなる交渉の対象となる」としか書かれておらず、とてもじゃないが「追加関税はかけられない」と断言できる話ではけっしてないのだ。
どう考えてもアメリカに「国益を売り渡す」結果であり、国内の農家に大打撃しか与えないのは目に見えている。しかし安倍首相はこうした“売国協定”に胸を張り、その後も勇ましくこう宣言しつづけたのである。
「安全でおいしい食を支えてきた全国津々浦々の農林事業者のみなさんにとって、大きなチャンスです。この機を活かし、海外の新しい市場へのチャレンジを力強く後押しします」
「生産性革命を一気に加速します。そのことによって賃上げの流れをいっそう力強いものとしてまいります」
「少子高齢化の時代にあって、もはや内向きな発想では未来を開くことはできません。自由貿易の旗を高く掲げ、外に向かって果敢にチャレンジする海外の活力を積極的に取り込むことで、持続的な成長軌道をたしかなものとしてまいります」
「大きなチャンス」だの「一気に加速」だの「未来を開く」だの、言葉の勢いだけの中身のないホラ話を、国民はこの男から何回、何十回も聞かされてきた。だが、現実はまったく違う。実際、6日に発表された10月の家計調査では、2人以上世帯の消費支出は27万9671円で、実質では前年同月に比べて5.1%も減少。前回消費増税がおこなわれた2014年4月は4.6%減だったから、それ以上に消費は落ち込んでしまったのだ。
しかし、安倍首相はそうした都合の悪い事実は隠し、オリンピックや万博を持ち出して「令和の時代を迎えた日本も、いまや新しい時代への躍動感にみなぎっています」などと現実離れした話を披露し、最後にはあの話をはじめたのである。そう。憲法改正だ。
「この絶好のタイミングにあって、しっかりと未来を見据えながら、国のかたちにかかわる大胆な改革、大改革に挑戦し、新たな国づくりを力強く進めていく。その先には憲法改正があります。つねにチャレンジャーの気持ちを忘れることなく、国内外の山積する課題に全力で取り組んでいく決意であります」
「桜を見る会」の説明求める声は無視し、「国民の声は、憲法の議論を前に進めよということ」
さらに、その後におこなわれた質疑応答でも、幹事社である日本経済新聞の記者が1問目から改憲について質問。そして、安倍首相はこう口にしたのだ。
「選挙の結果は、国民のみなさまの声は、憲法の議論を前に進めよということだったんだろうと思います」
「最近の世論調査においても、議論をおこなうべきという回答が多数を占めています。国民的関心は、高まりつつあると考えています」
「国会議員として国民的意識の高まりを無視することはできません」
いやいや、憲法改正に国民的関心が高まっているって、どこの世界の話をしているのだろうか。おそらく「最近の世論調査」として持ち出しているのは、御用メディアであるFNN・産経新聞が11月16・17日におこなった世論調査の結果で、「衆参両院の憲法審査会で憲法改正に向けた議論をもっと活発化させるべきだと思うか」という問いに「思う」が73.3%、「思わない」16.2%となっていた。だが、NHKの世論調査(11月8〜10日)では「憲法改正について国会で議論を早く進めるべきか」という問いに「早く進めるべき」と答えたのが33%である一方、「早く進める必要はない」は32%、「議論をする必要はない」は22%となっていた。つまりNHKの調査では、54%が「早く進める必要はない」「議論する必要はない」という回答だったのだ。
むしろ、国民的関心が高まっているのは、憲法改正ではなく「桜を見る会」のほうだろう。実際、NHKが12月6〜8日におこなった世論調査では、「桜を見る会」問題について「安倍総理大臣のこれまでの説明に納得できるか」という問いに「大いに納得できる」と答えたのはわずか2%で、「ある程度納得できる」と回答した人も15%であったのに対し、「あまり納得できない」が30%、「まったく納得できない」が41%となっており、「納得できない」という回答は71%にものぼっている。
