年末特別企画 リテラの2015年振り返り

憲法破壊の犯罪者たちを忘れるな! 安倍政権「安保法制」デタラメ・詭弁ランキング(前編)10位〜6位

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菅義偉ホームページより


 今年2015年の日本は、安保法制の成立によって歴史的な転換期を迎えた。しかしそれはアメリカ主導の安全保障を法案化し、戦争に巻きこまれるのが決定しただけではない。だれがどう見ても憲法に反していることが明白な法案を民主的な手続きも踏まずに数の論理で押し通すという、戦後最大の汚点ともいえる愚行中の愚行を政権が犯した点もけっして忘れてはいけない。

 しかも、安保法制をめぐる国会審議中には、安倍政権の面々からは連日のようにとんでもない言葉が次々と飛び出した。憲法をないがしろにするわ、平気な顔をしてウソをつくわ、悪びれるようすもなくデマは流すわ……と、この国の政治レベルを疑わざるを得ない恐怖の事態が白日のもとに晒された。それはまさに「安倍“恐怖”劇場」と呼ぶにふさわしいものだった。

 ふつうなら、毎日、ワイドショーやニュース番組を賑わせたであろう安倍政権による失言・暴言・珍言の数々。しかしご存じの通り、官邸がマスメディアへ睨みを利かせまくった結果、そうした発言は闇に葬られようとしている。ならば、本サイトが残そうではないか。

 民主主義を殺した安保法制暴言ランキング、まずは10位から6位までを見ていこう。


★ 10位
安倍晋三・総理大臣
「実際、(自衛隊員の)リスクは下がっていくと思います」

(7月8日、ニコニコ生放送『安倍さんがわかりやすくお答えします!平和安全法制のナゼ?ナニ?ドウシテ?』で)

 まずは政権の親玉・安倍首相の「絶対に笑ってはいけない」レベルのこの発言から取り上げよう。なぜ「リスクは下がる」のか。その説明はこうだ。

「今度、わたしたちがつくる法律は恒久法ですから、あらかじめ各国とも連携した情報収集や教育訓練が可能となり、いろんな事態に対応できる訓練が可能になりますから、実際、リスクは下がっていくと思います」

 安保法制の「後方支援」とは、地球上のあらゆる戦闘場所に出かけて行って、もっとも狙われやすい “兵站”を担当する、という危険なもの。それを安倍首相は「訓練さえすれば大丈夫!」と言い張っているのだ。どんなお花畑思考かよ、という話である。

 しかし、どうして安倍首相はこんな楽観的なのか。それは彼の“本音”に理由が隠されている。たとえば5月14日の記者会見で、安倍首相は「自衛隊発足以来、今までにも1800名の方々が、様々な任務等で殉職をされております」「自衛隊員は自ら志願し、危険を顧みず、職務を完遂することを宣誓したプロフェッショナルとして、誇りをもって仕事にあたっています」と言っている。

 1800名の殉職者というのは災害救助や訓練中に亡くなった人びとの数で、戦闘で亡くなった人はひとりもいない。こうしたごまかし、議論のスリカエの詐術も醜いが、この「自衛隊員だったら死ぬのは覚悟の上」と言わんばかりの主張こそが安倍首相の本音だ。現に、すでに自衛隊は隊員全員に“戦死”を前提とした「秘密のカード」を配布して記入を命令したり(過去記事)、棺桶や遺体処理班の準備さえはじめている(過去記事)。安保法制によって戦死者が出たとき、安倍首相はきっとこう言うだろう。「国を守るために犠牲となった尊い命を無駄にはしていけない。もっと武力を強化させましょう」と。

 そういう意味では「リスクは下がる」発言は悪質極まりないが、あまりにバカバカしすぎてさすがにだれも信じてはいないと思うので10位という結果となった。まさか「リスクは下がるに決まってるだろ!」なんて本気で信じている人……いませんよね?


★ 9位
佐藤正久(ヒゲの隊長)・自民党参院議員
「テレビ朝日は徴兵制に前向きなのか?」

(7月17日、テレビ朝日『モーニングバード』出演後にTwitterで)

 元陸上自衛官で2004年のイラク派遣では第一次復興業務支援隊長を務めた経験を持つ“ヒゲの隊長”こと佐藤正久参院議員。イラク派兵を知る自衛官OBという経歴を見込んで自民党は安保法制のPRアニメ動画『教えて!ヒゲの隊長』の主人公(?)にも抜擢したが、結果はパロディ版の『ヒゲの隊長に教えてあげてみた』によってコテンパンに説明のウソを暴かれ、挙げ句、再生回数も抜かれるという目も当てられない事態に。しかも当の本人は〈佐藤も思わず吹いた〉〈なかなかよく出来ている〉などとつぶやく始末で、「この人、大丈夫なんだろうか……」と心配になってしまう相当な天然っぷりを見せつけた。

 なかでも脱力させられたのが、この一言。『モーニングバード』(テレビ朝日)に生出演し、PR動画よろしく安保法制について安倍政権の言い分を垂れ流したのだが、コメンテーターの玉川徹と長嶋一茂から詰問を受ける結果に。ヒゲの隊長は「日本国民は憲法で守られているので徴兵されることは全体にありえない」と断言したが、逆に一茂から“国民は集団的自衛権と憲法が相反すると思っているのでは?”“女性たちがこの法案を心配しているのは、徴兵制の可能性を否定できないからでは?”などとメッタ斬りにされてしまったのだ。そして番組が終わると、「テレ朝は徴兵制に前向きなのか?」と負け犬の遠吠えのようにツイート。……いやいや、単純に国民の不安をぶつけただけなんですけど。っていうか、これぞ安倍首相の決め台詞「レッテル貼り」なのでは?

