ところが、テレビ局側は、橋下氏の反撃をおそれて、自粛モードに入っているという。そもそも、橋下市長のターゲットになった『正義のミカタ』からしてそうだった。同番組は、今日、3月7日の放映で予定通り、藤井教授を出演させて「大阪都構想」を取り上げたが、明らかに橋下市長に配慮した番組になっていた。
何しろ、都構想反対が藤井教授1人なのに対して、賛成派は、高橋洋一氏に、佐々木信夫氏と2人をキャスティング。しかも、この2人は大阪市の顧問をつとめている橋下市長の完全な応援団だ。
内容も、前半は高橋氏に二重行政の解消、特別区設置で住民サービス強化という都構想のメリットを語らせ、後半は藤井教授がデメリットを語るという構成だったのだが、前半はほぼ高橋氏が言いっぱなしだったのに対し、後半、藤井教授が問題点を指摘し始めると、佐々木氏から逐一反論がはさまれる、という不公平きわまりないものだった。
また、橋下市長から「中立偽装」と指摘されたのを受けて、藤井氏が解説する前にMCの東野幸治が「藤井センセイは大阪都構想に反対ということでいいんですよね」と、わざわざその立場を念押しする始末だった。
「都構想を取り扱うのをやめたり、藤井教授をすぐにおろす、ということは露骨すぎるのでしませんでしたが、あれは明らかに橋下市長に配慮して、番組内容を変更したとしか思えない。実際、これからしばらくは都構想を扱うのを控えるらしいですよ」(朝日放送関係者)
他のテレビ局も同様らしい。関西の別の民放関係者はこう語る。
「住民投票までは藤井教授など反対派を出さないという方針を決めた局もあるようです。かといって、賛成派だけを出すわけにもいかない。それで、都構想問題についてつっこんだ議論をするような番組をつくらないようにしよう、という暗黙の了解ができている感じです」
まったくテレビ局のだらしなさにはいつもながら唖然とさせられるが、しかし、この橋下の暴挙を見て何か思い出さないだろうか。
そう、昨年末の衆院選で発覚した安倍自民党がNHKと在京テレビキー局の編成局長、報道局長らに〈選挙時期における報道の公平中立ならびに公正の確保についてのお願い〉という“要請文”を送りつけた一件だ。差出人は〈自由民主党 筆頭副幹事長 萩生田光一/報道局長 福井照〉となっているが、もっぱら安倍晋三総裁(首相)自身の指示で出されたものだといわれている。