なぜオシャレ業界にブラック企業がはびこるのか? 若者を我慢させる「虐待型管理」

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「入社後には『昇進』や『評価』を巡って、契約書には書いていない『業績』が求められる。もちろん、こうした評価制度はどの会社にも存在しているが、その求められる要求があまりにも過剰で際限がなく、予測不可能なのがブラック企業である」
「次々と無理な目標を設定されてしまうことで、仕事内容が無限大に拡大していってしまい、『もともと入社したときの契約』が実質的に無効になってしまうのだ。(略)入社後に、いったいどんな“無茶ぶり”がされるのかは、やはり『ブラックボックス』なのである」(同書より)

「昇進できる」「成功できる」という若者の期待と向上心に付け込むのだ。大きな反響を生んだ「たかの友梨」の事件はその典型だ。「不二ビューティ」が経営するエステ・サロン、『たかの友梨ビューティクリニック』はエステ業界のパイオニアであり、全国120店舗以上を展開し、1000人を超える社員を抱えていた(その9割以上は女性だ)。エステ業界の中では「技術のたかの」と呼ばれ、技術力・育成力に定評があるはずだった。

「たかの友梨では、新人は先輩と一緒に練習の計画を立てて、技術を覚えていくことになっている。練習は新人が“自主的”に先輩にお願いするものだとされていて、練習の度に先輩に『お礼メール』をすることが決まりとされている。こうした“自主練習”に対しては、一切残業代が支払われていなかった」「朝7時半に来てエステの練習をし、10~20時まで通常営業。終わったらまた練習はザラで体調を崩して倒れる子も」いたという(同書より)。

 練習は会社の業務上の必要性から行われていることから、法的には残業代の支払い義務が生じる。

「ところが同社では、『先輩が面倒を見てくれている』『自分はまだ何もできないのだから、一人前になるまでは仕方がない』という理屈が労働者に浸透しており、残業代が支払われていなかった」(同書より)

 しかも、「一人前」になっても、「無限の要求」はとまらない。

「『たかの友梨』では、社員に対し積極的に店長やその上の役職を目指すことを勧めている。同社では、役職のないエステティシャンに始まり、店長、マネージャー、ディレクターなどと呼ばれるステップアップのランクがある。ベテランや中堅のスタッフに限らず、入社してから1年も経っていない新人に対しても、『いつまでも店長になることを目指すの?』などと上司が尋ねてくるという。(略)ステップアップを目指さない社員に対して、社内にプレッシャーがあったと感じている」(同書より)
「店長になると、通常に輪をかけてプライベートを犠牲にすることが必要になり、休日も予約が入ったらシフトを変更して常に出勤できるようにしているというケースが多い。出社しない日は月に1、2回といった店長もいる。こうした長時間労働と出世プレッシャーは、結婚・妊娠・出産・育児という女性の多くが通る道と矛盾している。(略)ブラック企業の『無限の要求』は生活を蝕み、本人のみならず、社会が必要とする出産の機会さえ奪うのだ」(同書より)

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