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ToshIはなぜ洗脳され、そして逃げ出せたのか…X JAPANドキュメンタリー映画にも出てこない洗脳事件の真実

 前述したような悩みを抱えていたToshIは、守谷と関係を深めていくにつれ、家族からもX JAPANからも距離をとるようになっていく。結果的に、バンドを脱退することにもなるのだが、色々なことが重なり将来に迷っていた彼に、守谷はヒーリングアーティストを名乗るMASAYAが主催するセミナーを一緒に受講するようもちかける。このセミナーが本格的な「洗脳」の始まりだった。

 このセミナーでは、まず、自分の生い立ちを語り、自らが負ってきた心の傷をさらすよう迫られる(これを「シェアー」と呼ぶ)。そして、その後には、自我やエゴから解き放つためと称して、他のセミナー参加者から罵声を浴びせられるというプロセスが待っていた(これを「フィードバック」と呼ぶ)。ここでは、暴力もともないながら、こんなきつい言葉が浴びせられていたと言う。

「母親に、地位や名声や人気がいるのよーと言われて、母親に認めてほしい、愛してほしい、捨てられたくないと思った幼少時のおまえが、それに騙されて、スターの座に醜くも上り詰めたから、利用価値があると言って銀蝿のような連中にちやほやされて、アゴを伸ばして化け物アゴ男になったんだって!」

 ToshIがバンド脱退を申し出た1997年の大晦日、最後に東京ドーム公演と紅白歌合戦のステージに上がり、X JAPANは解散することになるのだが、「X JAPANはヴィジュアル系とかいう、もっとも自我の強いおぞましい集団の頂点に君臨する悪の権化だ」と罵倒を受け、洗脳されていた彼は、この公演中もMASAYAや守谷の目線が気になって仕方がなかったと言う。「フィードバック」の際、ステージ上で発した言葉をネタに罵声や暴力が飛んでくることは目に見えていたからだ。

 普通に考えればそんな場所からは逃げてしまえばいいと思うのだが、家族にもバンドにも自分の居場所がどこにもなくなってしまい不安でいっぱいだった彼にとって、セミナーから抜け出すことは考えられなかった。そしてその後は、マスコミに洗脳疑惑を報道されながらも、セミナーの広告塔となり、CDを売りながら地方をまわるドサまわりの日々を送ることになる。その活動で得た収益のほとんどはセミナーに入り、ToshIは洗脳の日々のなかで10億円以上の金をむしり取られた。

 そんな洗脳が解けたきっかけ、その大きな要因のひとつもまた、X JAPANだった。2006年、ToshIは旧知の音楽関係者からX JAPAN再結成の話をもちかけられる。その際のギャラは3億円という破格のもの。しかし、守谷やMASAYAから「X JAPANは世界中の若者をダメにした張本人」とバンドのことを罵倒されてきた彼はその話を受ける気はなかった。しかし、高額のギャラを知ったMASAYAは、なんと、その話を受けて前金としてもらえる1億5000万円をすぐさまもらえと指示する。その矛盾に直面した瞬間、ToshIの頭にある疑念が浮かぶ。

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