ビジネスに関する話題……本と雑誌のニュースサイト/リテラ
「日本は金持ちの税金が高い」は嘘! 医者、大企業、投資家に有利な税制
『税金を払う奴はバカ!』(ビジネス社)
格差拡大、富の集中という資本主義への処方箋として、グローバル累進資本課税が必要だとしたトマ・ピケティの『21世紀の資本』。世界で、この“ピケティ税”の実現可能性、実効性が議論されているが、日本の税制の現状は、その導入の議論をする以前の問題かもしれない。
実は日本の税制には抜け穴があり、その抜け穴からとるべき税金が漏れている──というのは『税金を払う奴はバカ!』(大村大次郎/ビジネス社)だ。著者の大村氏は10年間主に法人税担当調査官として勤務した経験のある元国税調査官。『あらゆる領収書は経費で落とせる』(中公新書ラクレ)など節税に関する著書が多く、この2月~3月の確定申告の時期にもっとも読まれる著者の一人だが、今回は日本の税制の抜け穴の多さに憤っているのだ。
「ネットの掲示板などを見ても、『日本の金持ちの税金は世界一高い』ことを前提に経済を語る人がかなりいる。しかし、これは大嘘である。政府と財界の嘘にまんまと引っかかっているのである。
確かに日本の所得税の税率は、高額所得者には高く設定されており、税率だけを見るならば、日本の金持ちの税金は世界的に見て高い部類に入る。しかし日本の金持ちの税金にはさまざまな抜け道が用意されており、実質的には冗談のように安い税金しか払っていないのである」
たとえば、先進主要国の国民所得に対する個人所得税負担率を見ても、日本は7.2%。アメリカ、ドイツ、フランスはどこも国民所得比で10%以上の負担がある。イギリスにいたっては13.5%で日本の約2倍なのだ。
「先進国の所得税収の大半は、富裕層が担っている。だから国全体の所得税負担率が低いのは日本の金持ちがどれだけ税金を払っていないかということになる」
具体的には、配当所得の分離課税と開業医の優遇税制だ。まずは配当所得の分離課税。所得が高ければ高いほど税率も高くなる累進所得税から分離しているのだ。
「会社経営者(兼オーナー)は、自社の株を保有しているわけであり、投資家でもある。この投資家に対する税金が、日本は著しく安いのだ。日本では配当所得は分離課税となっていて、他の所得税の税率よりも相当に低い。(略)現在の税率はなんと20・315~20・42%である。つまり、配当所得は何千万円、何億円収入があろうと税率は20・315~20・42%なのである」
主要国の税率に比べても低い。もし、日本の金持ちが先進諸国と同程度の税金を払ったらどうなるか。
「単純に考えても、今よりも10兆円以上(所得税、住民税合わせて)は税収が増えることになる。10兆円の税収というと消費税を5%増税したときとほぼ同じである。つまり、金持ちが先進国並みに税金を払ってさえいれば、消費税の増税は必要なかったということなのである」
次に開業医の優遇税制だ。
「具体的に言えば、社会保険診療報酬の72%を経費として認められている(社会保険料報酬が2500万円以下の場合)。本来、事業者というのは(開業医も事業者に含まれる)、事業で得た収入から経費を差し引き、その残額に課税される。しかし開業医の場合は、実際の経費が多かろうと少なかろうと無条件に売上の72%が経費として認められているのだ。現在は段階的に縮小されているが、現在もこの制度は残っている。
また開業医は、普通の事業者ならば払わなければならない事業税も優遇されている。収入が多い上に、税金が優遇されているのだから、金持ちになるはずである」
大企業も税金が優遇されている。大企業の税金の抜け穴が「租税特別措置法」だ。
「要は『特定の人(企業)の税金を安くしてあげましょう』という制度である。いわば、国が定めた税金の抜け穴といえる。日本は名目上の税率は高いけれども、この租税特別措置法があるので実質的な税負担が低くなっている」
たとえば、2003年に導入された、試験研究をした企業はその費用の10%分の税金を削減する制度(限度額はその会社の法人税額の20%)「試験研究費の特例」だ。大企業のほとんどは、この特例を受けて事実上、法人税が20%切り下げられたのと同じ状態になっている。つまり、「試験研究費の特例」とは「大企業の20%減税」だったのだ。
