大阪“感染者100人超”も吉村知事と松井市長は「東京で都議選の応援」へ! 批判されたとたん“東京での公務”を持ち出す姑息

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吉村洋文(大阪府知事)Twitterより


 新型コロナの“第5波”がはじまった。東京都では昨日6月30日の新規感染者数がついに700人を突破、大阪府も本日7月1日の新規感染者数が108人となり、3日連続で100人を超えた。7日間平均で見ても前週比で1.01倍と増加傾向にある(6月30日時点)。

 周知のとおり、大阪は変異株の脅威を甘く見た吉村洋文知事が2月に緊急事態宣言を前倒し解除の要請をおこない、解除後は一気に感染が拡大。第4波の最中に医療を受けられないまま自宅で亡くなった患者は19人にも及び、累計死者数も全国最多の2671人となっている(6月30日時点)。悲惨な医療崩壊を招いた第4波の反省があれば、当然、現在の大阪の感染状況は最警戒をすべき局面にあるのは疑いようもない。

 ところが、そんななかで吉村知事から、耳を疑うような発言が飛び出した。なんと、7月4日投開票の東京都議会議員選挙の応援のため、大阪を離れて来京すると6月29日の囲み取材で宣言したのだ。

「あのー、応援に入ろうと思ってます。行けるとしても週末の、今週末になる。平日はやはり公務があってなかなか難しいですから、いずれにしろ週末になると思います」
「おそらく土曜日に応援に入ることになるだろうと思います」

 さらに驚くべきことに、同じ6月29日におこなわれた松井一郎・大阪市長の囲み取材では、松井市長もこう発言した。

「要請もありますから、週末に一度応援に入りたいと思います。ま、いろいろコロナの関係もありますけども、選挙というのは不要不急の行事ではありませんし、民主主義の根幹ですんで、各党とも総力戦の選挙やってるなかで、他党の幹部のみなさんも東京でまあ自分たちの支援する候補者をしっかり支えているなかでね、我々はちょっと……僕も日本維新の会の代表ですから、そんななかで候補者それぞれががんばっているところで、その要請にはなんとか応えたいと思っています」

 つまり、吉村知事と松井市長はふたり揃って今週末、都議会選に立候補している日本維新の会の公認候補の応援のために大阪を離れる、と言うのである。

 開いた口が塞がらない。吉村知事も松井市長も、首長として府民・市民に対して「不要不急の外出自粛」「不要不急の都道府県間移動、特に緊急事態措置区域との往来は、極力控える」よう求めている真っ最中だ。にもかかわらず、自分たちは府外へ移動する、と言うのだ。しかも、現在の東京は「すれ違っただけで感染」とも言われているデルタ株が急拡大中で、新規感染者数は緊急事態宣言を発出する目安であるステージ4相当にあるというのに、である。

 松井市長は「選挙は不要不急の行事ではない」「民主主義の根幹」などと主張したが、自分が被選挙人や選挙人だったらまだしも、松井市長は日本維新の会の党代表、吉村知事は党副代表でしかない。しかも、もっとも重要なのは、松井・吉村両氏は党の要職者である前に大阪の首長である、ということだ。感染拡大防止を先頭に立って呼びかける立場にありながら、党勢拡大という私利私欲のためにふたり揃って大阪を離れるなど言語道断、もってのほかだ。

 もちろん、この都議会選応援のための東京行きにはネット上で批判が起こっていたのだが、すると、本日7月1日の囲み取材で、吉村知事はさらに信じられないことを言い出したのだ。

都議選の応援を批判されたとたんに持ち出した菅首相、河野大臣へのワクチン陳情公務

 本日の囲み取材で吉村知事は、国からのワクチン供給が滞っていることから都市部優先で供給するよう政府に要望すると発言。明日2日に菅義偉首相や河野太郎・ワクチン担当相と面会して要望するという。つまり、公務外である選挙応援目的の東京行きに批判が起こると、今度は「公務」を理由にして東京に行く、と言い出したのだ。

 当たり前だが、現在の感染状況を考えればリモートで訴えるべき話で、わざわざ東京に行く必要などない。しかも、記者から本日告示された兵庫県知事選の応援に入る日程について尋ねられた際には、吉村知事はこう述べた。

「ちょっといまから、まず公務があるんで東京行きますので、きょう夕方から入りますから、あの……戻ってくるのが土曜日の夜です。それ以降になると思いますけど、できるだけ早く兵庫の応援に入りたいと思います」

 明日2日に面会があるなら、面会が終わってすぐ大阪に戻ってこられるはずだ。なのに、戻ってくるのは3日の土曜日の夜。ようするに、当初の予定どおり3日には東京で維新候補者の応援をし、それから戻ってくるということだろう。

 大阪府民を欺き、「公務」などという言い訳を持ち出してまでルール破りの東京行きを決行する──。絶句する酷さだが、しかし、この「府民・市民の命を守ることより自己利益を優先させる」という姿勢こそが、維新の正体なのだ。

 実際、吉村知事は新規感染者数が600人を超えて右肩上がりとなっていた今年4月初旬にも、宝塚市長選の応援や富山市長選立候補者のトークイベントに参加しようとしていた。当然、これらには批判の声があがり中止となったが、コロナ対応そっちのけで他県の選挙活動をしようとしていたのである。

