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ToshIはなぜ洗脳され、そして逃げ出せたのか…X JAPANドキュメンタリー映画にも出てこない洗脳事件の真実

〈(えっ、結局は金?)
 あれだけX-JAPANを非難され、「宇宙的犯罪者」とまで罵倒され、暴力を受けてきた僕は、さすがにその言葉にすぐに納得することはできなかった。
 もちろん、「MASAYAの言うことは常に宇宙的に正しい」のであり、僕の反感や疑問などは、「自我の強い人間特有の醜いもの」であると徹底的に刷り込まれている僕は、その反感を打ち消そうとしたが、さすがに「X-JAPANへ僕を戻すこと」は、その後もずっと心のどこかにわだかまりの種となって残るものとなった〉

 そして、X JAPAN再結成の動きを通じ、色々な人との交流を復活させることで、ToshIは洗脳される前の感覚を取り戻していく。YOSHIKIとの関係もそうだ。

〈幼少時からの長年染みついた感覚は、十年の時をあっさり飛び越えた。
 僕は、MASAYAからの命令とはいえ、X JAPAN再結成には抵抗があった。だが、十年ぶりにYOSHIKIの顔を面と向かって見ると、どうしてもなにか少年の時に戻るというか、不思議な感覚となってしまう自分がいた。
「また一緒にやりたいね」
 YOSHIKIに伝えたその言葉は、MASAYAらの背景から故意に言わされているものなのか、僕とYOSHIKIの間に長年にわたって脈々と流れ続けている、僕ら二人以外誰も立ち入ることのできない「何か」に不意にそう言わされたのだろうか……〉

 それはYOSHIKIとの関係だけではない。X JAPANの他のメンバーや後輩のミュージシャン、また、自分のことをサポートしてくれる人たちとの交流が、10年近くセミナーの狭い人間関係のなかに押し込められていた彼に開かれた視野を取り戻させたのだった。

 そして彼は、どんどんMASAYAの言葉や態度に疑問をもつようになっていく。そしてついに、守谷とMASAYAが肉体的な関係をもっているということにも気づいてしまったのだった(おそらく、自分と出会う以前から守谷とMASAYAはそういう関係で、始めから広告塔や金づるとして利用するために近づいてきたのだろうと現在のToshIは分析している)。

 守谷にも、MASAYAにも嫌悪感を抱いたToshIは追ってくるセミナー関係者から身を隠し匿ってくれる支持者の協力を得て逃亡。そして、2010年、記者会見を開き、世間に向けて洗脳されていた事実、そして彼らの詐欺的な振る舞いを告発したのだった。

 もしも守谷やMASAYAと出会う時期が数年ズレていたらX JAPANはもしかしたら一度も解散せずにキャリアを重ねていたかもしれないし、もしもX JAPANの再結成話がもちこまれなければ、いまでもToshIはMASAYAの金づるのままだったかもしれない。そう考えると、現在こうしてウェンブリー・アリーナに立っているということが、まさしく奇跡のように思えてくるのである。
(新田 樹)

最終更新:2017.11.21 12:42

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