さらに、著者は「バブル崩壊以降も日本企業はしっかり稼いできた」点を指摘している。
「日本経済は、原料を輸入し製品加工して輸出することが『主産業』である。この輸出入に関しては、日本経済はバブル崩壊の影響はまったく受けていないのである。バブルの絶頂期だった1991年と2007年を比べると、輸出は約2倍になっているのだ。貿易収支も、バブル崩壊以降もずっと10兆円前後の黒字を続けている。赤字になったのは、東日本大震災の後になってからである。(略)バブル崩壊以降、国民の多くは『日本経済は低迷している』と喧伝され、低賃金に耐えてきた。そして大企業には優遇を許してきた。しかし、その前提条件が間違っていたのである。大企業が稼ぐだけ稼ぎ、その金を自社の口座に貯め込むばかりで社会にまったく還元してこなかったことが、今の日本社会の疲弊を招いているのである」
国民の税金を食い荒らし、日本経済の屋台骨を蝕む「タックス・イーター」(tax eater)の存在を元財務官僚で弁護士の志賀櫻氏が明らかにした『タックス・イーター──消えていく税金』(岩波新書)でもこの租税特別措置を特別会計、財政投融資などとともに、タックス・イーターが群がる利権の巣窟としている。
「税務六法を買うと分厚い二分冊になっている。一冊目は所得税、法人税、消費税、相続税など本則の税法が載っている。二冊目は丸ごと租税特別措置法である。本則の税法の合計と租税特別措置法がほぼ同じ分量あるわけである。これはじつに驚くべきことなのだが、税金の専門家でも何も不思議に思わない人がいるのには驚かされる。租税特別措置の問題点を認識していないのである」
その複雑さから利権の巣窟になりやすい租税特別措置、一度は見直しがされた。
「民主党政権時代の二〇一〇年、峰崎直樹財務副大臣の強力な主導により『租税特別措置透明化法』が成立した。このような対策がとられるのは、租税特別措置は税制という毛皮をかぶった補助金であり、ひとたび悪用されればたちまち利権の巣窟になるからである」
しかし、この透明化法による改革も、財界・業界、財務省主税局の猛反対で尻すぼみ。自民党政権に返り咲くと再びタックス・イーターの巣窟に戻ったのだ。前述の開業医の優遇税制も自民党とべったりの日本医師会の絶大な組織力があることが大きい。
メディアでは自民党、財界に都合のいい法人税引下げの議論だけが注目されるが、その陰で、利権の巣窟にひそむタックス・イーターが日本経済をむしばみ続けるのだ。
(小石川シンイチ)
最終更新:2018.10.18 01:43
関連記事
新着 | 芸能・エンタメ | スキャンダル | ビジネス | 社会 | カルチャー | くらし |
萩生田光一が裏金問題で提出した「領収書の嘘」が発覚! 安倍元首相が「官房機密費100 万円を参院候補者に手渡し」報道も
『報ステ』大越の“万博礼賛”はテレ朝上層部の維新忖度か 『モーニングショー』でも吉村の“出禁”発言以降、万博批判が消える
吉村知事はガス爆発でも開き直り「他区域ではガスが出ない」と大嘘! 地下鉄工事でメタンガス確認、大阪市も発生可能性認めたのに
萩生田光一 裏金2728万円でも“事実上お咎めなし”で高笑い! 岸田と森に取り入って安倍派も“独り占め”の悪夢のシナリオ
吉村知事が「万博出禁」と攻撃した玉川徹のコメントはどれも当たり前の指摘ばかり! 吉村の言論弾圧体質はプーチン並み
大阪万博の工事現場でガス爆発 会場地下に溜まるメタンガスへの懸念が現実に! 危険な有害物質PCB汚泥も覆うだけ
小林製薬「紅麹」で問題視される「機能性表示食品制度」は安倍案件! 維新と一体の大阪万博パビリオン総合Pも旗振り役
安倍派裏金で読売新聞「非公認以上の重い処分」報道の違和感! 実際は軽い処分を重く見せるために岸田首相周辺が印象操作
政倫審でも「法令遵守体制」を自慢して顰蹙! 世耕弘成の法令遵守とはかけ離れた「政治と金」疑惑の数々
世界的建築家の「カジノありきの万博」「あり得ない」の批判に、維新・大阪市長が「万博とカジノ関連ない」と失笑の大ウソ反論
『仰天ニュース』“赤木ファイル”特集で安倍政権・公文書改ざん事件の卑劣があらためて注目! 中居正広も「あってはならない」と
