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ラップは「フリースタイル」だけじゃない! 貧困、薬物売買、少年院…ハードな現実を歌った日本語ラップの存在

 そして、MSCの登場以降、自分の置かれている厳しい環境を歌うラッパーが次々と登場する。その代表格が06年にアルバムデビューしたANARCHYだろう。いまでこそ成功してavex所属アーティストとなりEXILE TRIBE総出演のドラマ『HiGH&LOW』(日本テレビ)に出演したりとメジャーな活動が目立つが、デビュー当時の彼は京都の向島団地で生まれ、父子家庭で育った生育環境と周囲の環境がいかに荒れていたのかをラップの重要なテーマとしていた。

〈家のガス電気止まった中2、3 外は袋とバット持ったフーリガン 真面目君で生きる方が難しい ルールの中じゃ一生貧乏暮らし〉(「Composition Of Pain」)

 彼の育った環境についてANARCHYは自叙伝のなかでこう語っている。

〈オレの住む市営住宅には、片親の友達がほんまに多かった。片親スタイルが向島団地のカラーやったし、オレの友達はみんな強かった。全員が何もめげとらんかったし、見返したる気持ちでいっぱいやった。だからオレも今までこうしてめげないでやってこられたんやと思う〉(『痛みの作文』/ポプラ社)

 そんな環境で成長した彼は、その後、暴走族の総長となり決闘罪(彼が日本で3例目の適用であったという)で少年院行きとなってしまう。そのときのことを彼はこう歌う。

〈破るしかなかった法律と僕ら 兵庫の山奥で更正プログラム プライドもねじ曲げられた熱いハートで動くプロペラ 少年院で見るテレビにZEEBRA 消えかけたろうそくに火をつけた 教官にバレないように書くリリック 自分の胸に響く〉(「K.I.N.G.」)

 過酷な生活環境に置かれた若者たちのなかには、自然な成り行きとして違法薬物売買の道を選ぶ者たちがいる。マリファナの闇取引などをテーマにしたラップのことを、ハスラーラップというが、日本におけるその代表的な人物がSEEDAだ。06年発表のアルバム『花と雨』は、かつて麻薬の売人をしていたときに自分や周囲の人物に起こったエピソードをふんだんに盛り込んだ私小説的な作品となっている。ちなみに、「ハスラー」というのは、麻薬の売人のことを指す英語のスラングである。

〈元手が無きゃマージンのはざまビビタル 映画より現実に学ぶdrug deal〉(「LIVE and LEARN」)
〈主犯の名前を言っても現行犯じゃなきゃ逮捕は無いと太鼓判押した先生めくるめくページ 2ヶ月たって降りるは無いだろ?〉〈地検に行く度道端をながめる 石ころにも自由がある娑婆 午後にはまたおりの中〉

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