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菅首相に緊迫感ゼロ! こんな時期に山田太郎議員からネット指南、国会ではGoTo予算組み替え拒否、西浦教授の参考人招致ツブシも…
衆議院TVインターネット審議中継より
政府の無為無策による「医療崩壊」が止まらない。本日25日、新型コロナの自宅療養中に死亡した人が全国で少なくとも25人にのぼるとTBSが報道。さらに警視庁によると、警察が取り扱った遺体が新型コロナに感染していたケースが、今月だけですでに75人にも達しているという。
これは、菅義偉首相が医療提供体制の強化をなおざりにし、感染が拡大するなかでも税金を使って「GoTo」を推進した結果、いま国民が危険に晒されていることの何よりもの証拠だ。
しかし、このような異常事態の只中にありながら、当の菅首相に緊迫感はまるでない。菅首相は昨日、自らある人物を公邸に招いて助言を求めたというが、その相手は自民党の山田太郎参院議員。「発信力が弱い」と指摘されていることから、ネットに明るい山田議員にアドバイスを求め、「熱量がなければ(真意は)拡散しない」などと助言を受けたというのである。
山田議員といえばアニメやマンガの表現規制問題でオタクの支持を取り付けてきた人物で、ネット上での影響力は非常に偏ったものだが、そのような議員とわざわざ面会して発信力強化って、それがいま総理大臣のやることか、という話だろう。
実際、この菅首相の危機感のなさは、本日から国会ではじまった第3次補正予算案の審議でも如実に表れている。
というのも、絶句すべきことに、菅首相は第3次補正予算案で計上した「GoTo」キャンペーンに追加で計上した1兆856億円を撤回せず、「しかるべき時期に再開する」と明言したからだ。
この第3次補正予算案は、昨年12月15日に閣議決定されたもので総額73兆6000万円にものぼるが、そのうち医療提供体制の確保や医療機関などへの支援、検査体制の充実やワクチン接種体制などの整備といった新型コロナ感染拡大防止策のために割り振られているのはたったの4兆3581億円にすぎない。一方、前述したように「GoTo」に約1.1兆円や脱炭素に向けた基金に2兆円、インバウンド復活に向けた基盤整備に650億円など「ポストコロナに向けた経済構造転換・好循環の実現」には11兆6766億円も費やそうとしている。
言うまでもなく、緊急事態宣言が再発出されたなか、現況は「GoTo」はもちろんのこと、「インバウンド復活」などと言っているような状況下にはない。補正予算であることも踏まえれば、この緊急時に必要なのは医療提供体制強化・医療支援や、困窮する人たちへの一刻も早い支援策であり、「GoTo」予算などをそれらに組み替えるのは当然だ。
西浦教授らの研究で、GoToトラベル開始後に旅行関連のコロナ感染者が最大6〜7倍になったことが判明
しかし、本日の衆院予算委員会で立憲民主党の小川淳也衆院議員が「この補正予算1兆円の『GoTo』予算が入っていることは不謹慎だと思う。3月までにやるんですか? 撤回・組み替えを求めたい」と追及すると、菅首相は「3次補正予算は国民の命と暮らしを守っていくための大事な予算です」と述べた上で、こう答弁したのだ。
「『GoToトラベル』については、地域経済の下支えに貢献するものであり、年末の経済対策において期限の延長が決定されており、現在は感染拡大防止に全力をあげるため事業を 停止してますが、しかるべき時期に事業を再開するときに備えて計上をしています」
「しかるべき時期に再開させる」って、症状があっても既往症があっても自宅療養させられている人が続出しているなかで、そんな見通しが立てられる状況には断じてない。だいたい、菅首相は「仮定のことは考えない」と明言していたが、「しかるべき時期」という「仮定」のために、いま1.1兆円も確保するというのは、はっきり言って支離滅裂だ。
しかも、だ。菅首相は「『GoToトラベル』が感染拡大の主要な要因であるとのエビデンスは存在しない」と言い張ってきたが、それを崩す「エビデンス」も示されている。
というのも、「GoToトラベル」の開始後に旅行に関連するコロナ感染者が最大6〜7倍も増加したことを、西浦博・京都大学教授らのグループが国際的な医学雑誌「ジャーナルオブクリニカルメディシン」に発表したからだ。
