26日、小池知事が自粛要請しても、吉村知事は「自粛要請しない」と明言していたのに
しかも、兵庫県をターゲットにした背景には、兵庫県の井戸敏三知事との敵対関係もあったとみられている。
井戸知事は、橋下時代から、維新の政策や政治手法に反対してきた。都構想について「膨張主義だ。ムードだけで制度を変えるのが一番いけないこと」と発言し、2013年には、堺市長選で維新の対立候補の支援を表明。当時、大阪市長だった橋下徹が「越権だ」と反発する一幕もあった。
維新が進めるカジノについても「地域振興のために手段を選ばないという姿勢そのものが、基本的に間違っている。人が集まって金さえ使えばいいのか」「日本はすでに相当のギャンブル国家。それを助長するカジノをなぜ解禁するのか」「依存症が兵庫県内にも出てくる。行政的な取り締まりが必要になり、裏社会の活動も予想される」と、当時の橋下市長や松井知事のカジノ誘致を厳しく批判してきた。
「兵庫との往来自粛をぶちあげたのは、天敵だった井戸知事への嫌がらせという側面もあるんじゃないか。兵庫の実効再生産数が大阪より悪いことに目をつけ、兵庫との往来に絞って自粛を呼びかけ。大阪より兵庫のほうが感染がひどいと印象付けようとしたんだろう。そうすれば、自分たちの自粛解除方針の失敗をごまかせるしね」(在阪ジャーナリスト)
まさに政治目的の情報操作というしかないが、この作戦に、大阪府民は当初、まんまと騙された。兵庫県は厚労省の提案文書通り全般的な往来自粛をきちんと呼びかけており、兵庫との間だけに歪曲した大阪府の方針は逆に、「兵庫以外には外出してもいい」というミスリードを生み出していたのだが、多くの大阪府民はそのことにまったく気付かず、「兵庫は何もやっていないが、大阪はきちんとやっている」「さすが吉村さん、決断力がある」などと称賛の声をあげる始末だった。
しかし、誰が見てもおかしいこの方針については、本サイトをはじめネットで矛盾を指摘する声が噴出、連休の最終日頃からは朝日新聞や毎日新聞、神戸新聞など、一部の新聞も「大阪府・兵庫県間の往来自粛」決定プロセスに疑問を投げかけ始めた。
すると、吉村知事は前述したように、連休が明けた24日、一転して、今週末は大阪・兵庫間だけでなく、全般的に自粛要請をしないことを明言。兵庫県の井戸知事はその時点で県内外の往来自粛要請を継続する考えを表明していたのに、吉村知事は自信満々で“その必要はない”という姿勢を示した。
さらに26日、小池知事がロックダウンの可能性を口にし、週末の自粛を呼びかけた日の夜も、吉村知事は、前述したように「大阪府内での今の感染者数の推移では、今週末に外出の自粛をお願いすることはない」と明言した。
それが、27日になって20人の感染者が発表されると、「これまでとは状況が違う」などと称して、急にすべての外出を自粛要請したのである。