自供報道もミスリード、こんな捜査が認められたら誰でも犯罪者に仕立てられる
いずれにしても、覚せい剤の使用と所持であげようと思って、徹底的にガサ入れしても、出てきたのは沢尻と同じように、たいして悪質性のない以前は合法だった危険ドラッグだけだったのだ。しかも、この自宅にはA氏とは違う新しい同居人もおり、警視庁はこの危険ドラッグが槇原の所持ということも断定できていないという。
また、沢尻のケースと違って、現段階では槇原から自供も引き出せていない。FNNなど一部報道では「大筋で容疑を認めた」などと言っているが、これはどうもミスリードらしい。
「大筋で容疑を認めた、というが、槇原が認めているのは、違法化以前の所持や2018年頃にそのマンションでA氏と暮らしていたというくらいのもの。警視庁が報道を煽るために、それを“大筋”と言っているだけですよ。いまのところ、槇原は認めていない。実情はそのあとにテレビ朝日などが報じた『僕は長いこと、薬やってません』『検査をしても反応は出ないと思います』と供述したという話のほうが正しい」(前出・警視庁担当記者)
実際、法律の専門家の間では、もしこのまま、自白がなければ、不起訴、あるいは裁判で無罪という可能性も十分あると指摘されている。
いや、仮に今後、槇原が自白に追い込まれたり、どこかから違法ドラッグ使用を証明する証拠が見つかったとしても、警察が違法捜査をしていたことには変わりはない。繰り返すが、別件捜査は完全な違法捜査であるうえ、逮捕容疑は2年前にパートナーA氏の単独所持として片付けられている事件なのだ。それを持ち出すなんて、とても法治国家のやることではない。
実際、こんなことが通用したら、警察は自分たちがターゲットにするだけで誰でも犯罪者に仕立て上げられることになる。たとえば、もし警察があなたを逮捕したいと思ったら、警察はあなたを恨んでいる人間に全く身に覚えのない覚せい剤所持を証言させ、それだけを理由にガサ入れすればいい。ガサ入れで覚せい剤は出てこなくても、合法時代に買った危険ドラッグが残っていたり、PCのなかに以前、違法ダウンロードしていた画像などが残っているかもしれない。それで、あなたは立派な犯罪者の仲間入りだ。
そういう意味では、いま、警察がやっている違法捜査は、たかだか一芸能人の薬物使用よりもずっとやばい話なのだ。
ところが、マスコミは「2年前の所持で逮捕」という事実にちょっと驚いてみせるだけで、この異常な逮捕にまともな批判は一切していない。それどころか、「歯がガタガタ」「感情の起伏が激しいときも」「こんなCD出せないと声を荒らげた」「50歳になって風邪が治りにくくなった」など、薬物となんの関係もないような槇原の言動を、あたかも薬物依存の証拠かのようにおもしろおかしく報じたり、セックスのときに使う薬物だと槇原の性を暗に揶揄するように報じたり、居丈高に叱責してみたり。2年前の所持を疑わないどころか、前回の逮捕直後から20年間薬物に溺れてきたかのような前提で、勝手に「厳罰しかない!」などと叫んでいるのだ。
特にひどかったのが、『バイキング』(フジテレビ)だ。このまま新証拠がなくパートナーの証言だけでは、不起訴の可能性もあるとコメンテーターが当たり前の指摘をすると、司会の坂上忍はなんと「不起訴は無罪じゃない」と言い切っていたのだ。これ、炎上系YouTuberの放言とかじゃなく、れっきとした地上波キー局のお昼の看板番組で大真面目に語られていることなのだ。