昵懇の関係にある下地議員と菅官房長官(公式HPより)
やはり金は渡っていた──。6日、日本維新の会の下地幹郎衆議院議員(比例九州)がIR汚職疑惑で中国企業「500ドットコム」から現金を受け取っていたと認めた。さらに、現金授受を否定していた船橋利実議員(比例北海道)も本日、500ドットコムとカジノ事業を計画していた札幌市の観光会社幹部から100万円を受け取っていたと認めた。
船橋議員は100万円を「寄付」だと言い、政治資金収支報告書への記載漏れだとするコメントを出しているが、そんな子どもの言い訳が通用するか。むしろ、下地議員、船橋議員に金が渡っていたという事実により、現金授受を否定している岩屋毅・前防衛大臣(大分3区)や宮崎政久・法務政務官(比例九州)、中村裕之・前文科政務官(北海道4区)、船橋利実議員(比例北海道)といった他の自民党議員への疑いもさらに深まった。
その下地議員は昨日、離党届を提出したが、言うまでもなく離党で済むような問題ではない。
下地議員が500ドットコムの当時顧問だった紺野昌彦容疑者から現金100万円を受け取ったのは2017年10月の衆院選期間中だったが、当時、下地議員は超党派の「国際観光産業振興議員連盟」(カジノ議連)の副会長。しかも、現金を授受する以前には東京の議員会館で紺野容疑者だけではなく500ドットコムの社長や副社長らとも面会していたのだ。受け取った現金が政治資金収支報告書に記載されていない件について、下地議員は「事務所職員が領収書を発行しようとしたら紺野さんに固辞された」と言って控えがないための記載漏れだったと強調し、あくまで紺野容疑者の個人献金であり政治資金規正法で禁じられている外国法人からの寄付ではないと言い張ったが、この100万円がカジノ進出を狙う中国企業からの金であり、なんらかの見返りを求めるものだと認識していたからこそ裏金にしたとしか考えられない。
しかし、下地議員のこうした態度以上に醜悪なのが、維新の松井一郎代表だ。
松井代表は秋元司議員が逮捕された際、「権限もないのに俺は力がある、俺は力があると業者に餌をまいて食いつかせた。個人的なオレオレ詐欺事件だ」などとのたまい、「政策と個人の犯罪を一緒にしてどうするのか」「偏向報道はやめろ」とカジノを守る一心で批判。年明け早々に下地議員の疑惑が浮上しても、党としての責任はあきらかにせず「金をもらっていたらアウト」「議員辞職すべき」と述べ、維新の国会議員団副代表兼選対本部長という党の要職に就く人物の裏金問題だというのに他人事感を丸出しにしたかと思えば、「IRは国際観光拠点をつくる政策の話。政策と個人の不適切なお金の話は別で考えるべきだ」などと主張したのだ。
何をバカなことを。これは「政策と個人の犯罪」というような問題ではなく、そもそもカジノ解禁という政策がなければ、このような汚職事件はおこらなかったのだ。そして、カジノは数兆円にものぼるとされる新たな利権であり、違法だったカジノを法制度化すべく強行採決したのは自民と維新だ。カジノを合法化したいま、大阪の維新だけではなく、横浜では菅義偉官房長官、和歌山では二階俊博自民幹事長などといったように有力政治家たちが地元誘致に躍起になっている。こうしたカジノ推進派の政治家たちとカジノ業者の癒着ははじめから懸念されていたが、そうした指摘を無視して自民と維新は強行したのである。
しかも、松井氏は2016年にカジノ推進法案が審議入りすることに慎重な姿勢を示していた民進党に対し「バカな政党」などと攻撃するなど、カジノ実現の牽引役を担ってきた。その最たる例が2025年の大阪万博であり、カジノとセットで誘致運動を展開、誘致委員会のオフィシャルパートナー(公式スポンサー)にはシーザーズ・エンターテインメントやラスベガス・サンズ、MGMリゾーツといった外資系のカジノ企業が5社も名を連ねていた。
その上、500ドットコムはIR誘致が決定的と言われる大阪府や大阪市、そして維新にもアプローチしていた可能性がある。本サイトでも昨年末に伝えたが(https://lite-ra.com/2019/12/post-5170.html)、今回問題となっている500ドットコムと協力体制にあったNPO法人「依存学推進協議会」の幹部2人は、500ドットコムと関係があった時期、大阪府・大阪市IR推進局が夢洲地区へのIR誘致を検討・協議する「IR推進会議」の委員を務めていたのだ。
にもかかわらず、政治家に広がるカジノ汚職を“個人の問題”に矮小化し、自分や党には無関係であるかのように松井代表は振る舞っているのである。無責任にもほどがあるだろう。