ASKA、沢尻エリカ逮捕で失態犯しても批判されず、「組対5課は完全に調子に乗っている」
実は、こうしたマスコミの姿勢こそが今の警察の強引な薬物捜査をつくりだした共犯者といえるかもしれない。薬物捜査に詳しい全国紙社会部記者が「組対5課は完全に調子に乗っている」として、その理由をこう解説する。
「組対5課が薬物捜査の手法をどんどんエスカレートさせたのは3〜4年前からで、ASKAのときや沢尻エリカのときは逮捕後に警察のやりすぎとしか思えない問題が噴出した。ところが、マスコミ、とくにワイドショーはその部分を一切批判せずに、むしろ逮捕された芸能人のほうを叩き続け、世論もそっちに流れた。あれで、組対5課が味をしめてしまったんですよ」
たしかに、2016年11月のASKAの2度目の逮捕劇はありえないものだった。このとき、NHKと共同通信が「歌手のASKA元被告逮捕へ。覚せい剤使用容疑」と速報を打つと、テレビ各局が逮捕状も出ていない段階で一斉に「ASKA元被告 逮捕へ」と大々的に報道。当のASKAは自分のブログで逮捕も覚せい剤の陽性反応も完全否定したが、その後も断定的な逮捕報道は続き、逮捕当日には午前からASKAの自宅前にマスコミが集結。身柄確保の瞬間があらゆるメディアで実況中継されるという人権無視の異常事態に発展した。
しかし、ASKAは約3週間後に嫌疑不十分で不起訴処分となり釈放されている。警視庁は秘密の薬物部屋があるなどとマスコミに盛んにリークしていたが、結局そんなものはなにもなかった。ようするに、警視庁組対5課は証拠が不十分なまま不当逮捕を強行していたのだ。
沢尻のときも同様だった。「週刊文春」(文藝春秋)とTBSに逮捕を事前リークまでしておきながら、自宅近くの路上で捜査員が声をかけたとき、沢尻は違法薬物を所持していなかった。その後の家宅捜索で沢尻自身が自己申告しMDMAが1錠発見されるが、その直前にクラブで取り引きされるという組対5課の情報・見立ては完全に間違っていた。
しかも裁判では、MDMAもコカインも年に数回クラブで使うくらいで依存状態になかったこと、大麻についても軽度の依存が認められるものの治療の必要はないことを医師が証言している。また沢尻の元恋人の男性も、共同所持で無理やり逮捕したものの、結局立件できず釈放された。沢尻自身も、わざわざ自白しなければ不起訴や無罪になっていてもまったくおかしくない状況だったのだ。ちなみに当時『バイキング』では「否認して無罪になるより、素直に認めて謝ったほうが印象はいい。否認しないでもらいたい」などという信じがたい議論がなされていた。
この2つは明らかに警察サイドの大失態だが、しかしマスコミは警察の杜撰極まりない人権無視の捜査を批判することなく、その暴挙に丸乗りし、大衆の劣情を煽りながら、ASKAや沢尻叩きに血道をあげた。
実際、ASKAは不起訴だったにもかかわらず、きちんと謝罪したメディアはひとつもなかった(井上公造と『ミヤネ屋』が逮捕騒動に乗じてASKAの未発表曲を勝手に公開したことを謝罪しただけだ)。また『バイキング』はこのときも「不起訴は無罪じゃない」という無茶苦茶な理屈を叫んでいた。
あとで不起訴になっても無罪になっても、警察はその失態や不手際をマスコミからも世間からも批判されることはまったくない。常軌を逸しているとしか思えないが、このメディアの姿勢こそが、近年のやりたい放題な薬物捜査を助長させていることは間違いないだろう。
しかも、今回の槇原逮捕で、その警察のやり口はさらにエスカレートしたにも関わらず、しかしマスコミの姿勢は全く変わっていない。
芸能人の薬物汚染と、警察国家化・道徳ファシズムのグロテスクな合体による不当逮捕の横行と、どちらが危険なことなのか。国民はもう一度考え直してみるべきではないか。
(林グンマ)
最終更新:2020.02.17 06:29