小渕優子も「女性に下駄をはかせるのは反対」じゃあ二世という下駄は?

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 もっとも、その野田も根本的に世襲という問題を否定する気はないらしく、女性議員を増やす方策としてこんな驚愕の提案をするのだ。

「じゃあ、私たちみたいな。政治家を親や祖父に持つ女性に、とにかくまず立候補してもらうというのはどう?」

 つまり、政治家を息子でなく娘に継がせる制度をつくろう、というわけだ。これはこれで「男女平等も世襲前提かよ!」とツッコミたくなる発言だが、しかし、野田の場合は「世襲制批判があるのを承知の上で、敢えて」「女性議員を増やすのであれば、ひとまず下駄を履いた議員でもいいから政治の世界に送り込んでいかないと」とも付け加えているので、一応、いろんな問題点がわかっていてあえて挑発的に語ってみせたのだろう。

 しかし、問題なのはやはり小渕の反応だ。小渕は野田のこの挑発にも、まったく悪びれることなくこう返したのである。

「でも現実には、息子でなく娘に後を継がせるという感覚は、政治の世界にはまだまだないと思います。例えば私には6歳と4歳の息子がいますが、『よかったですね、これで跡継ぎができたね』と、よく言われる。ちょっと待って、私は娘ですが跡を継いだんですけどと思ってしまう。」

 え? そういう話? 野田は一応、世襲制という悪をあえて利用するという文脈で語っているのに、小渕はそれを素直に受け取り、自分のエピソードを淡々と語るだけなのだ。小渕にとって世襲はデフォルト。その後も、彼女の口をついて出てくるのは、夫に挨拶を変わってもらったら、「いつでも、旦那さんに議員を変わってもらえるね」といわれてイヤだったとか、そういう話ばかり。小渕はこの鼎談で自分がいかに野田聖子を尊敬し、目標としてきたかを語っているが、どう見ても、野田の政策を理解しているようには思えない。

 それは、テーマとなっている女性政策についても同様だ。女性政策が一気に進み始めた事についてこんな発言をしている。

「安倍総理はそういったところをわかっていらっしゃる。だから、これだけ女性政策を進めてくださってる」
「日本のリーダーが。こんなにも女性政策を提言してくれるなんて、今までなかったことですからね」

「進めてくださってる」と、女性政策がまるで男社会からのサービス、安倍首相からの施しのように平気で語ってしまう神経。ひょっとすると、この人、実は何も考えてないんじゃ……。発言を読めば読むほどそんな疑問がわいてくるのだ。

 実際、小渕優子がどういう政治スタンスでどんな政治的成果をあげてきたかを即答できる人はほとんどいないだろう。目立たず騒がず、ただ淡々とその場の流れにあわせてふるまっているだけ。その一方で気配りは一級品で、力をもっている人間、自分の味方になってくれる人間には最上の気配りを見せる、それが小渕優子の永田町評だ。実際、この鼎談でも、野田聖子を一番尊敬しているといいながら、安倍首相をほめあげ、会話の合間に「あっ、聖子先生にお酒を。」なんて気配りを全開している。

 どの組織にもいるタイプだが、しかし、案外こういう人が強いのである。思えば、彼女の父親もそうだった。何もやっていないのに、気がついたら、総理大臣……。

 ちなみにこの鼎談は第二次安倍内閣の組閣前に行われたものだが、その組閣で、小渕優子は経産相という重要ポストに抜擢され、総務会長を務めていた野田聖子は外された。そして小渕優子には案の定、“ポスト安倍”という声が上がり始めている。恐るべし、小渕優子、というしかない。
(水井多賀子)

最終更新:2015.01.19 05:56

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