『カルトの子 心を盗まれた家族』(米本和宏/文藝春秋)
女優・清水富美加の幸福の科学“出家”問題に大騒ぎを繰り広げるマスコミだが、そのトーンはあいかわらず奥歯に物が挟まったようなものだ。バーニング系列の所属時事務所・レプロエンタテインメントにも気をつかいながらも、幸福の科学という宗教団体タブーに腰が引け、ワイドショーなどでは「出家するのは信教の自由だが、仕事を放り出した清水は無責任すぎる」と、清水への個人攻撃に終始している。
が、しかし、今回の問題はたんなる信教の自由にとどまるものでもないし、清水の個人的な責任に帰することができるような話ではない。それは清水が幸福の科学を信仰するようになった経緯だ。
報道によると、そもそも清水の両親が幸福の科学の信者であり、そのため清水自身も幼少期からその教えを固く信じた熱心な信者となった。つまり生まれ育った環境から、自分の意思とは関係なく、その価値観を植えつけられ、必然のように信者となった“幸福の科学の子ども”だということだ。
しかも、熱心な信者である父親は昨年、会社を経営破綻させ、自己破産していたという。教団は否定しているが、借金を肩代わりしたという報道もあった。そのことと、清水の出家の関連はまだはっきしりしないが、いずれにしても、今回の騒動は清水の親が信者であること抜きには考えられないはずだ。
ファナティックな新興宗教の信者を親にもつ子どもたちについては、これまでも様々な問題が指摘されてきた。たとえば『カルトの子 心を盗まれた家族』(米本和宏/文藝春秋)では、そうした特殊な環境に置かれた子どもたちの心情に焦点を当て、数多くの実例とその後の深刻な影響が描かれている。
戦後日本で宗教と子どもに大きな焦点が当たったのは、1985年に起きた“エホバの証人児童輸血拒否事件”だろう。当時、10歳だった男児が交通事故に遭ったが、エホバの証人の信者だった両親が輸血を拒否、助かるはずの命が失われた衝撃的事件だったが、しかし問題は輸血だけではない。