 ヒゲはその後も安保法制の強行採決時、意気軒昂にパンチを繰り出し、ついにはこの瞬間の写真が米・CNNの報道写真展で2015年を代表する1枚のひとつに選ばれてしまった。国辱ってこういうことだと思いますけど、この人、わかっていないんだろうなあ……。


★ 8位
菅義偉・官房長官
「私は全共闘世代だが当時はこんなもんじゃなかった」

(7月16日、官房長官記者会見で)

 記者会見で「国会周辺では若い人たちが反対の声をあげているが」と訊かれて、菅官房長官の返事がコレ。どう考えても菅サンが国会前でスクラム組んでたとは到底思えないんですけど、実際に現場に行って見たこと、ほんとうにあるのだろうか。というより、今年の国会前のデモだってちゃんとその目で見た上で言っているのだろうか。

 しかし、反対派デモを矮小化しようとしたのは、菅官房長官だけではない。たとえば「法的安定性は関係ない」発言で一躍有名になった礒崎陽輔首相補佐官(当時)も、7月15日の大規模デモを「5千人未満ということだそうです。道路にあふれない限り、そんなに多くの人がいる場はありません」とツイート。実際は道路に人があふれ返り、警察の厳重な「道路にあふれさせない」警備によって押し合いへし合いの危険な状況だったのだが……。

 そもそもなぜ大規模なデモが起こったかといえば、自分たちが憲法をないがしろにしたり、一向に満足な説明もしなかったからなのだが、菅官房長官をはじめ安倍政権の面々はそのことを無視しつづけた。しかも、世論調査などで無視しきれないまでに反対の声が高まると、菅官房長官は「(反対派は)一部野党やマスコミから洗脳されている」とまで言い出した(8月22日に開かれた弘前市での講演での発言)。

 支持が得られないと「洗脳されている」と決め付ける、この鉄面皮ぶり。今年は映画監督である想田和弘氏が、botと化した菅官房長官の常套句を使えばネトウヨさえ戦闘意欲を欠かせてしまうというユニークな実験も話題を集めたが(過去記事)、まさに菅官房長官は政権を支える“安倍ロボット”なのだろう。

★ 7位

菅義偉・官房長官

「まったく違憲でないと言う著名な憲法学者もたくさんいらっしゃいますから」

(6月4日、官房長官記者会見で)

 そんな“安倍ロボット”が放った言葉のなかで、botで対応できず、絞り出された苦肉の一言がこの発言だ。自民党が国会に招致した長谷部恭男・早稲田大学法学学術院教授のみならず、呼ばれた3人の憲法学者全員が「安保法案は違憲」と述べたことで窮地に立たされた菅官房長官の口からついて出たのが、この壮大なウソだった。

「たくさんいらっしゃる」と言ってみたはいいものの、「じゃあ誰がいるの?」とツッコまれ、菅官房長官がひり出したのは「たとえば、百地(章・日本大学教授)先生、長尾(一紘・中央大学名誉教授)先生、西(修・駒沢大学名誉教授)先生がいます」(6月10日)という答え。たったの3人しか出てこなかったのだ(しかも全員が揃いも揃って安倍首相応援団メンバーのオール身内というオチ付きで)。

 さらに見苦しかったのは、そのあと。「全然たくさんじゃないじゃん!」と反撃を喰らうと、平然と「私は数じゃないと思いますよ」。人数の話を持ち出したのは自分なのに、人数は問題じゃないと言い出す……。ロボットでなければできそうもない芸当である。

 だが、話はこれで終わらない。追い詰められまくった菅官房長官、最後は「合憲か違憲かは最高裁が決める」と、壮大に議論を放り投げたのだ。だ・か・ら、この話の言い出しっぺ、あなたなんですけどお忘れになって?


★ 6位
高村正彦・自民党副総裁
「憲法学者の言う通りにしていたら日本の平和と安全が保たれたか」

(6月9日、自民党役員連絡会で)

「たいていの憲法学者より私の方が考えてきたという自信はある」

(6月11日、朝日新聞の取材に)

 菅官房長官が安倍政権のロボットなら、この人は政権イチの図太い鋼鉄男と呼ぶべきか。それほどに高村発言からは不遜という言葉がピッタリの思い上がり臭がプンプンと漂っていた。「憲法学者より考えてきた」って、一介の弁護士上がりの政治家なだけなのに、そこまで胸を張れる自信の根拠がさっぱりわからない。“オレ様こそ法律家の頂点、オレ様こそ正解”ってか?

 だいたい、高村副総裁も安倍首相と同様に砂川判決を合憲の根拠にしてきたが、それ自体が過去の自分の発言と論理矛盾を起こしていた。なにせこの人、1999年の国会答弁では「集団的自衛権の行使は我が国の憲法上、許されない」と断言していたのだから。

 高村副総裁自らが明言しているように、現在の安倍政権は「プチ独裁」状態だ(過去記事)。少数派閥から“安倍独裁体制”に丸乗りして生き残ってきた高村氏にとっては、プチ独裁のなかではそうやって過去の発言もなかったことにしなくてはならないのだろうが、「日本の平和と安全」のためには憲法はないがしろにしてもいい、なんてことがまかり通るなど絶対に許されない。なのに、この法治国家の意味さえ知らない人物が法律家を名乗ってデカい顔をする政権って……。「世も末」とはこのことである。

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 駆け足で10〜6位までお届けしたが、もうすでにどっとお疲れの読者も多いことだろう。しかし、5〜1位はこの比ではない暴言が次々にランクインしている。どうか後編も、心してお付き合いいただきたい。
(編集部)

最終更新:2016.03.04 04:24

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