〈前の夜は言いたくないと、母親に泣きながら訴えました。学校の七夕集会に宗教的意味なんかあるわけない。(中略)先生に相談すると、出なさい。母は出るな、証をしろ。もう分裂しそうでした〉
いじめも受けた。小学校4年生のときには不登校となったが、しかし母親はそのことに関心がない。学校に行かなくても、ときに高熱があっても伝道訪問を強要した。中学1年生のときに母親がエホバを離れたが、その後も恵美は過食症になるほどのストレスを抱えたままだ。
もうひとり、18歳の永瀬好美は統一協会の合同結婚式に参加した両親を持つ “統一教会の子ども”だ。統一協会ではその神学的説明で、そもそも育児に時間を割くことがないという。そのため、好美はベビーシッター役の信者や、朝鮮人参の販売会社の寮の共同保育所で育てられた。5日間放置されたこともある。
〈統一教会の教義に母子分裂はなく、克子(好美の母)が意図的に放置したわけではない。万物復帰つまりこの世のすべてのもの(人・金・物)を文鮮明、統一教会のもとにとり戻し、地上天国を一刻でも早く実現するために、子どもどころではなかったのである〉
まさに育児放棄とも思えるものだが、しかし子どもはそれでも親を慕う。
「心の中では文鮮明が救世主だなんて思っていませんでした。ただ、両親を喜ばせたかったから教会の活動に参加してきただけです」
「二世の半分が合同結婚式に参加すると思いますが、心の底には諦めがあるからです。小さい時から親や教会に言われ続けてきましたからねえ」(好美の証言)
親から愛してもらうため。それは教団の種類に関係なく多くの子どもたちに共通する。親が信じる信仰や宗教を受け入れることが、子どもたちにとって両親の愛を受ける条件――。本書では他にもオウム真理教、ヤマギシ会を含め多くの“子ども”たちの証言が収録されているが、しかし彼らの“その後”は不登校であり、情緒不安定、引きこもり、自殺未遂、セックス依存症、自分の子どもに同じように暴力を振るう連鎖など、その影響は組織や教団を離れてもつきまとっている。しかも子どもたちの様々な症状や影響は個々の組織は違っても、共通するものが多いという。