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「アイドルってクソ」濱野智史が暴言連発で大炎上!「アイドル共産党宣言」の志は一体どこへ?
濱野智史『前田敦子はキリストを超えた』(ちくま新書)
アイドル業界に蔓延する「搾取」の構造を変革するというマニフェストを掲げ、PIP(正式名称Platonics Idol Platform)なるアイドルグループを自らプロデュースし戦ってきたはずの濱野智史が裏切った!
濱野といえば、『アーキテクチャの生態系──情報環境はいかに設計されてきたか』(NTT出版)などの著書で知られ気鋭の社会学者・若手批評家として注目されながら、なぜかAKB48、特に、ぱるること島崎遥香にハマってしまいアイドルオタク化。『前田敦子はキリストを超えた』(ちくま新書)という、どうかしてるとしか思えないタイトルの新書を上梓したり、AKBだけでなく地下アイドルのライブにも通いつめるまでになる。そして終いには、好きが高じて2014年からは前述のPIPを運営、自らアイドルのプロデュースにまで乗り出してしまったのである。そのハマりぶりを心配されつつも、AKB利権目当てのビジネスヲタなどではなく、本気でアイドルが好きなんだなと思われていたのだが……。
そんな彼が9月27日、アイドル兼ライターである姫乃たま氏のトークイベントにゲスト出演し衝撃の問題発言を連発。アイドル文化をバカにしたような言動の数々が、PIPのファンのみならずアイドルファン全体の怒りを買い、大炎上を起こしている。
まず、彼は、グループアイドルとソロアイドルの違いについての話題になると、以下のような爆弾発言を投下。
「僕、最近、グループアイドルってないな、と思ってきた。自分でつくってみて分かったんですけど、ある年頃の女性を集団でまとめると、まあ、ろくなことがない。嫉妬、妬み、いじめ、陰湿な何々、もうね、はっきり言って、マネジメントなんてできませんよ。『勝手にいじめとかやってろ!』とかなるんですよ、正直」
PIPは14年6月に総勢22人がお披露目されてから約1年あまりで半数近くが脱退。しかも、そのなかには、センターやエースなど主力と期待されていたメンバーも含まれている。そんななかでの濱野の発言は「みんないじめで辞めていったんだ」と周囲の憶測を呼んでも仕方ない発言である。というか、そもそもグループ活動にこういった揉め事が起きるのは想定の範囲内のはずで、そういった状況をいかにコントロールするかを「マネジメント」と呼ぶのであり、それがアイドル運営の「仕事」だと思うのだが……。
いずれにせよ、10月21日にはユニバーサルミュージックからメジャーデビューシングル「僕を信じて」の発売を控え、グループとして最も大事なこの時期に、プロデューサーが公にしてタレントの活動にプラスの効果を与えるような発言ではないのは明白だ。
そして、さらには、こんな過激な言葉まで口走る。
「アイドルグループの運営を1年ぐらい前から始めて思ったんですけど、これをまともなビジネスにしようと思ったら、ヤクザになるしかない。ウチのグループってメッチャ辞めていくんですけど、辞めさせなくなかったらヤクザになるしかない」
彼の暴言はまだまだ止まらない。脱退者が続出しているPIPの現状を受けての「いま、何人になってるんですか?」という質問には、足を組み、笑いながら、
「いま何人だっけ? もう忘れてるぐらい。今日とか6人ぐらいしかいなかったですよ、定期公演」
と返す。そして途中「アイドルってクソだなって分かったんで」との言葉まで吐き捨てながら、最後の告知コーナーでは、前述の「僕を信じて」をPRしながら、
「ユニバーサルミュージックからメジャーデビュー、謎ですよね、俺も自分で謎だなって思ってますもん。なのに、辞めていくメンバーたち。いやー、本当にバカだと思ってますけどね」
などと、かつて在籍したメンバーたちに対して嘲るような言葉まで発したのであった。
本稿冒頭で、PIPというアイドルについて「アイドル業界に蔓延する「搾取」の構造を変革するというマニフェストを掲げ」と紹介したが、濱野はただ「アイドルに近づきたい」というような下衆な目的でアイドルグループを立ち上げたのではない(このような目的でアイドルグループを立ち上げる輩は相当数おり、そういう者のことをアイドルオタクたちは「半ヲタ関係者」と呼び、忌み嫌っている)。
