子どもたちは自らの生き方、意思でそこに入ったわけではない。親が信者だったことで、その教えを絶対として育った。つまり特定の価値観を子どもに刷り込み、条件付きの愛情と、恐怖で服従を強いるものだともいえる。カルト問題に詳しい紀藤正樹弁護士らによる『カルト宗教 性的虐待と児童虐待はなぜ起きるのか』(紀藤正樹・山口貴士/アスコム)では、こうした子どもたちの問題は“人権侵害”“児童虐待”にさえ当たるとこう指摘している。
〈希望した教育さえ受けさせられずに育った児童は、のちに成人してカルトを自らの意思で脱会した際にも、社会復帰の厳しさに直面して精神的に苦しむ結果となり、自殺してしまった子供もいますし、病気治療も受けさせられずに、施設内で死亡した例も出ています〉
〈子供の場合、生まれて育った最初から、価値観として、カルトの人格を植えつけられるわけです。(中略)つまりカルト内の子供の状態を考えた場合、カルトの人格に染めることは、むしろ端的に「児童虐待」としたほうが説明がつくように思えます〉
今回“出家”宣言をした清水もまた、こうした子どもたちと同じ、両親が信者という境遇にあった。もちろん、これらの宗教と幸福の科学には違う部分も多くあり、こうした問題がそのまま清水にあてはまるわけではない。
しかし、幸福の科学の信仰「エル・カンターレ」とは、大川隆法総裁への個人崇拝そのものだ。同教団HPによると、エル・カンターレとは、地球の至高神であり、全人類の魂の親、そして地球のすべての神々を導く存在であり、現在の日本に大川総裁として生まれたという。
こうした教義を幼少期から繰り返し教え込まれ、子どもの頃から熱心な信者だったという清水。しかも、前述したように彼女の父親は昨年、自己破産していたという。そんな彼女が大川から、「覚悟せよ」と迫られて、すべてを投げ打ってしまったとしても、そのことを誰も責めることはできないだろう。
子どもは親を選ぶことができない。しかも、親も熱狂的な信者であれば、家族でも解決することはできない。こうした問題を社会で解決できるような仕組みを考えていく必要があるのではないか。
(編集部)
最終更新:2017.11.16 04:43