 また、2018年9月に大阪を直撃した台風21号では府・市ともに災害対策本部を設けず、家屋倒壊や冠水、停電や倒木被害などの被害が出ていたにもかかわらず同月7・8日には当時府知事だった松井氏は対応を放り出して沖縄県知事選の自公候補を応援するために沖縄入り。さらに翌9日からは万博開催地投票対策と称してイタリア、デンマーク、ハンガリーの3カ国を回る海外出張に出かけてしまった。

 そして、もっとも象徴的なのは、感染者数がやはり拡大傾向に入っていた最中に強行された昨年11月の「都構想」住民投票だ。吉村知事は第1波のときから「うがい薬でコロナに打ち勝てる」だの「大阪ワクチン」だの“やってる感”アピールばかりでロクな対策を取ってこなかったが、第1波が過ぎ去ると都構想住民投票にかまけ、まともな対策を打たなかった。その結果、都構想の住民投票がおこなわれた11月1日に大阪は東京を上回る123人もの新規感染者数となり、翌12月には自前の医療体制で対処することができず、自衛隊の派遣を要請せざるをえない状況に追い込まれたのである。

 この、府民・市民の命の安全よりも「都構想」を優先させて住民投票を強行した背景にあったのは、吉村人気が高いなかで投票をおこなえば賛成が上回るだろうという姑息な計算だったことは想像に難くないが、今回の都議会選の応援のために吉村・松井両氏が来京するのも同じこと。前回の都議会選で維新は4人の公認候補者を立てたものの獲得議席は1議席で終わったが、今回は前回を上回る13人もの候補者を立てている。これは全国区の顔となった吉村知事の人気にあやかって党勢拡大を図ろうという戦略で、実際に維新候補者の選挙ポスターではデカデカと吉村知事の写真を打ち出しているものもある。つまり、吉村知事はこの感染状況のなか、党利党略のために「客寄せパンダ」として応援に向かうのである。

松井市長「保健所の体制は十分だった」はやはり嘘だった! MBSで大阪市保健所所長が体制の不備を認める

 このように、党勢拡大と引き換えに府民・市民の命を軽視してきた吉村知事と松井市長。しかも、維新が悪質なのは、大阪のコロナ対策に批判的な報道が出ると、恫喝まがいの主張を繰り広げては虚報であるかのように印象づけてきたことだ。

 だが、そうした維新の嘘は、ここにきてまたひとつ明らかになっている。

 5月11・12日に在阪テレビ局の毎日放送(MBS)の取材に対し、大阪市の保健師が同市の疫学調査の人手不足や過重労働、経験不足の人間が投入されていることなどを告発。合わせて人員体制図をもとに、疫学調査を担当する常勤職員が42人から31人に減らされたと報道した。

 しかし、松井市長は同月12日の新型コロナワクチン接種推進本部会議後の質疑応答でこの問題を質問した記者に対して、指差しながら「それ事実やな? 減ってるっていうのは。MBS」「お前、裏とってきたんやな?」と完全な輩口調で凄んでみせた。さらに、翌13日の定例会見では、人員表がそうなっていても実際には31人以外にも他の部署から応援を20人追加されていたと言い張り、「なんでそんな不安をあおるようなことばっかり、MBS、何が面白いの?」「表面的な部分しかとらえず、公共の電波を使って不安をあおっている。これについては会社からの回答を求めます。現場の対応とまったく違うことを君らは放送している」と露骨に恫喝をかけた。

 だが、松井市長の“体制は十分だった”という主張は嘘だった。というのも、大阪市保健所のトップである吉田英樹所長がMBSの取材に応じ、こう語ったのだ。

「患者の数と(保健所の)体制の間でミスマッチがあって、一時的に厳しい時期があったのは否めないと思います」
「応援とか派遣だけではできない、本来のスタッフがやる仕事があります。(クラスター調査など)継続的に何日間か続けて対応しないといけないこともございます。そうなると、ずっと毎日来られる職員とそうでない職員との間で役割分担を変えるようなこともございます。これまで通りでいいとは思っていませんので、より良い体制づくりにつなげたいと考えています」

 つまり、“応援は来ても入れ替わる職員がいるため任せられる仕事は限られていた”と吉田所長は語り、体制が十分ではなかったことを認めたのである。

 松井市長はMBSの記者に対して「表面的な部分しかとらえず、公共の電波を使って不安をあおっている」などと反論していたが、実態とは違う表面的な部分しかとらえず、事実と反する主張をおこなっていたのは松井市長のほうだったのだ。しかも、「現場の対応とまったく違うことを君らは放送している」などとフェイクニュースであるかのように決めつけながら、だ。

 恫喝をかけられても怯むことなく取材をつづけ、保健所の体制が不十分であったことを明らかにしたMBSはじつに真っ当な報道をおこなったと評価すべきだが、こうした当然の報道さえ大阪ではこのような恫喝に晒され、それによって当たり前におこなわれるべき吉村知事や松井市長のコロナ対策への批判が抑え込まれるという異常な状態に陥っている。そして、そうやってメディアを支配できていると図に乗っているからこそ、吉村知事も松井市長も、府民・市民には自粛を要求している不要不急の移動を平気でやろうとしているのである。

 多数の死者を出した第4波の反省など微塵もなく、相変わらず党勢拡大しか頭にない吉村知事と松井市長。大阪府民・市民がこの男たちに徹底的に見下され、虫けら同然に扱われているという事実を、在阪メディアはしっかり伝えるべきだろう。

最終更新:2021.07.01 09:23

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