トランプに攻撃されても緩和反対の米国立アレルギー感染症研究所のファウチ所長と大違い
本来、感染症の専門家は感染を抑える対策を提言し、感染症対策をなおざりにしようとする政治に対して釘を刺す役割を担っているはずだ。分科会会長という立場にあるにもかかわらず、感染症対策のイニシアティブを取ろうとせず、まるで安倍首相や西村コロナ担当相が乗り移ったかのように「社会経済と感染防止の両立という大命題がある」「感染症対策と経済の両方をとりまとめるのが私の役割」などと述べるとは……。
たとえば、トランプ政権のコロナ対策チームの中心人物である国立アレルギー感染症研究所のファウチ所長は、トランプ大統領から攻撃されて会見に呼ばれず、その支持者たちから「アメリカ経済を破壊する気か」などと言われても、地方政府には拙速に行動制限の緩和に走らないよう訴えるなど、政権の方針と異なっても感染症の専門家として発信をつづけている。そこには政権への忖度も手加減もない。
しかし、この国の感染症の専門家の意見を政府に提言する役割であるはずの尾身会長は、“これはまずい”と思っても、実際は強く異を唱えたりしていない。それどころか、政府の方針を追認する役割を自ら担っている。前述したようにいまごろになって「16日の数日前に『Go To』の先延ばしを提案したが採用されなかった」などと言い出した尾身会長だが、16日の午前中には「旅行自体が感染を起こすことはない」とはっきり述べていたのである。
安倍首相を筆頭に、安倍政権の閣僚たちは「専門家の意見を踏まえて判断する」などと言いながら、実際にはその専門家の意見を却下し、専門家たちもそれに唯々諾々と従うのみ。しかも、尾身会長は覚えめでたく、安倍首相が議長の「未来投資会議」の新メンバーにも選ばれたばかりだ。
御用学者が跋扈し、国民の健康と安全が徹底的に無視されてゆく、この国の新型コロナ対策。腐りきっているとしか言いようがないだろう。
(編集部)
最終更新:2020.07.31 10:14