百田尚樹が『海賊と呼ばれた男』映画宣伝から外された本当の理由 ついに安倍首相にも見放され…

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 印刷

 NHK経営委員が選挙で応援演説に立つこと自体が問題だが、さらに暴言まで吐くというオマケまで付けたのだから、大きく報じられるのは当然のこと。同様に、15年6月に自民党の会合で「沖縄の二紙は潰さなあかん」と言論弾圧発言をおこない、このときも大きく報じられたが、こうやって百田は数々のトラブルを引き起こしては、それまでの“おしゃべり人気作家”というお茶の間イメージを「このおっさん、危ないな……」という印象に自ら塗り替えていったのである。

 しかし、最大の決定打は、言わずもがな『殉愛』騒動だろう。2014年11月7日の出版当日に『中居正広の金曜日のスマたちへ』(TBS)で大規模なプロモーションをし、百田本人が作品を解説までして圧倒的な注目を集めたが、ご存じの通り、その後すぐにネット上ではさまざまな疑問が投げかけられ、作中では未婚だと書かれていた故やしきたかじんの妻の結婚歴が浮上し、一気に「百田氏は事実を捏造しているのでは?」という批判が殺到。しかも、そうした疑問の声に真摯に向き合うことなく御用出版社が刊行する週刊誌で開き直ったような反論に終始し、挙げ句、たかじんの実娘を罵倒するなど信じられない行動に出たことで、作家としての信頼性は完全に崩壊、それまでは百田に好意的だったネット民やライトなネトウヨからも見放されてしまう大騒動へと発展した。

 つまり、百田が映画の宣伝で名前を伏せなければならないような事態となったのは、本人が主張する「極右とかネトウヨというイメージキャンペーン」のせいなどではまったくない。自分から世間がドン引きするような暴言を公的な場所で吐き、自分から嘘やデタラメだらけの本をノンフィクションと称して世に出したがゆえに、“ヤバイ存在”となってしまったのだ。この3年間、投げ続けてきたブーメランが、いまようやく百田のもとに戻ってきた。それだけの話である。

 とはいえ、『海賊と呼ばれた男』は間違いなく百田の代表作のひとつであり、『永遠の0』と同じようにネトウヨ小説であるというのに(作品の批評については明日あらためて記事として配信する予定)、映画の宣伝において百田の名前だけ隠すというのは姑息と言わざるを得ず、百田が腹を立てるのもわかる。

 だが、ならばその不平不満は、映画チームだけではなく、あの男にも言うべきだろう。そう、百田作品を愛読していると公言し、『海賊と呼ばれた男』を絶賛していた安倍首相である。

 たとえば安倍首相は、映画『永遠の0』が公開されたときも、感極まった様子で「感動しました」「(印象に残ったのは)やっぱり、ラストシーンですかね……」と感想を述べた(朝日デジタル13年12月31日付)。また、同時期に安倍首相は百田との対談集『日本よ、世界の真ん中で咲き誇れ』を発売し、対談では『永遠の0』『海賊と呼ばれた男』についても安倍首相が語り、映画のプロモーションに貢献。百田がトクをするだけではなく、安倍首相もベストセラー作品を褒めることで大衆的な一面を見せるというイメージアップに利用するなど、まさにWin-Winな関係だったのだ。

 ところがどうだろう。『殉愛』騒動が勃発してからというもの、安倍首相はすっかり百田と距離を置き、安倍首相の肝いりで送り込まれたNHK経営委員も15年2月末に退任。表向きは“政府サイドは再任を求めたものの本人が辞退した”とされているが、実際は「官邸から遠回しに“任期満了でやめて”とシグナルを出していた」という情報もある。『殉愛』騒動で保守層からも見放された百田に、うま味はもうない──あんなに仲良しだったのに、安倍首相からは“戦力外”と通告されてしまった、というわけだ。

 ベストセラー作家として人気の絶頂にあったときにはすり寄って、悪評が高まるとあっさり切り捨てる。ある意味、自分本位で冷酷な安倍首相の性格がよく表れているエピソードという気もするが、百田は映画PRにつべこべ言う暇があるのなら、安倍首相に「なんで『カエルの楽園』を褒めてくれないの!?」と詰め寄ってみてはいかがだろうか。
(大方 草)

最終更新:2016.12.10 11:42

「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。

新着芸能・エンタメスキャンダルビジネス社会カルチャーくらし

百田尚樹が『海賊と呼ばれた男』映画宣伝から外された本当の理由 ついに安倍首相にも見放され…のページです。LITERA政治マスコミジャーナリズムオピニオン社会問題芸能(エンタメ)スキャンダルカルチャーなど社会で話題のニュースを本や雑誌から掘り起こすサイトです。大方 草百田尚樹の記事ならリテラへ。

人気記事ランキング

1 小林製薬「紅麹」で問題視される「機能性表示食品制度」は安倍案件!
2 櫻井よしこの朝日攻撃の「捏造」が法廷で
3 東山紀之が“反ヘイト本”を出版
4 乙武洋匡が不倫旅行、5人の女性と関係
5 安倍派裏金で読売新聞「非公認以上の重い処分」報道の違和感!
6 久米宏が終了決定のTBSラジオで田中真紀子と
7 セカオワFukaseのいじめ発言
8 葵つかさが「松潤とは終わった」と
9 安倍政権御用ジャーナリスト大賞(前編)
10 コロナ収束前の「Go To」予算1兆7千億円計上に非難殺到も田崎史郎は…
11 東山紀之、朝鮮学校無償化に言及
12 五輪延期で発覚!安倍のお友だち「アパホテル」に組織委用の部屋
13 石田純一がコロナバッシングで「組織に狙われている」と語った理由!
14 御用新聞・産経が安倍首相に食い下がった毎日記者を攻撃する露骨ぶり
15 安倍は辞任報道でもお友達優遇! 前回のTBS時代の山口敬之が
16 世界的建築家の「カジノありきの万博」批判に大阪市長が大ウソ反論
17 小泉進次郎が「靖国参拝」したのは父親と同じ右派支持狙いの戦略か
18 総裁選で自民党がまた新聞社に圧力文書!
19 松本人志『ドキュメンタル』のセクハラ
20 和泉・大坪の安倍側近“不倫コンビ”の新疑惑を政府機関の理事長が告発

カテゴリ別ランキング

マガジン9

人気連載

アベを倒したい!

アベを倒したい!

室井佑月

ブラ弁は見た!

ブラ弁は見た!

ブラック企業被害対策弁護団

ニッポン抑圧と腐敗の現場

ニッポン抑圧と腐敗の現場

横田 一

メディア定点観測

メディア定点観測

編集部

ネット右翼の15年

ネット右翼の15年

野間易通

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

赤井 歪

政治からテレビを守れ!

政治からテレビを守れ!

水島宏明

「売れてる本」の取扱説明書

「売れてる本」の取扱説明書

武田砂鉄