「そもそも私たちの本質は肉体ではなく魂ですから、病気も加齢も本当は何も怖がる必要はないのです」
「私自身は両親も弟もすでに他界しました。喪失感はありますし、もっと話をしておけば良かったという気持ちもあります。でも今は、私がいずれあちらの世界へと戻った際に、皆で反省会でもしたいという思いが強まっています」
「私たちが疲れ果て、へとへとになり、悩んでいるそんな時でも、観客席からは『負けるな』という声援が飛んでいます。そして何らかの難しい局面を無事に乗り切った時は『よくやった』とご先祖さまたちは拍手喝采です」
どこまでいってもオカルト本、というかほとんど新興宗教の布教本みたいな解説が延々続くのである。それも、ご先祖様の霊が見守ってくれているみたいな、そのへんの自称霊能師のおばさんが立ち上げた宗教団体のような、すごく浅い感じの教えである。
しつこいようだが、矢作センセイは東大医学部の教授で附属病院救急部・集中治療部部長だった人物だ。それがなぜこんなことになっているのか。
矢作センセイによると、センセイには「あの世は私たちのいる世界のすぐそばにある」という確信を得た体験があり、それは2011年に出版した『人は死なない』(バジリコ)に詳しく書いてあるという。そこで、今度は『人は死なない』を読んでみることにした。すると、そこにはトンデモないエピソードが……。
矢作センセイの友人に、Eさんという会社経営をしている六〇歳代の女性がいるのだが、彼女は「霊能力をもった女性」で、センセイが「本書を執筆していることを話すと、自分のそれまでの体験や能力について話してくれ」たのだという。そして、そのEさんからある日、一本の電話がかかってきた。
「『実はあなたのお母様のことなんです』
『はっ?』
『矢作さんと先日お会いした後からお母様が矢作さんのことを心配されて、息子と話したい、と私にしきりに訴えてこられるのです』
(中略)
『どうして母は私のことを心配しているのですか』と私が訊くと、Eさんは、
『矢作さんがお母様に、申し訳ない、という非常に強い思いを送っていらっしゃったからのようですよ』と言います。(中略)私は黙ってしまいました。確かに私は、生前の母に対して親孝行らしきこともせず、また晩年の母にも十分な対応をしてやれなかったことがひどく心残りで、毎晩寝る前にそうした悔悟の念を込めて手を合わせていました」
そして、矢作センセイは実際にEさんに交霊をしてもらう。