田崎史郎氏は「総理をイライラさせた記者のほうにも問題ある」と報道陣のせいに
だが、田崎氏の“暴論”はまだつづく。このあと話題が先週の菅首相が逆ギレしたぶら下がり取材に移ると、田崎氏は「菅総理は冷静さを欠いた」としつつも、なんと今度は批判の矛先をメディアに向けたのだ。
「もうひとつ問題なのは、記者のほうの問題が僕はあると思っているんです。というのは、ぶら下がりやっているときに、これ内閣記者会との記者会見だったら、広報官が仕切って、だいたい各社同じように回しているんですね、1問ぐらいずつ。ぶら下がりでは1人で4問か5問くらい発した人がいるんです。で、4社ぐらいが代わる代わる質問していくんですね。だからね、質問するために質問してるような感じ? 総理をそこで足止めさせて、イライラさせて、それで総理がイライラして、『あー、イライラしてる』って感じなんですよ」
「僕だったらね、総理の考えをどうやって引き出すかっていうところに注力するんですよ。それはメディア側の責任だと思うんです。総理の考えを引き出すためにやっているわけですから。そうじゃなくて、やっぱり総理をイライラさせるために質問しているようなね、風景が見えた。(質問していたのは)新聞社ですけども。テレビも通信社も何もしていませんよ、そこは。むしろほかの記者はシラーっとしている状況だったんですよ」
言っておくが、普段の総理会見は「広報官が各社同じように回している」なんてことはない。実際、菅首相になってから、少なくとも東京新聞は挙手しているのに一度も指名されていないからだ。しかも、「1人で4問か5問くらい発した人がいる」とまるで問題行動があったかのように田崎氏は言うが、総理会見では内閣広報官が勝手に「更問いはするな」と言い張っているだけで、記者がそれを守る義務などない。むしろ、重ねて質問しなければ総理の一方的な主張で終わってしまうのだから、本来はあのように「更問い」がおこなわれるべきなのだ。もっと言えば、「ほかの記者はシラーっとしていた」というのが事実なのであれば、正式な記者会見を放棄されたというのに質問もせずボーッとしていたその記者たちこそ問題だ。
そもそも、「わざとイライラさせて本音を引き出す」というのは権力者に対峙した際の記者の常套手段であり、実際にアメリカでは記者たちがカメラの前で大統領や報道官を相手に厳しい質問を投げつけて丁々発止のやりとりを繰り広げ、本音を引き出している。田崎氏がそれをやらないというのは自由だが、しかし、時の権力者と非公開の場で会食し、そこで聞き出した一方的な主張を垂れ流すことしかしない人物に、オープンな場で国民の代弁者として仕事をまっとうしようとする記者を批判する資格など断じてない。
違法接待の事実は何も変わらないのに「7万円ではなく3万円分しか食べていない!」と何の意味もないことを主張してみせる人間が、至極真っ当な仕事をした他の記者を罵倒する……。さすがは安倍前首相や菅首相と同じ釜の飯を食ってきたお仲間、腐りきっているとしか言いようがないだろう。
(水井多賀子)
最終更新:2021.03.02 11:33