菅首相“最大のタニマチ”ぐるなび会長のイベントと長男の「囲碁将棋チャンネル」の接点
いずれにしても、こうした東北新社への便宜供与と隠されていた菅首相への献金を見れば、今回の高額接待問題が“総務省の体質”の問題でもなければ、“長男の暴走”でもない。菅首相自身の特定企業との癒着、行政の私物化が表出したものであることは明らかだろう。
実際、長男のいた東北新社をめぐる利権構造には、菅首相のもうひとりのオトモダチ経営者がからんでいた。
それは、「ぐるなび」の創業者で現会長の滝久雄氏。滝氏は菅首相の最大のタニマチといわれる人物で、経営する傘下の広告会社を通じて菅首相に多額の献金をしていた上、菅首相に頼まれて御用ジャーナリスト山口敬之氏に関連会社から顧問料を支払っていたことも明らかになっている。また、見返りとしての便宜供与もささやかれてきた。滝氏の経営する「ぐるなび」が菅首相が主導した「GoToイート」キャンペーンによって大きな恩恵を受けていたという問題はもちろん、滝会長は昨年10月、2020年度の文化功労者にまで選ばれている。
ところが、この滝会長と東北新社・正剛氏との間でもビジネスが行われていたことが判明したのだ。滝会長が文化功労者に選ばれた理由のひとつに「ペア碁の普及」なるものがあり、滝会長は2人1組で打つ囲碁を普及させる「日本ペア碁協会」の名誉会長を務めている。このペア碁の大会を、正剛氏が取締役だった東北新社の子会社「囲碁・将棋チャンネル」で放映してきたというのだ。
ジャーナリストの森功氏が「週刊ポスト」(小学館)2月26日・3月5日号と3月12日号の2号にわたっておこなったレポートでは、こんな証言を紹介している。
「ペア碁大会ではイベント協賛企業から年間ざっと3億5000万円のスポンサー料が集まり、東北新社が番組を流してビジネスにしてきた。滝さんは東北新社や菅さんの息子にそれだけ気を遣ってきた。切っても切れない関係でしょうね」(囲碁関係者)
「焦点は息子が東北新社で手掛けている『囲碁・将棋チャンネル』番組でしょう。実はこの番組づくりにかかわっているのが、菅首相のスポンサー企業です。菅の長年の支援者である『ぐるなび』の滝久雄会長が音頭を取り、JR東日本をはじめ、菅さんと縁の深い企業を番組のイベントスポンサーにつけています。そのつなぎ役として長男の正剛君が送り込まれた。そう見ていいのではないでしょうか」(官邸関係者)
これはようするに、菅首相と癒着企業がある種の利益共同体を形成し、長男を迂回させるかたちで便宜供与や癒着ビジネスを行っていた可能性が出てきたということではないか。
よくもまあ「息子は別人格」などといえたものだが、ともかく、今回判明した東北新社への便宜供与、菅首相による2009年の“口利き疑惑”、そして「ぐるなび」滝会長もからむ問題について、さらなる追及が必要だ。繰り返すが、問題の本質は官僚への接待ではなく、その上に立つ菅首相の「官僚支配」「政治の私物化」にほかならないのだから。
(編集部)
最終更新:2021.03.06 12:52