安倍首相が安保の次は「改憲を争点にする」と宣言! 自民党が目論む「緊急事態条項の新設」は9条改正よりヤバい

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 印刷

 緊急事態条項の“狙い”がこれでおわかりいただけただろう。「災害が起こったらすばやく対応できるよ!」という触れ込みは、結局、緊急事態条項の本質を隠すカモフラージュ。この条項を憲法に加える真の目的は、明治憲法下の戒厳令の復活であり、緊急事態を口実にした国民の権利の抑制であり、言うことを聞かない地方を国に従わせるということなのだ。

 緊急事態条項の根拠とされる「国家緊急権」は、歴史的にもさまざまな議論がされてきた。こうした権限が国家の権利として認められるか否かが19世紀半ばから20世紀初めにかけてのドイツで盛んに論じられた。国家権力を憲法の拘束の下に置くことを目的とした近代立憲主義のもとで、これが許されるかどうかという議論である。国家緊急権の問題点は、まず第一に、政府が緊急事態の宣言が正当化されないような場合でも宣言を行う傾向があること。第二は、緊急事態の危機が去った後も緊急事態措置を延長しがちであること。そして第三は、政府が緊急事態に対処するため、一般市民の人権を過度に制限しやすく、さらに裁判所も政府の判断を尊重して市民の権利を抑制する傾向がある、ことなどが指摘された。

 本来は緊急事態から国民と国家を守る規定であるにもかかわらず、緊急避難的措置として独裁を許容しかねない危険がある。1919年のドイツで制定されたワイマール憲法(第48条)では、公共の安全・秩序に重大な障害が生じた場合、または「その恐れがあるとき」、大統領は武力兵力を用いて緊急措置を取ることができ、この目的のためには、人身の自由、住居の不可侵、親書・郵便・電信電話の秘密、意見表明の自由等の7か条の基本権の全部または一部を一時的に停止しうるとしていた。この規定が乱用され、後のナチス支配への道を開くことになったことは、歴史が教えてくれている。世界各地で見られるクーデター後の軍事独裁政権が主張するのも、この国家緊急権だ。

 自民党憲法改正推進本部で起草委員である西田昌司・自民党副幹事長は、『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日)に出演した際、「そもそも国民に主権があることがおかしい」などと発言している。こんな議員たちが押し進める憲法改正案が、人びとの安全を第一に考えているなどとは到底思えない。自民党のマンガの「大地震が起きたときに被災地に一刻も早くお金を送るため」などというペテンに、くれぐれも引っかからないよう気をつけなければいけない。
(野尻民夫)

最終更新:2015.09.26 07:35

「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。

この記事に関する本・雑誌

安倍「壊憲」を撃つ (平凡社新書)

新着芸能・エンタメスキャンダルビジネス社会カルチャーくらし

安倍首相が安保の次は「改憲を争点にする」と宣言! 自民党が目論む「緊急事態条項の新設」は9条改正よりヤバいのページです。LITERA政治マスコミジャーナリズムオピニオン社会問題芸能(エンタメ)スキャンダルカルチャーなど社会で話題のニュースを本や雑誌から掘り起こすサイトです。憲法自民党野尻民夫の記事ならリテラへ。

人気記事ランキング

1 小林製薬「紅麹」で問題視される「機能性表示食品制度」は安倍案件!
2 櫻井よしこの朝日攻撃の「捏造」が法廷で
3 東山紀之が“反ヘイト本”を出版
4 乙武洋匡が不倫旅行、5人の女性と関係
5 安倍派裏金で読売新聞「非公認以上の重い処分」報道の違和感!
6 久米宏が終了決定のTBSラジオで田中真紀子と
7 セカオワFukaseのいじめ発言
8 葵つかさが「松潤とは終わった」と
9 安倍政権御用ジャーナリスト大賞(前編)
10 コロナ収束前の「Go To」予算1兆7千億円計上に非難殺到も田崎史郎は…
11 東山紀之、朝鮮学校無償化に言及
12 五輪延期で発覚!安倍のお友だち「アパホテル」に組織委用の部屋
13 石田純一がコロナバッシングで「組織に狙われている」と語った理由!
14 御用新聞・産経が安倍首相に食い下がった毎日記者を攻撃する露骨ぶり
15 安倍は辞任報道でもお友達優遇! 前回のTBS時代の山口敬之が
16 世界的建築家の「カジノありきの万博」批判に大阪市長が大ウソ反論
17 小泉進次郎が「靖国参拝」したのは父親と同じ右派支持狙いの戦略か
18 総裁選で自民党がまた新聞社に圧力文書!
19 松本人志『ドキュメンタル』のセクハラ
20 和泉・大坪の安倍側近“不倫コンビ”の新疑惑を政府機関の理事長が告発

カテゴリ別ランキング

マガジン9

人気連載

アベを倒したい!

アベを倒したい!

室井佑月

ブラ弁は見た!

ブラ弁は見た!

ブラック企業被害対策弁護団

ニッポン抑圧と腐敗の現場

ニッポン抑圧と腐敗の現場

横田 一

メディア定点観測

メディア定点観測

編集部

ネット右翼の15年

ネット右翼の15年

野間易通

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

赤井 歪

政治からテレビを守れ!

政治からテレビを守れ!

水島宏明

「売れてる本」の取扱説明書

「売れてる本」の取扱説明書

武田砂鉄