村上春樹が新作『騎士団長殺し』に込めたメッセージとは? 昨年末に語った歴史修正主義批判との関係は

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 印刷
murakamiharuki_150901.jpg
村上春樹『職業としての小説家』(新潮社)

 今月24日、村上春樹が複数巻にわたる長編としては『1Q84』(新潮社)以来7年ぶりとなる作品『騎士団長殺し』(新潮社)を出版する。大型書店などでは日付が変わると同時に発売を開始するカウントダウンイベントなども行われており、もうすっかり恒例行事となった村上春樹祭りが開かれている模様だ。

 例のごとく、発売前に小説のあらすじなどが明かされることは一切なく、内容は秘密のベールに包まれているが、興味があるのは、今回の新作に村上の最近の政治や社会問題に対する関心が反映されているかどうか、だ。

 たとえば、昨年の10月に村上は象徴的なスピーチをしている。日本ではあまり話題とならなかったが、昨年10月30日にデンマークで開かれたハンス・クリスチャン・アンデルセン文学賞の授賞式に参加した村上は、アンデルセンの小説『影』を取り上げながら、自らの「影」、すなわちネガティブな側面と対峙し受け入れることの重要性を説いた。加えて、それは個人の問題のみならず、社会や政治に関する問題でもあると語っている。

〈アンデルセンが生きた19世紀、そしていま私たちが生きる21世紀でも、必要なときに、自分の影と向き合い、立ち向かい、ときには協力だってしなければいけません。それには“正しい”知恵と勇気が必要です。もちろん、かんたんなことではありません。ときには危険が生じることもあるでしょう。でも、それを避けていたら、人は正しく成長し成熟することはできません。最悪の場合、『影』の物語の学者のように、自らの影に滅ぼされて終わってしまうかもしれない。
 影と向き合わなければならないのは、ひとりひとりの個人だけではありません。社会や国家もまた、影と向き合わなければなりません。すべての人に影があるのと同じように、すべての社会や国家にもまた、影があります。明るく輝く面があれば、そのぶん暗い面も絶対に存在します。ポジティブな部分があれば、その裏側にはかならずネガティブな部分があるでしょう。
 ときに、私たちはその影やネガティブな部分から目を背けがちです。あるいはこうした面を無理やり排除しようとします。なぜなら人は、自らのダークサイドやネガティブな性質を、できるだけ見ないようにしたいものだからです。しかし彫像が確固たる立体のものとして見えるためには、影がなくてはなりません。影がなければ、ただの薄っぺらい幻想にしかなりません。影を生み出さない光は、本物の光ではありません。
 どんなに高い壁を築いて侵入者が入ってこないようにしても、どんなに厳しく異端を排除しようとしても、どんなに自分の都合にいいように歴史を書き換えようとしても、そういうことをしていたら結局は私たち自身を傷つけ、滅ぼすことになります。影とともに生きることを辛抱強く学ばなければいけません。自分の内に棲む闇を注意深く観察しなくてはなりません。ときには暗いトンネルのなかで、自らのダークサイドと向き合わなければなりません。もしそうしなければ、やがて、あなたの影はもっと大きく強くなり、ある夜、あなたの家のドアをノックするでしょう。「帰ってきたよ」とささやきながら。
 傑出した物語は多くのことを教えてくれます。時代や文化を超えて学ぶべきことを。〉(編集部訳)

「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。

新着芸能・エンタメスキャンダルマンガ・アニメビジネス社会カルチャーくらし教養

村上春樹が新作『騎士団長殺し』に込めたメッセージとは? 昨年末に語った歴史修正主義批判との関係はのページです。LITERA政治マスコミジャーナリズムオピニオン社会問題芸能(エンタメ)スキャンダルカルチャーなど社会で話題のニュースを本や雑誌から掘り起こすサイトです。原発新田 樹村上春樹の記事ならリテラへ。

人気記事ランキング

総合
いいね! 数
1 田崎史郎を時事通が特別扱いした理由
2 りゅうちぇるがさんま・一茂・良純と「家事」論争
3 石破茂が安倍応援団メディアを痛烈批判
4 沖縄県知事自民候補と沖縄ヘイトの親密関係
5 第一子誕生りゅうちぇるが語ったキラキラネーム問題
6 慰安婦めぐり国連で日本政府がデマ反論
7 木村拓哉『検察側の罪人』めぐりジャニーズと文春が
8 りゅうちぇるの意見が真っ当すぎる!
9 池上彰が朝日叩きとネトウヨを大批判
10 安倍「股関節炎は仮病」証明のゴルフ
11 秋元康の東京五輪に椎名林檎が危機感
12 阿波おどりを徳島新聞が私物化!
13 安倍が選挙妨害に関与の決定的証拠
14 綾瀬はるかが戦時化の性犯罪をレポート
15 『ゲゲゲの鬼太郎』の戦争描写をネトウヨが攻撃
16 海外メディアがアベノミクスは失敗と
17 グッディ!土田マジギレ真の原因
18 フジ『バイキング』で金美齢が部落差別
19 NHKの戦争特集に和田政宗が圧力
20 宮崎駿が『永遠の0』を酷評
1りゅうちぇるがさんま・一茂・良純と「家事」論争
2安倍「股関節炎は仮病」証明のゴルフ
3翁長知事は最後まで安倍政権のいじめと闘い続けた
4 綾瀬はるかが戦時化の性犯罪をレポート
5 終戦の日の自民党声明から「民主主義、基本的人権」が消えた
6安室奈美恵の翁長知事追悼にネトウヨが「反日」攻撃!
7田崎史郎を時事通が特別扱いした理由
8ネトウヨ局アナがテレ朝のお昼の顔に
9NHKの戦争特集に和田政宗が圧力
10『ゲゲゲの鬼太郎』の戦争描写をネトウヨが攻撃
11慰安婦めぐり国連で日本政府がデマ反論
12創価学会が靖国神社「みたままつり」に提灯奉納!
13『報道特集』が報じた日本軍の証拠隠滅の実態
14 安倍昭恵完全復活! 支持者会合に首相と登場
15安倍「臨時国会に改憲案」の醜悪な裏
16安倍が杉田水脈問題に「なんで騒いでるの」
17安倍の態度には長崎の被爆者代表が激怒「毎年一緒」
18安倍首相が津川雅彦に特別扱い追悼会見
19北朝鮮の日本人拘束事件で政府が報道管制
20阿波おどりを徳島新聞が私物化!

人気連載

アベを倒したい!

アベを倒したい!

室井佑月

ブラ弁は見た!

ブラ弁は見た!

ブラック企業被害対策弁護団

ニッポン抑圧と腐敗の現場

ニッポン抑圧と腐敗の現場

横田 一

メディア定点観測

メディア定点観測

編集部

ネット右翼の15年

ネット右翼の15年

野間易通

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

赤井 歪

政治からテレビを守れ!

政治からテレビを守れ!

水島宏明

「売れてる本」の取扱説明書

「売れてる本」の取扱説明書

武田砂鉄