「売れてる本」の取扱説明書①『日本の大和言葉を美しく話す』(高橋こうじ)

「乱れた日本語を取り戻す!」に潜む排他性 「大和言葉」本ブームを考える

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 印刷
yamatokotoba_01_150409.jpg
『日本の大和言葉を美しく話す こころが通じる和の表現』(東邦出版)

「最近の売れている本にはろくなものがない」と読みもせずに片付けるのではなく、ひとまずじっくり熟読してから物を言おうと心がけるこの新連載。第1回目は、関連書籍も多く刊行されている「大和言葉」本について考察していく。

 制作費を安く抑えたいクイズ番組では「正しい日本語はどれ?」という類いの問いが長年重宝されているが、書籍についても同様。「出版指標年報」の売り上げベスト10を見渡すだけでも、齋藤孝『声に出して読みたい日本語』(2002年)、北原保雄『問題な日本語』(2005年)、出口宗和『読めそうで読めない間違いやすい漢字』(2009年)と、定期的に日本語ネタが並んでいる。

 意地悪な言い方をすれば、正しい日本語というのはこうして常に問われている以上、常に改善していかないものである、とも言える。三浦しをん『舟を編む』やNHKドキュメンタリー『ケンボー先生と山田先生 辞書に人生を捧げた二人の男』等で話題になった辞書編集者の地道な世界が教えてくれたのは、彼らが、言葉をいかに伝承するかと同時に、新たな用例をいかにして採集し、どこまで辞書に取り込むか、日々葛藤を繰り返していたこと。彼らの言葉への執着は、決して「最近の日本語」を問題視することを起点にしているわけではなかった。むしろ、未来志向で言葉に接しているように見えた。

「『的を得る』は誤用で、『的を射る』が正しい日本語である」は、「正しい日本語」雑学のテッパンネタだが、2013年に出た『三省堂国語辞典 第七版』では「的を得る」が採録されているという(ブログ「BIFFの亜空間要塞」参照)。「的を得る」は以前の同辞典には採録されていたが、版を改める段階で編纂者が「誤用である」と掲載を取り下げたことで、「間違いやすい日本語」としてしばしば取り上げられるようになった。しかし、最新の版ではこの用法が戻った、というわけ。決して世間のはやり廃りに流されたわけではないだろうが、少なくとも日本語とは、こうして時代に即した流動性を持つものなのだ。

 中国から取り入れた漢語でも外来語でもなく、「太古の昔に私たちの先祖が創り出した日本固有の言葉」である大和言葉。この言葉の美しさを生活に取り込み直そうと教え諭す高橋こうじ『日本の大和言葉を美しく話す』が評判を呼んでいる。著者は「造形能力に富む漢語や一見おしゃれな外来語に押されて、長く愛され、用いられてきた美しい大和言葉があまり使われない」と嘆きつつ、大和言葉を「日本人自身が育んできた知的で優雅な余韻を残す言葉づかい」であり「『心に染みる』特性があります」と規定する。

「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。

この記事に関する本・雑誌

「昔はよかった」と言うけれど: 戦前のマナー・モラルから考える

新着芸能・エンタメスキャンダルマンガ・アニメビジネス社会カルチャーくらし教養

「乱れた日本語を取り戻す!」に潜む排他性 「大和言葉」本ブームを考えるのページです。LITERA政治マスコミジャーナリズムオピニオン社会問題芸能(エンタメ)スキャンダルカルチャーなど社会で話題のニュースを本や雑誌から掘り起こすサイトです。「売れてる本」の取扱説明書武田砂鉄の記事ならリテラへ。

人気記事ランキング

総合
いいね! 数
1 茂木人づくり相の公選法違反に新証拠
2 安倍政権が福井国体を戦前賛美に利用
3 ナチス礼賛、高須院長がまた訴訟恫喝!
4 加計学園獣医学部施設の設計図疑惑
5 ネトウヨ高須院長に息子が苦言!
6 高校生平和大使の演説中止と安倍政権
7 三浦瑠麗が戦前賛美、その御用学者体質
8 葵つかさが「松潤とは終わった」と
9 ローラが所属プロに奴隷契約の終了を
10 長渕剛が安倍政権を批判する新曲を発表
11 吉永小百合が「9条は変えさせない」
12 Nスペ731部隊検証にネトウヨ錯乱!
13 ウーマン村本こそ“最強反戦芸人”だ!
14 松本人志追及に井上公造が「圧力ない」
15 『永遠の0』は恐い!元特攻要員が批判
16 高橋洋一ら安倍応援団が特区ビジネス
17 日本の外務省が文大統領と同様の発言
18 欅坂46平手欠席の背景にブラック労働
19 トランプ差別発言に有本香と玉川徹が
20 「不倫学」が教える防止策とは?
1ウーマン村本こそ“最強反戦芸人”だ!
2 Nスペ731部隊検証にネトウヨ錯乱!
3久米宏、さんま、村本も東京五輪批判
4綾瀬はるかが毒ガス製造の元兵士を取材
5テレ朝が萩生田に全面謝罪した背景
6三浦瑠麗が戦前賛美、その御用学者体質
7高橋洋一ら安倍応援団が特区ビジネス
8市原悦子が語る戦争と安倍政権への怒り
9長崎のメッセージも安倍には届かず!
10 高校生平和大使の演説中止と安倍政権
11グアム北ミサイルは存立危機事態でない
12トランプ的どっちもどっち論横行の日本
13仲代達矢と桂歌丸が語った戦争体験
14寂聴「憲法を汚した安倍は世界の恥」
15手塚治虫が描いた戦争をいま読み直す
16閉会中審査、小野寺防衛相も隠蔽体質
17 ナチス礼賛、高須院長がまた訴訟恫喝!
18加計学園獣医学部施設の設計図疑惑
19幹部から新人までほとんどが商売右翼
20安倍政権が福井国体を戦前賛美に利用
PR
PR 飲むだけで女性のカラダの悩みを解消!?

人気連載

アベを倒したい!

室井佑月

室井佑月が斎藤貴男と「共謀罪」を徹底批判!「安倍政権に逆らう人が片っ端から逮捕される」

アベを倒したい!

「売れてる本」の取扱説明書

武田砂鉄

"体育会系相田みつを"松岡修造は本当に「ブレない男」なのか? 年を追うごとに変わっていく修造語録を読み解く

「売れてる本」の取扱説明書

ネット右翼の15年

野間易通

高市早苗はいかにして"ネオナチ"と出会ったか

ネット右翼の15年

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

赤井 歪

戦争を放棄せよ! 軍事力がなくても侵略と闘う方法はある、自由のために闘える!

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」