実質敗訴の松本人志をまともに批判できないテレビ! 民放各局は吉本興業の株主でズブズブ
なんともお粗末な訴訟取り下げ劇だが、しかし、今回の松本の対応でもっと呆れたのが、その発表にともなうコメントだった。コメントが出される前は「さすがの松本も今回は全面謝罪した上で、芸能界引退を発表するのでは?」と予想する向きもあったが、そんな殊勝さ、誠実さなどみじんもなかった。
密室で起きる性加害では「直接的物証」を確保できないのは当然であるにもかかわらず、わざわざ「強制性の有無を直接に示す物的証拠はないこと等を含めて確認」と強調。被害女性への「おわび」も、「参加された女性の中で不快な思いをされたり、心を痛められた方々がいらっしゃったのであれば」と、仮定の話として謝罪するポーズをとったに過ぎなかった。
そして最後は「どうか今後とも応援して下さいますよう、よろしくお願いいたします」と締め、芸能界復帰への意欲を早々に表明する始末だった。
吉本興業のコメントも同様で、「松本人志の活動再開につきましては、関係各所と相談の上、決まり次第、お知らせさせていただきます」と、すでに活動再開に向けて動いていることを露骨にうかがわせていた。
いずれにしても、今回の松本の態度は批判の対象以外の何物でもない。実際、普通のタレントが同じように性加害報道を否定できずに裁判から逃げ出した上、謝罪になってもいない中途半端な対応で復帰を進めようとしたら、ワイドショーやスポーツ紙から「ありえない」「この程度で許されると思ってるのか」と袋叩きにあっただろう。
ところが、である。松本の訴訟取り下げをめぐるテレビの報道はあまりに腰が引けたものだった。
8日13時すぎに、「松本人志、訴訟取り下げへ」というニュース速報が流れて以降、当日14時からの『ゴゴスマ』(CBCテレビ)『情報ライブ ミヤネ屋』(読売テレビ)などのワイドショーを皮切りに、夕方のニュース、夜の報道番組も一斉にこの問題を取り上げたが、どの番組も松本への厳しい批判はほとんどなし。それどころか、訴訟取り下げが「実質的に松本側の敗訴」という、ごく当たり前の解説すらせずに、「早期に復帰するための取り下げ」と、まるで復帰への露払いをするような報じ方をしていた。
松本のコメントについても、その不誠実さを批判するトーンはほとんどなかった。文春に告発した被害女性のひとりが朝日新聞の取材に応じ、松本が「いらっしゃったのであれば」という言い回しをしたことについて、「私は仮定ではなく、実在するので深く傷ついた。記事には一切誤りが無いと今も確信している」と批判したが、女性がコメントを出していたこと自体を取り上げた番組さえ僅かだった。
むしろ、多くの番組が松本のコメントにあった「強制性の有無を直接に示す物的証拠がない」ことを強調し、「玉虫色の決着」「痛み分け」などと、まるで和解であるかのような解説をしていた。
こうした腰の引けた姿勢は翌日、翌々日も同様で、踏み込んだ発言が飛び出すことのある10日の『サンデージャポン』(TBS)も、松本の訴訟取り下げ問題は細野敦弁護士の解説を受けて太田光が「法廷でボケても受けない。取り下げも一つの考え方」などと擁護コメントをしただけで、他の芸能人パネラーたちには一切コメントさせなかった。
明けて月曜日、11日は、ネット上で松本批判が高まっているためか、『めざまし8』(フジテレビ)や『ひるおび』(TBS)など一部の番組で松本に批判的な発言をするコメンテーターもいたり、弁護士が「事実上の敗訴」という解説をするようになったが、一方で『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日)や『DayDay.』(日本テレビ)などは、そもそもこの問題にまともに触れようとしなかった。
「テレビ各局は、吉本興業の株主である上、松本が復帰する可能性もあるので、まともな批判なんてできるはずがない。一方、擁護姿勢を示した番組やコメンテーター、芸人に批判が殺到しているので、露骨に擁護することもできない。身動きが取れなくなっているんです」(在京キー局局員)