報道によると、西浦教授らのグループは昨年5月から8月にかけて24県から報告された感染者約4000人を分析。「GoTo」開始前と開始後の感染者数を比較・分析したところ、〈1日当たりの感染者数は、開始後に約3倍に増加〉〈出張ではなく観光目的で感染した人は最大6.8倍、直前期間との比較ではおおむね2~3倍になった〉(東京新聞25日付)というのだ。
この結果について、西浦教授はこう述べているという。
「第2波は8月中旬までに減少に転じていたが、初期のGoTo事業が感染拡大に影響を及ぼした可能性がある」
今回の西浦教授の分析は昨年8月までのものであって、これが「GoTo」に東京都が追加された10月以降も加えられれば、さらに「GoTo」が与えた影響について判明することになるだろう。
自民党が西浦教授の参考人招致を拒否 理由が「民間人だから」 厚労省アドバイザリーボードのメンバーなのに
だが、こうした結果が出ることは、「GoTo」開始前から専門家から予見されていたものだ。しかも、当の西浦教授も、直接政府に対してそう警鐘を鳴らしていた。「週刊文春」(文藝春秋)1月14日号に掲載された西浦教授のインタビューによると、〈厚労省クラスター班のメンバーとして、専門家会議(当時)の座長だった尾身茂氏や押谷仁東北大教授らと、毎週三十分から一時間程度、西村氏の大臣室で非公式な形で政策提言を行っていた〉とし、こう語っている。
「昨年五月の緊急事態宣言中のことでしたが、GoToトラベルについて『この政策を行うと再び流行するように思います』とハッキリ申し上げる機会もありました。この時点で人の移動が増えれば、実効再生産数も上がることは判明していましたから。幹部の皆さんの空気はピタッと止まりましたが……、それでも私たちの意見に色々と耳を傾けて下さいました」
この「『GoTo』で再び流行する」という強い警告が、菅首相の耳に届けられなかったということは考えられない。菅首相は緊急事態宣言が遅れた理由などについて「専門家のみなさんが〜」と言って責任転嫁しつづけているが、実際は専門家の意見に聞く耳など持たず、自身の判断で「GoTo」をゴリ押ししてきたのである。
しかも、菅首相が下劣なのは、こうした自分にとって都合の悪い分析やデータを徹底して隠蔽・無視しようとしていることだ。
実際、本日の衆院予算委員会では、それを裏付ける事実が明らかになった。立憲民主党の長妻昭衆院議員によると、本日の予算委に西浦教授を参考人として呼ぶことを求めたものの、これを自民党が「ブロック」。その理由は「民間人は呼ばない」「民間人だから」というものだったというのだ。
西浦教授は厚労省アドバイザリーボードのメンバーであり、れっきとした政府の専門家だと言えるが、それを「民間人」と呼んで拒絶する……。西浦教授自身は政治に巻き込まれたくないと思ったからか、〈為政者のオイタが過ぎる中で役割は出て来てしまうでしょうが〉と政権を皮肉りつつも、〈僕は国会参考人になることを同意したことはありません〉とツイートしていた。
しかし、仮に西浦教授自身が招致に応じるつもりはなかったとしても、自民党はその意思確認とは無関係に「民間人は呼ばない」という理由で拒否しているのだ。これはあきらかに、最初から参考人招致つぶしをしていたということではないか。
そもそも、緊急事態宣言の再発出をめぐっても、西浦教授が厚労省に示した“飲食店の時短営業要請だけの対策では新規感染者数はほとんど減らず2月末時点でも1日およそ1300人の新規感染者が出る”というシミュレーション結果を、政府は「非公開資料」扱いにした。 これこそ、都合が悪いものは認めないという菅首相の態度を示しているものだ。
そして、「GoTo」が感染拡大に影響を与えたとするエビデンスが示されてもなお、機動的に使われるべき第3次補正予算案に「GoTo」への追加予算が計上されたままの異常さ、それを菅首相が撤回しようともせず「再開させる」と言い張ることの異常さこそが、いかに菅首相が医療をおろそかにし、国民の安全を軽視しているかを表している。いまこそ「その予算はおかしい」「『GoTo』予算を医療に使え」という声をもっと強くあげなければならないだろう。
(水井多賀子)
最終更新:2021.01.25 09:06
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