ジャニーズ会見で井ノ原の「ルール守って」発言賞賛と記者批判はありえない! 性加害企業が一方的に作ったルールに従うマスコミの醜悪
ジャニーズ性加害でジュリー社長辞任もテレビ局は検証放棄! 局内での行為が疑われるテレ朝とNHKの無責任な姿勢
ジャニーズ性加害問題で露わになったテレビ局の共犯性! ジュニアの練習場を提供したテレビ朝日はジュリーの謝罪後も批判なし
坂本龍一が最後まで中止を訴えた「神宮外苑森林伐採・再開発」の元凶は森喜朗! 萩生田光一も暗躍、五輪利権にもつながる疑惑
れいわから出馬 水道橋博士が主張する「反スラップ訴訟法」の重要性! 維新・松井だけでなく自民党も批判封じ込めで訴訟乱発
自公維新が提出「国民投票法改正案」にネットで批判の声広がる! 小泉今日子も〈#国民投票法改正案に反対します〉と投稿
三浦瑠麗が「医者はワイドショー見てコロナ怖がりすぎ」と医療従事者を嘲笑! 専門家から反論されると半笑いで「私、医者じゃないんで」
Netflix版『新聞記者』の踏み込みがすごい! 綾野剛が森友問題キーマン官僚に、安倍御用ジャーナリストはあの人が…
NHK捏造・虚偽放送問題で河瀬直美監督のコメントが無責任すぎる!ドラマの デモ描写に異議唱えた『相棒』脚本家と大違い
萩生田光一が裏金問題で提出した「領収書の嘘」が発覚! 安倍元首相が「官房機密費100 万円を参院候補者に手渡し」報道も
吉村知事はガス爆発でも開き直り「他区域ではガスが出ない」と大嘘! 地下鉄工事でメタンガス確認、大阪市も発生可能性認めたのに
吉村知事が「万博出禁」と攻撃した玉川徹のコメントはどれも当たり前の指摘ばかり! 吉村の言論弾圧体質はプーチン並み
大阪万博の工事現場でガス爆発 会場地下に溜まるメタンガスへの懸念が現実に! 危険な有害物質PCB汚泥も覆うだけ
小林製薬「紅麹」で問題視される「機能性表示食品制度」は安倍案件! 維新と一体の大阪万博パビリオン総合Pも旗振り役
2700万円裏金でも萩生田に反省なし! 月刊誌で被害者気取り発言、「裏金はメディアとの会食に使った」とマスコミを恫喝
森喜朗、安倍晋三、菅義偉は東京五輪不正にどう関わっていたのか? “キーマン”高橋治之が保釈後初インタビューで証言
“インチキ派閥解消”の陰で自民党と岸田政権が温存する裏金づくりのシステム! 企業団体の献金、パー券購入も不透明なまま
検察の安倍派幹部“立件見送り”の不可解! 西村康稔前経産相、世耕弘成前参院幹事長、森喜朗元首相にくすぶる疑惑
松本人志と並んで万博PRの吉村洋文知事 能登半島地震で救助や支援を自分の指揮のように演出して大顰蹙
維新ゴリ押し 万博&カジノにかかる金はインフラ整備を含めると8000億円以上だった! 大半が国と大阪市の負担、巨額の税金も投入
防衛費増額の財源で「法人税」を削除し「国民全体の負担」だけにした政府有識者会議は読売社長、日経元会長、朝日元主筆がメンバー
菅首相の追加経済対策の内訳に唖然! 医療支援や感染対策おざなりでGoToに追加1兆円以上、マイナンバー普及に1300億円
菅首相のコロナ経済支援打ち切りの狙いは中小企業の淘汰! ブレーンの「中小は消えてもらうしかない」発言を現実化
菅首相の追加経済対策が“自助”丸出し! コロナ感染対策は10分の1以下、大半が新自由主義経済政策に…坂上忍も「バランスおかしい」
悪評「マイナポイント」事業の広報費は54億円、1カ月で半分を浪費! 事務局事業も電通がトンネル法人通じて140億円
三浦瑠麗のアマプラCMは削除されたが…amazonもうひとつの気になるCM! 物流センター潜入取材ルポが暴いた実態とは大違い
安倍首相“健康不安”説に乗じて側近と応援団が「147日休んでない」「首相は働きすぎ」…ならば「147日」の中身を検証、これが働きすぎか
正気か? 安倍首相の諮問機関「政府税調」がコロナ対策の財源確保と称し「消費税増税」を検討! 世界各国は減税に舵を切っているのに
東京女子医大がボーナスゼロで400人の看護師が退職希望! コロナで病院経営悪化も安倍政権は対策打たず加藤厚労相は “融資でしのげ”
『報ステ』大越の“万博礼賛”はテレ朝上層部の維新忖度か 『モーニングショー』でも吉村の“出禁”発言以降、万博批判が消える