国民の多くが安倍首相の説明に納得がいっていないというのに、その当人は丁寧な説明を放棄……。しかも、会見ではこうも宣言したのだ。
「憲法改正はですね、自民党立党以来の党是でありまして。そして選挙でお約束したことを実行していくことが私たちの責任であろう、政治の責任であろうと思います。憲法改正というのはけっしてたやすい道ではありませんが、必ずや私たちの手で、私自身としては私の手で成し遂げていきたい。こう考えています」
私の手で憲法改正を成し遂げたい……って、憲法改正は自民党と首相の専権事項では断じてないのに、何を言っているのか。その上、これは臨時国会の閉会にともなう総理大臣会見だ。総理大臣としておこなっている会見で「自分の手で改憲を」などと述べることは、憲法99条に規定された「憲法尊重擁護義務」違反であり、国民主権と国会を無視した“独裁宣言”ではないか。
質問はあらかじめ決められ、他の記者が手を上げても指名せず! 総理会見は出来レース
しかも、つづいて質問したもうひとつの幹事社であるテレビ東京の記者がようやく「桜を見る会」の質問をおこなったのだが、その答えは「招待者名簿については、内閣府があらかじめ定められた手続きにのっとって適正に廃棄をしている」「データの復元についても不可能」「(ジャパンライフ会長とは)1対1のようなかたちでお会いしたことはない」という、これまでとまったく同じ回答を繰り返しただけ。
だが、問題はこのあとだ。この国民を舐め切った回答に対し、記者から追加で質問が出ることもなく、つづいて指名されたブルームバーグ記者は「日中関係」、次に指名されたNHKの記者は「衆院解散」について、その次のニコニコ動画の記者は「若い世代の投票率の低さ」、そして読売新聞の記者が「自衛隊の中東派遣」を質問し、会見は締めくくられたのだった。
いま、これだけ「桜を見る会」の問題が取り沙汰され、一方で安倍首相はその説明から逃げつづけているのに、それについて厳しく追及する質問が飛ばず、挙げ句、「若い世代の投票率の低さ」などという「いま訊くべき話か?」というような質問が繰り広げられる──。たしかに安倍首相のこうした正式な会見では、回答に関連して追加で質問する「更問い」はおこなわれないのが慣例となっているが、法律で禁じられているわけでもないのだからそんなものは打ち破ればいいだけだ。しかし、そうしたことはついに起こらなかった。
いや、それどころか、安倍首相は記者からの質問に対し、しきりに目を落とし、手元の原稿を読んでいる様子だった。つまり、事前に記者からどんな質問をするのかをあらかじめ聞き出して問答集をつくっていた可能性が高いのだ。
最近の菅義偉官房長官の会見では、朝日や毎日、東京、北海道新聞などの記者が奮闘し、鋭い質問を浴びせているが、一方、安倍首相の昨日の会見は官邸側が選んだ記者にだけ質問させていたのではないか。現に、今朝の毎日新聞デジタル版記事では、会見に参加した取材班が〈我々は一度も指名されずじまいである。思えば、司会の官邸職員、自分が名前を知っている記者しか指名していない〉と“出来レース”疑惑を匂わせ、朝日記者は本日朝刊で〈朝日新聞の記者は手を上げ続けたが指名されなかった〉と書いている。これを「茶番劇」と言わずしてなんと言おうか。
しかも、昨日の会見がおこなわれるとメディア側に正式にアナウンスされたのは夕方だったという情報もある。実際、総理大臣の公式の会見だというのに、記者席はガラガラだった。これは、安倍官邸側が直前に会見実施をアナウンスして、なるべく記者を排除しようとしたのではないのか。そう疑われても仕方がないだろう。
嘘と大言壮語でしかない一方的な演説と、批判が一切出ない質疑応答──。これでは年越しによって「桜」疑惑を幕引きしようとする安倍首相の思うつぼだ。この会見での無責任な態度を、国民はよく目に焼き付けなければならない。
(編集部)
最終更新:2019.12.10 11:54
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