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『報ステ』は死ぬのか? リベラルな小川彩佳を降板させ、安倍応援団・野村修也弁護士が新コメンテーター就任の情報が
テレビ朝日『報道ステーション』HPより
9月28日の放送をもって、『報道ステーション』(テレビ朝日)から、サブキャスターの小川彩佳アナウンサーが降板した。古舘伊知郎時代より7年以上にわたって番組の顔となってきた小川アナだが、放送最後の挨拶では、言葉に詰まる場面があった。
「2011年の東日本大震災があった直後の4月から、サブキャスターを担当させていただいてまいりました。ほんとうに、無力感に苛まれることばかりで、ですね、あの、もうだめだ……」
小川アナは目に浮かぶ涙をぬぐい、もう一度正面を向き直して、こう続けた。
「意味のある言葉を、紡ぐことの難しさということを、痛感する日々だったんですけども、それでも、一人でも多くのかたの心に届く言葉をと、模索し続けてこられたのは、ほんとうにひとえに、取材先で出会ったみなさまの暖かさだったりですとか、番組をご覧くださったみなさまの叱咤激励の声、あればこそです」
小川アナといえば、社会問題に強い関心を持ち、政権の不正や問題が発覚すれば、臆することなく批判的な発言で踏み込むなど、これまで『報道ステーション』のリベラル路線を支えてきた。
たとえば、昨年2017年の総選挙前に安倍首相が『報ステ』に出演したときには、自分勝手な話を延々垂れ流す安倍首相に、MCの富川悠太アナらがせめあぐねるなか、「先日の国連での総理の演説を聞いていましても、対話ではなく圧力ですとか、トランプ大統領と歩調も口調もひとつにするような言葉が相次ぎました。逆に危機を煽ってしまうのではないか、危機を招いてしまうのではないかという不安を覚える方も多いと思いますが」と突っ込み、安倍首相を憮然とさせた。
ほかにも、安倍政権が拒否している核兵器禁止条約や、テレ朝女性記者のセクハラ被害問題、2016年の相模原障害者施設殺傷事件でも存在感を発揮し、一貫して弱者の立場に立った解説や取材を行ってきた。
その小川アナが最後に吐露した「無力感」とは、なんだったのだろうか。28日夜に更新した番組のブログでは、東日本大震災の2011年が自分の原点としたうえで、このように綴っている。
〈でも、無力感に苛まれることは少なくなく。
言葉を飲み込んだ日は、もっと発信できたことがあったのではないかと悩み、
言葉を発すれば、より意義のある一言があったのではとこれまた悩み、
不用意に繰り出した言葉に不意に傷ついている人はいないかと不安を覚え、
試行錯誤は尽きませんでした。〉
「無力感に苛まれる」「言葉を飲み込んだ」という表現からは、本当はもっと踏み込んだ発言をしたかったのに、それができなかったという無念が滲む。周知のとおり『報道ステーション』は、古賀茂明「I am not ABE」事件に代表されるように、安倍官邸や自民党から強い圧力を仕掛けられてきた。そのなかで小川アナに対しても、陰に陽にプレッシャーがかけられていたことは想像に難くない。
そして、本サイトでもレポートしてきたとおり、古舘伊知郎が降板して2年が経った今年7月には、テレ朝の上層部の覚えがめでたく、同局で『グッド!モーニング』を担当してきた桐永洋氏が新プロデューサーに就任。氏の就任以降、『報ステ』は赤坂自民亭問題や杉田水脈問題をスルーするなど、政権批判的な報道が露骨に減少し、あたりさわりのないスポーツニュースなどに力を入れ始めた。
リベラルな報道姿勢を支え続けてきた小川アナの降板は、そうした『報ステ』の“変節”を象徴していると言えるわけだが、そんななか、10月1日からリニューアルする同番組をめぐって、またひとつ、安倍政権への“忖度人事”の実態が浮上してきた。
安倍応援団・野村修也弁護士が『報ステ』新コメンテーターに就任との情報が!
明日発売の月刊情報誌「ZAITEN」(財界展望新社)11月号が、「テレビ朝日“二人の洋”で『報ステ』自壊」と題し、『報ステ』変節の裏側を5ページにわたってレポートしている。
「二人の洋」とは、もちろん“テレ朝のドン”早河洋会長と、桐永洋プロデューサーのことだ。記事は、桐永氏の経歴や、そのスタジオ演出重視の方針が現場に与えている弊害、そして、スタッフ人事に関する早河会長の意向などを暴露するものだが、なかでも驚きなのが、金曜日の新コメンテーターに、あの野村修也弁護士を起用するとの情報をすっぱ抜いていることだ。
野村弁護士といえば、これまで金融庁顧問や総務省顧問、厚労省顧問、司法試験考査委員、福島原発事故調査委員会委員など数々の政府機関の公職に就任。『情報ライブ ミヤネ屋』(読売テレビ)など、多くのワイドショーや情報番組にコメンテーターとして出演しているが、その主張は安倍政権や大阪維新の会を擁護・応援する主張が目立つ。
さらに、本サイトでも報じたように、野村氏は今年7月、所属する第二東京弁護士会から基本的人権の侵害等を認定されたうえで、懲戒処分まで下されている。
この処分は、野村氏が大阪市特別顧問時代の2012年2月、当時の橋下徹市長の指示で、市職員へ労働組合に関するアンケート調査を実施したことに関するもの。このアンケート調査は組合活動への参加の有無や加入、非加入による影響などの回答を強制する「思想調査」で、憲法で保障された思想信条の自由を侵害する大問題となり、所属弁護士会に対して懲戒請求がなされていた。
そして今年7月17日、第二東京弁護士会は、野村氏が大阪市特別顧問時代に行ったアンケートの複数の項目について、職員の政治活動の自由や団結権、プライバシー権などの基本的人権の侵害、労働組合法に違反する内容と認定。弁護士の「品位を失うべき非行」にあたるとして、業務停止1カ月の懲戒処分が下されたのである。
「ZAITEN」が『報ステ』変節と崩壊の内情を暴露!テレ朝・早河会長と桐永Pが…
これまで、憲法学者の木村草太氏や近代思想史学者の中島岳志氏、”I am not ABE"で降板に追い込まれた古賀茂明氏など、政権批判をも厭わない骨太のコメンテーターを起用してきた『報ステ』が、権力者側に立った発言を繰り返し、人権侵害まで認定された人物を堂々とコメンテーターに据えるということ自体が驚愕だ。
「ZAITEN」によれば、桐永プロデューサーは「アベ友なんて書かれるのは迷惑千万」などとスタッフの前で嘯いているらしいが、これを“安倍官邸忖度人事”と言わずしてなんと言うのか。テレ朝は野村氏の起用について、処分期間中のコメンテーター起用の発表はタイミングが悪いとのことで先送りしているというが、一方、『報ステ』の内部ではすでに起用が発表されたとの情報もある。
いずれにせよ、野村弁護士の起用は、早河会長の意向を受けた桐永プロデューサー体制下、で『報ステ』が“政権御用化”していくことの決定的な兆候だろう。
政権に批判的な報道がどんどん下火になり、エンタメ路線に傾斜していく『報道ステーション』。このままでは、本当に「報ステは死んだ」と言わざるを得ない日がやってくるかもしれない。10月1日からの「リニューアル」を注視する必要がある。
(編集部)
最終更新:2018.09.30 01:14
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