萩生田光一 裏金2728万円でも“事実上お咎めなし”で高笑い! 岸田と森に取り入って安倍派も“独り占め”の悪夢のシナリオ
安倍派裏金で読売新聞「非公認以上の重い処分」報道の違和感! 実際は軽い処分を重く見せるために岸田首相周辺が印象操作
政倫審でも「法令遵守体制」を自慢して顰蹙! 世耕弘成の法令遵守とはかけ離れた「政治と金」疑惑の数々
世界的建築家の「カジノありきの万博」「あり得ない」の批判に、維新・大阪市長が「万博とカジノ関連ない」と失笑の大ウソ反論
政倫審 安倍派4人の嘘と矛盾を徹底検証! 萩生田も含め証人喚問は絶対必要だが、マスコミ報道は大谷の結婚一色
裏金に反省なし、岸田首相と自民党が死守する「企業団体献金」は事実上の賄賂だ! トヨタ、電通、経団連の大口献金と優遇政策
検察が動くまで裏金疑惑を1年放置したマスコミの弱腰 報道されなかった自民党の“政治と金”疑惑を総まくり
橋下徹の「政治と金」めぐる“維新アゲ”発言の「デマ」に抗議殺到、『めざまし8』が謝罪! 語られなかった維新の金まみれ実態
安倍首相が「官房機密費あるから、いくらでも出す」…馳浩の五輪招致買収工作発言で改めて注目される「官房機密費」の不正な使われ方
瀬戸内寂聴が生前、語っていた護憲と反戦…「美しい憲法を汚した安倍政権は世界の恥」と語り、ネトウヨから攻撃も
「BTSグラミー賞逃す」報道に「韓国人のニュースいらない」「日本人の受賞を報じろ」と炎上攻撃が! 日本スゴイの精神的鎖国
ぼうごなつこ『100日で崩壊する政権』を読めば、安倍首相が病気で辞任ししたのでなく国民が声をあげ追い詰めたことがよくわかる
百田尚樹が「安倍総理にお疲れ様とメールしても返信なし、知人には返信があったのに」とすねると、2日後に「安倍総理から電話きた」
村上春樹が長編小説『騎士団長殺し』とエッセイ『猫を棄てる』に込めた歴史修正主義との対決姿勢! 父親の戦中の凄惨な中国人虐殺の記憶を…
村上春樹がエッセイ『猫を棄てる』を書いたのは歴史修正主義と対決するためだった! 父親の戦中の凄惨な中国人虐殺の記憶を…
安倍首相に利用された星野源がエッセイに書いていた“音楽が政治に利用される危険性” 「X JAPANを使った小泉純一郎のように」
“宇予くん”で改憲煽動のJCと手を組んだTwitter Japanはやっぱり右が大好きだった! 代表は自民党で講演、役員はケントに“いいね”
ウィーン芸術展公認取り消しを会田誠、Chim↑Pomらが批判! あいトリ以降相次ぐ“検閲”はネトウヨ・極右政治家の共犯だ
「ノーベル賞は日本人ではありませんでした」報道で露呈した日本の“精神的鎖国” 文化も科学もスポーツも「日本スゴイ」に回収
幸福の科学出家騒動は清水富美加個人の責任なのか? カルト宗教信者の子どもたちが抱える問題
話題の本『夫のちんぽが入らない』のタイトルに込められた深い意味…しかし一方では広告掲載拒否の動きが
福島の子ども甲状腺がん検診「縮小」にノーベル賞の益川教授らが怒りの反論! 一方、縮小派のバックには日本財団
介護殺人に追い込まれた家族の壮絶な告白! 施設に預ける費用もなく介護疲れの果てにタオルで最愛の人の首を…
宇多田ヒカル「東京はなんて子育てしにくそう」発言は正しい! 英国と日本で育児への社会的ケアはこんなに違う
今もやまぬ人工透析自己責任論の嘘を改めて指摘! 糖尿病の原因は体質遺伝、そして貧困と労働環境の悪化だった
『最貧困女子』著者が脳機能障害に! 自分が障害をもってわかった生活保護の手続もできない貧困女性の苦しみ
雨宮塔子が「子ども捨てた」バッシングに反論! 日本の異常な母性神話とフランスの自立した親子関係の差が
『NEWS23』に抜擢された雨宮塔子に「離婚した元夫に子供押しつけ」と理不尽バッシング! なぜ母親だけが責任を問われるのか
小島慶子が専業主夫の夫に「あなたは仕事してないから」と口にした過去を懺悔!“男は仕事すべき”価値観の呪縛の強さ
人気記事ランキング
カテゴリ別ランキング
社会
ビジネス
人気連載
アベを倒したい!
ブラ弁は見た!
ニッポン抑圧と腐敗の現場
メディア定点観測
ネット右翼の15年
左巻き書店の「いまこそ左翼入門」
政治からテレビを守れ!
「売れてる本」の取扱説明書
話題のキーワード