濱野は、現役アイドルとしての活動中「やりがい搾取」のようなかたちで薄給で働かされ、セカンドキャリアへの道も満足に用意されぬまま捨てられていく、そんなアイドル界の現状に異議申し立てすべくPIPというグループを立ち上げた、はずだった。「週刊金曜日」14年6月6日号(金曜日)掲載の「アイドル共産党宣言 搾取されないアイドルを自分の手で!」と題された、PIPお披露目直前の文章では、このように書かれている。
〈このプロジェクトのコンセプトはずばり、“アイドルをつくるアイドル”というものだ。具体的には、「歌って踊るメンバー」として所属するだけでなく、たとえば、メンバーの一部には「プロデューサー候補生」としてもガンガン運営に参画してもらう。そして、将来的には独立し、新たなグループを立ち上げてもらう。(中略)それぞれのメンバーが独立したあかつきには、もちろん、新グループの経営者として然るべきお金が本人の懐に入るようにする〉
彼がこんなコンセプトを考え出した理由。それは、始めは「フィールドワーク」と称してAKB48の握手会や公演に行き始め、そのうち本物の「オタク」化してしまい、AKB48グループのみならずもっとアンダーグラウンドな「現場」で活動する地下アイドルを見ていくうちに、許されざる「搾取」の構造を実感したからであった。
〈なぜ、そんなネットワークをつくろうとしているのか。理由は運営側による中間搾取を、なるべくゼロに近づけたいからだ。「少女たちが“悪い大人”に“やりがい搾取”されている」というブラックなイメージは、アイドル業界にどうしてもついてまわる。「ステージに立ちたい」「雑誌の表紙を飾りたい」など、憧れの舞台のためには低賃金でも重労働でも“我慢するアイドルの健気さ”につけこむ人びとがいる。実際、そうした「クソ運営」も密かに存在しているのだろうけど、僕は「クソ運営」を払拭し、「搾取されないアイドル」を実現したい〉
アイドル自らがアイドルをつくりだしていくというコンセプトは、PIPメンバーである森崎恵がアイドルグループ「LasRabbi」のプロデュースを手がけ始めるなど、完全なる失敗には終わっていない。しかし、お披露目から1年あまりで脱退者を続出させてしまっている現状を鑑みれば、PIPというプロジェクトは「失敗」の方向へと突き進んでいることは否定できないだろう。事実、濱野は多忙を理由に、プロデューサーとしての仕事は続けるものの、今年の5月をもってPIPの現場管理からは退く旨を発表している。事実、今回の舌禍が起きたイベントと同じ時間、裏ではPIPのイベントも行われていた。
「アイドル共産党宣言」なるマニフェストで書かれた崇高な理念はどこへ行ったのだろうか。濱野は〈「クソ運営」を払拭〉と書いていたが、メンバーの不仲をイベントで暴露するような運営は「クソ運営」ではないのだろうか? また、搾取構造を変革するために立ち上げられたプロジェクトなのに、たとえ冗談だとしても「アイドルグループの運営をまともなビジネスにしようと思ったらヤクザになるしかない」などと口走るのは、コンセプトの根幹を否定するようなものではないか。
彼は学者・評論家として食い扶持を確保できるから、ある程度先が見えてしまった時点でPIPのことなどどうでもよくなってしまったのかもしれない。しかし、彼には生き馬の目を抜くような「アイドル」の世界にPIPのメンバーを引き込んでしまった責任がある。最後に「アイドル共産党宣言」からのテキストを引用して本稿を閉じたい。濱野智史はわずか1年ほど前に自分が書いたこの文章をよく思い出し、今回の自分の言動がこのコンセプトを前進させる役に立ったのかどうか、胸に手を当ててよく考えてみて欲しい。
〈なぜそこまでするのか。僕は、本当にアイドルを「素晴らしいもの」と考えているからだ。その世界を、未来永劫サステナブル(持続可能)な形で残したい〉
〈いまこの社会は寛容さを失い、リベラルな価値観が衰退していく一方である。そんな中、僕はアイドルこそが、「自由」(リベラル)にとっての最後の希望だと、大マジで信じている〉
(新田 樹)
最終更新:2015.10.03 06:00
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