もうひとつ印象的なのが、お掃除シーン。始めは潔癖のリヴァイに「全然なってない すべてやり直せ」とダメ出しされていたエレンだが、その後はほかの隊員にこんなことを口にしている。
「お前ら…家に入る前にちゃんと埃や泥を落として来たか?」
「……まだわかんねぇのか? そんな意識でリヴァイ兵長が満足すると思うか? 今朝だってオレがお前のベッドのシーツを直していなかったらなー」
この間に2人の間ではどんな“調教”が行われたのか妄想する腐女子が大勢現れた。そして、作中リヴァイが命懸けでエレンを救ったのは1度や2度ではない。上司や監視役としてだけでなく、リヴァイはエレンを信頼し、対等にも見ている。この信頼関係が腐女子センサーに反応したのではないか。
実写化するにあたり、脚本家の町山には「原作どおりにしなくていい」「まったく違う話にしてほしい」(「映画秘宝」9月号)と言っていたという諫山。これほど腐女子のツボがよくわかっている彼なら、腐女子対策としてあえて作品の人気を支えるリヴァイを出さないという選択をしてもおかしくない。なにせ、諫山の腐女子センサーはたしかなもの。
ただ、冒頭でも紹介したが、公開後のシキシマの評判を見てみると批判のほうが多く、リヴァイの代わりにシキシマを出したのは失敗だったのかと思うかもしれない。しかし、シキシマ自体は好きになれないという人のなかにも、こんなコメントをしている人たちがいた。
「名前を兵長じゃなくてシキシマにしたのは英断だったと思う。あれリヴァイですって言ったら映画館何個か破壊されそう」
「リヴァイ出してたらシキシマさんのやる事をやってた訳で炎上への燃料提供になるというか油田になるでしょう」
やはり、諫山の選択は正しかったようだ。でも、「映画秘宝」9月号の記事によると、諫山から「ジャンを主人公にしてくれませんか」という提案もあったという。腐女子人気の高いキャラで、唯一実写映画にも登場するジャン。もしかすると、諫山はジャンを主役に据え、がっつり腐女子向けの作品にするという方向性も考えていたのかもしれない。そしたら、リヴァイだけでなく、エルヴィンやベルトルト、ライナーも登場したのではないか。まあ、諫山の腐女子力があれば、それもうまくいったのかもしれないが、今回、こうした腐女子要素を削った結果が吉と出るか、凶と出るか。ただし、映画を観る際は「シキシマ=リヴァイではない」ということだけはよーく頭に入れておいた方がいいだろう。
(田口いなす)
最終更新:2018.10.18 04:44